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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バージョン1.02(予定)
180/268

180:マジ、団子をばら撒く。

 翌朝。

 ペットフードの再販は九時から。なので早めにログインし、作り置きを大量に用意した。

 その数、ざっと一万個。

 もっと作りたかったが、ペットフード一万個、それに合わせた食材を買い込んだら、六十万近かったお金が残り十万ENに。

 そこから課金用の食材と合成剤も用意しておかなきゃならないし、作り置きはこれ以上無理だ。

 朝から合成三昧で、技能のほうは39になってしまった。

 作業回数を考えると、レベル35を過ぎてからは上がり難くはなってるよな。なってるけど、短期間で集中作業したから一気に上がった感はあるけど。


「冒険者様、お疲れ様です」

「あ、村長さん。無理言って大量のペットフードと食材を用意してもらってすみません」

「いえいえ、売れ行きがよい様で何よりです」


 つまり、この村で販売する事になったら、がっぽがっぽ稼げるから嬉しいぜってことですね。

 あ、村の宣伝もしておかなきゃな。


「また足りなくなるようでしたら仰ってくださいね」

「い、いいんですか?」


 正直、また昨夜みたいに途中で仕入れに来ることになるだろう。


「いいんですよ。合成作業中、冒険者さんの召喚したノームとウンディーネのお陰で、畑は潤っていますから」


 とにっこり顔の村長さん。

 せっせと合成中にノームとウンディーネを交替で召喚し、ノームには『ちゃぶ台返し』で畑の土をおこしてもらい、ウンディーネには『ウォーター』水撒きをしてもらった。

 慈善事業ではない。れっきとしたレベリングだ。

 畑仕事でノームの『ちゃぶ台返し』のレベルは10になったし、ウンディーネの『ウォーター』は6に。

 残念ながら戦闘経験値を得られたわけじゃないので、精霊としてのレベルは上がらなかった。

 二人の活躍で実りが早くなるなら、安心して仕入れさせて貰おう。ガッツリと。

 

 大量のペットフードも用意できたし、さて、行くか。


「勇者様〜、ピリカも連れてってぇ〜」

「ピリカ!? 今日も来るのか?」


 とてとてと駆けて来るピリカ。後ろからトリトンさんが一緒にやってくる。


「だってね、おじいちゃんのコップ、買ってあげるの忘れてたんだもん」

「あぁ……そういえば」

「という訳ですので、今日もよろしくお願いします。ピリカ、マジックさんに迷惑掛けるんじゃないぞ」

「はぁ〜い」


 そうか、ピリカもついてくるのか。

 そうかそうか。

 じゃあ――






「ピリカね、東の方に住んでるっていう先住民の子とお友達になりたいの。その子はね、お父さんもお母さんも居ないんだって……。でも寂しくないよ、大丈夫だよって言ってあげるの」

「「うおぉぉぉぉぉピリカちゃあぁぁぁんっ」」

「ピリカちゃん、優しいのね」

「ち、違うよっ。優しいんじゃないもん。ピ、ピリカもね、お母さんが居ないから、その子の気持ちが分かるの」

「「うおぉぉぉぉぉピリカちゃあぁぁぁんっ」」

「ピリカちゃんと先住民の子が友達になれるよう、我々も協力するぞ!!」

「「おおぉーっ!」」


 チョロイもんだぜ。

 ロリコンどもはピリカのいう事にYESマンだし、女性プレイヤーなんかは母性からなんだろうな、健気なピリカを応援すると言っている。

 つまり、先住民NPCとは非戦闘派になるってことだ。

 その他まともなプレイヤーも相手がNPCとはいえ、子供の言う事に正面から否を唱える奴も居ない。


『彗星マジック様の思惑通りでございますね』

「あぁ。まったくだぜ。くっくっく」

『お主もワルよのぉ』


 ……どこでそんなセリフを覚えてくるんだ。

 まぁ確かに思惑通りだな。

 ピリカをだしに使うのはアレな気もしたが、でも、上手く行けば友達を増やせてやれるってのは本当だ。

 けど本音は……


「ピリカ、お友達百人作るの〜」

「応援してるよっ」

「頑張ってね」

「「うおぉぉぉぉぉピリカちゃあぁぁぁんっ」」


 俺より確実にプレイヤーの心を一つに纏めてるんですもん。


『彗星マジック様。情けない顔などせず、注文の品をお作りください』

「……はい」


 今俺がやるべきことは、課金ペットフードの必死合成!

 やれることをこつこつとおぉぉっ。

 作業ゲーも大概飽きた。飽きたが頑張る。

 今の俺、きっと輝いてるんだぜ。きっと――そう、こんな風にきらきらと――


『レベルアップ、おめでとうございます』

「……作業ゲーでレベル32になってしまった……」

「勇者様、おめでとう〜」

「王子様おめぇ〜」「「うおぉぉぉぉぉピリ「おめ〜」「おめおめ」

「ふんどしおめ」「おめ」「おめでとう」


 おめでとうの大合唱。

 う、嬉しい。こんな大勢に祝って貰えて、嬉しい。

 よぉし、こうなったら。


「一人一袋限定、ペットフード無料配布しちゃうぞぉ〜」

「「おおぉぉぉぉっ」」


 はっはっは。大盤振る舞いじゃ〜。

 はっはっは〜。


 一時間後後、ペットフードの在庫が無くなった。

 そして所持金は十五万EN程度。。

 一つ60EN販売してたんだ。半分を無料配布してたって三十万ぐらいになっててもいいはず。

 どういうこと?


「シ、シンフォニア。無料配布って、いくつぐらいだった?」

『はい。六千九百八十二袋でございます』


 ……おぅ……やっちまったぜ……。


「アザーッス!」

「ピリカちゃんの勇者さん、ありです!」

「太っ腹だなふんどし王子は」

「さすが放電の人」

「タダで七千とか、ワロス」

「え? 一万用意して半分以上無料配布?」

「どんだけ金持ちなんだよ」


 十五万EN持ちだぜ?

 リアルで考えたら結構金持ち?






 所持金が減ったので、補充は少しずつしか出来なくなった。

 完売してはテレポで仕入れ、また完売しては仕入れ。そして販売。

 途中で大賢者用のカップを探すピリカの為に、木工技能持ちに頼んで作って貰ったりもした。くっっくっく。チューリップ柄だぜ。

 それからピリカを帰し、また仕入れ。何往復かしてやっと所持金は三十五万まで戻った。


『所持金、今朝の半分ほどまで減っておりますね。ふふふ』

「ふふふじゃねえよ。そういや頼んでおいた――」

『はい。ペットフードをお渡しする際に、今後の販売は開拓村で行うという宣伝でございますね』

「そうそう」


 俺も宣伝をしておいたが、シンフォニアのほうでも頼んでおいた。

 これでペットフードが必要になったら、開拓村に行ってくれるだろう。まぁ今はまだ店舗が建ってないようだけど。


「じゃあ俺は昼飯食いに行ってくるよ」

『はい。お疲れ様でした』

「おぅ。お前もサンキューな。マジ助かったぜ」

『いえ、これもお仕事でございますから。それではワタクシも失礼いたします』


 じゃあこっちも――と思った矢先、


「彗星くぅ〜ん! デラックス、ちょうだぁ〜い!」


 目を爛々に輝かせたエルフが、こっちに向って走ってきた。

 何故だろうな。

 猛烈に逃げたいと思うのは。


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