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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バーション0.00【オープンベータテスト】
18/268

18:マジ、卵をめぐって戦う。

 訳も解らず後を追ったが、何故彼女が走り始めたのか直ぐに理解した。

 

《ピピーッ!》

「うおぉりゃあぁあぁぁっ」


 草原から飛び出す真っ青なボール。


「あぁん。先越されたばい。次探しにいくとよっ」


 訂正。

 あのボールがピッピらしい。

 よく見たら球体に翼と足、黄色い嘴が見えるな。

 全身真っ青の、まるで幸せの青い鳥だな。

 しかし、あんな丸い体型で空飛べるのかよ。


 フリー状態のピッピを探して草原を走りまくる俺たち。

 まさか……まさかこんなにピッピ狙いがいるとはなっ!?


「レアアイテムでも落とすのか?」

「解らない。でも、レアモンスターだから落とすのかも。情報は無いけど、クローズでもピッピは人気やったけん」


 希少モンスターなら誰でもそう考えるから仕方ないか。

 一匹でもいいから、倒さないとな。そして卵をゲットしないと!


 だが世間はそう甘くは無かった。

 走れど走れど、地面から羽ばたくピッピは既に戦闘中だったり、今まさに戦闘に突入した奴ばかりだ。

 やっと魔法をぶっぱなせる!

 そう思って目前まで走っていたのに、前方から矢が飛んできてピッピがそっちに向って飛翔する。


 あぁ……あんなに丸々太ってんのに、飛べるんだな。


「あぁんもうっ。同じ弓使いとして、目の前まで他人が走ってきてたところを狙うとか許せんばい! 横殴りと同じやんっ」

「まぁまぁ、そう目くじらたててないで、次探そうぜ。まだ時間はあるんだし」

「あと十分しかないんやよっ」


 十分か、厳しいな。


「こうなったら私が――」

「いやいや、ピッピのレベルって9じゃないか。5の夢乃さんじゃきついだろ」

「でもぉ〜」


 もしもの時は、誰かに譲ってもらう手もある。

 それまでは運を天に任せて――


「走るぜぇーっ」

「走るしかないのかぁ〜」






 だが天は我に味方しなかった。

 太陽が地平線から完全に姿を見せ、大地を赤く照らす。

 タイムリミットだ。


「マ、マジか」

「やっぱり、ちょっと無理してでも私が矢を射っとったら」

「いやいやいやいや、また……明日があるから」


 そう答えながらも、走り回った疲れからなのか、精神的なものなのか、その場に膝を落としてしまう。

 はぁ……競争率高すぎだろ。そんなに良いアイテム落とすのかよ。

 項垂れる俺の耳に、小さな声が聞こえた。


《ピチョーン》


 天は我を見捨ててはいなかった!

 所々に背の高い草が生い茂っている部分もあり、その茂みから声は聞こえる。

 他のプレイヤーに見つかる事も無く、ここでじっと身を潜めていた賢い奴なんだろう。


「夢乃さん。ピッピ、まだ残ってる」


 気づかれないよう、小声で彼女を呼び寄せる。


「こ、今度こそ……」


 いや、彼女に危険を侵させる訳にはいかない。

 俺が飛び出して行って――


「俺がやる。俺が……奴の注意を引く!」


 走れ、急げっ。他のプレイヤーに取られる前に!

 そう祈りながら右手に意識を集中させ、左手の杖をぎゅっと握り締める。


 そして――声の聞こえた方角に向って右手を突き出した。


「『サンダーッ!』」


 青白く光るイカヅチが掌を這う。そして――

 草を舞い散らせながら、ぬるっとした何かに触れた。


「ぬる?」

《シャボボボボッ》

「なんか違うの来たあぁぁっ!?」


 明らかにさっきの声とは違う、別のモンスターに当たってるぞっ。

 どうして、どうしてそうなる!


「うわあぁぁ、なんか大きい蛇だよ彗星君っ」

《シャアアアァァッ》



◆◇◆◇◆◇◆◇


 ☆卵大好きエッグスネーク / LV:10

 

◆◇◆◇◆◇◆◇



 やべぇえぇっ。ネームドモンスターじゃないですかあぁっ。

 しかも卵大好きとか、どう見てもライバルですし!?


「渡さねぇ。卵は渡さねぇぞっ」

「や、やる? やるしかないよね。『鑑定っ』」

「うおおぉぉぉっ。『サンダーッ』からの『ライト』」


 うねうねとした蛇の側面へと周りこみ、素早く魔法を叩き付ける。

 ん? サンダーのダメージがライトの倍以上?


「彗星君! そいつ、水属性やよ!」

「やった! 水辺の蛇だったのか。くっくっく。勝機が見えてきたぜ」


 そう言ったのも束の間。

 ギラリと目を光らせて身をくねらせると、長い尾を振り回して俺を薙ぎ払う。

 ゲフッ。吹っ飛ばされた!?


 ――ぼふん。


 ん?

 なんかふわもこな物が背中に……


《ピチョチョチョチョッ》


 真っ青な鳥さん!

 うげっ。さすがにネームド相手にしながら二匹同時とか、無理っ。

 逃げるか!?


「夢乃さんっ」

《ピチョォォーンッ》


 ピッピがばさばさと羽ばたくと、温かい風が流れてきた。

 その瞬間――


【STR+10】

【AGI+10】

【VIT+10】

【DEX+10】

【INT+10】

【KUL+10】


 という文字が視界に浮かぶ。

 これ、称号効果か?

 ……いや、勇者はオール+1のはず。


「す、彗星君、これ……ピッピのバフスキル!?」

「え? え? モンスターが、俺らを支援?」


《シャアアァァァ》

《ピチョォォッ》


 蛇はピッピを睨み、ピッピも蛇を睨みつけている。

 まさか……卵大好きって、ピッピの卵を狙っていたのか!?

 偶然タイミングよく蛇に俺の魔法が当たった事で、ピッピの卵が守られた、とか。それで親鳥が……

 あ……。


「卵って、まさかピッピからドロップするんじゃなくって、既に産み落とされてるとかそういうオチなのかぁぁっ」

「あはは、そうかもしれんねぇ」

「ああぁぁぁーっ」


 全力で走った努力があぁぁっ。


《ピッ》

《シャボオオォ》

「死ねやあぁぁっ」


 怒りの鉄拳ならぬ、怒りの雷を蛇にぶつける。

 この際だ、親鳥を助けて卵を一個くれと頼もう。


「とりあえずスネークを倒すんやねっ。『ショットアローッ』」


 後ろから飛んできた矢は、これまで見た攻撃よりも速度が速かった。その分、威力も高いのだろう。


「ふっふー。生産の成功率はDEXとLUK依存。今はDEX極だから、生産メインといえど弓限定なら強いんよ。ただしHPがゴミ過ぎてすぐ死ぬんやけど」

「最後の一言がなかったらかっこよかったのに」

「本当のことやけん、仕方ないっちゃね」


 よし。

 よく解らない状況で、モンスターと共闘する事になったが……


「『サンダーッ』そんでもって『ライト!』」


 おぉぉ。INT+10のお陰で、ダメージがワンランクアップしてやがる。


《ジャジャッ》


 蛇は大口を開けて向って来たっ。丸呑みされるんじゃね!?

 そう思った瞬間、俺の体は宙に浮いていた。


 ばっさばっさと羽ばたくピッピの足に鷲掴みされて、飛んでるうぅっ。


《ピチョロロロロッ》


 行くわよっ。

 そんな風に言われた気がした。


「おっしゃあぁぁっ、行けぇーっ」


 急降下しながら、ピッピは俺と蛇の真上で――落とした!?

 ふぁっ!?


「ぎゃああぁぁぁっ『サンダーッ』」

「彗星君っ。『ショットアローッ』」


 鬼だ。

 鬼のような鳥がおる。


 蛇と衝突しながら、魔法をぶっぱして転げ落ちた。

 奴の全身を雷が駆け巡り、矢が深々と突き刺さる。


《ピチョッ》


 そこへピッピが急旋回して戻ってきて、鋭い嘴でもって蛇を突いた。

 なんか蛇のHPゲージがとんでもなく減ってるんですけど?

 寧ろ俺ら二人で一割しか削ってないのに、ピッピの一突きで残り全部削ってますけど?


 あぁ、あれは死んだな。


《ジャ……ボオォ》


 蛇の断末魔が、朝日を浴びて光る草原に木霊する。


 時としてモンスターとも手を携え戦う。


 このゲーム、そんなコンセプトあったか?

*ピッピの容姿を

腹は白くから、全身真っ青に変更しました。

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