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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バージョン1.02(予定)
177/268

177:ピリカ、初めてのお使い。

 早めに晩飯を終えて、これまた早めにログイン。


『お帰りなさいませ、彗星マジック様』

「おう、ただいま。掲示板の反応が気になるから見せてくれ」


 パソコンカモーンとばかりに、椅子に座ってシンフォニアに目配せをする。


『お食事、しっかり噛みましたか?』

「……お前はいつからお袋になったんだ……冷やし中華だったから早かったんだよ!」


 我が家は夏になると、高頻度で冷やし中華が出てくる。用意するのが楽だし美味しいからというお袋の言い分だ。ただ、もれなく家族全員が冷やし中華好きなので、俺も親父も文句を言わない。


『麺類ばかりですと、体力が付きませんよ?』

「から揚げとサラダも食ったよ。はよパソコン!」

『ではお出しします。ルルルン♪』


 おい、なんだそのルルルン♪って!

 しかもハートマークのステッキ持ってるじゃねえかっ。どこから出したそれ!

 彼女がくるくるとステッキを回すと、キラキラした小さな光がたくさん出て来て、光が集束し、パソコンになる……。無駄に凝ってんじゃねえよ!


「もっと普通に出せよ……」

『たまには笑いを取りませんと』


 取らなくていい。

 シンフォニアはスルーして掲示板を確認する。投稿者名ですぐに俺のスレだと分かるのでクリック。

 うん、まぁ……ある程度予想してた通りかな。


 まず襲撃そのものが本当なのかと疑うレスがいくつかある。ゲーム内での演説を耳にした人の書き込みもあるな。擁護はされているが、ゲーム内で叫んでればなんでも本当になるのかよと反論も多い。

 が、ゲーム内で冒険者ギルドに行った人による「警固クエスト」「討伐クエスト」が実際に発生しているという書き込みがされると、途端に疑い者はいなくなった。


『スレ、書き込み上限に達しておりますので、別の方が新規スレを立ててくださっておりますよ。現在、4スレまで進んでおります』

「え?」


 慌ててスレッド一覧に戻ると……うぉ、マジだ!

 タイトルのほうを全然見てなかったが【大規模モンスター襲撃告知スレその2】とか【3】【4】もあるぞ。

 ばばばっと2から読んでいく。

 うん。ひたすらお祭ムードで盛り上がってるな。

 時折、先住民虐殺するべしという恐ろしいカキコミもあったりするが、スルーされているようだ。

 ドドンたちの製造祭の事も書かれている。在庫一掃セールのはずなんだがな……まぁ請負もすると言ってたし、今まで装備をまともに揃えられなかった連中なんかは、涙目もんだろう。


 あ、そもそも新装備の素材をと思って山に行ったんだったよな。それがこんな事になってしまったが……。

 俺も素材渡して新しいの作って貰おう。


 さて、それじゃあ俺も準備しますかね。


「じゃあ行ってくるぜ」

『はい。忙しくなりますね』

「おう。まぁその分レベルも上がるだろう」


 そう。たぶん忙しくなる。

 まぁドドンたち職人に比べるとマシかもしれないが。

 扉を潜りゲーム内へと一歩踏み出すと、そこはファクトの大通り。

 ゲーム内はさっきと違って太陽が昇り、通りを歩くNPCもうじゃうじゃいた。

 製造祭りは八時から。ログインしたのは七時半を過ぎていたので、ゲーム内でもそれほど時間の余裕は無い。

 まずは……


「『テレポート!』」


 で開拓村へとやってきた。村長の家……どこだ?

 とりあえずピリカにでも聞くかな。


「おーい、ピリカ〜」


 彼女の家の前で名前を呼ぶと、すぐにパタパタと元気な足音が聞こえてきた。

 そしていつものように容赦なく開く戸を、当たり前のように一歩横に移動して躱す。


「ピリカの勇者様だぁ〜」


 元気なピリカが飛び出してきて飛びつく。

 彼女の頭を撫でてやりながら、村長の家を教えて欲しいと頼む。


「じゃあ案内したげるよぉ」

「お、助かるよ。トリトンさん、ピリカをお借りしますね」

「どうぞ」


 ニッコリ微笑んで返事をしたトリトンさんだったが、一瞬だけその顔が真顔になる。同時に後ろの方から、


「ピリカは嫁に出さんぞっ!」

「あぁ〜、はいはい」


 大賢者は無視して村長宅だ。

 ピリカの案内でやってきたのは、特に大きくも、そしてオシャレでもなんでもないいたって普通の一軒家。

 戸を叩くと、確かに村長が出てきた。


「村長さん、ピリカの勇者様がね、ごようがあるんだって」


 出てきた村長にピリカがそう伝えると、若干のシンキングタイムが発生し、それから俺の顔を見てにっこり笑った。


「これはこれはマジック様。今日はどうなさったんですか?」

「あぁ、ちょっとペットフードが大量に必要になって。イベントで使うもんだから、ここでの販売用じゃないんだけどいいかな?」


 再びシンキングタイムが発生し、動き出しても思案しているような顔で唸っている。


「あ、いや、個人的にイベントで使う分だから、もちろん金は支払うよ」

「いえ、そうではなくて。実はまだ店舗の建設中でして。まだ販売の準備も出来ていないのです」


 あ、なるほど。ってか、わざわざ店を建てるのか!?

 モンスター研究家だって店を持たず、道に突っ立ってるだけだぞ。


「では今回は、食材を2ENで、ペットフードは一袋40ENで販売という事でよろしいですか?」

「ペットフードって、そんな安く出来るんですか?」


 尋ねると村長が頷く。

 つまり、モンスター研究家がぼったくってるだけ、と。

 ありがたくその値段で……とりあえず二千個購入。食材は各種五百個ずつ買っておこう。

 結構な数を注文したが、次の瞬間には村長から取引要請があり、ウィンドウには注文した物がちゃんと揃っていた。

 なんだな……たぶん、十万個売ってくれと言っても、ほいっと用意してくれそうだよな。

 さて、じゃあファクトに行くかな。


「じゃあピリカ、お兄ちゃんはファクトに行くから」

「え? ピリカも行きたぁ〜い!」

「いやいやいや、遊びに行くんじゃないから」


 嘘です。ある意味遊びに行きます。寧ろここに居るのも遊んでいるからです。


「ピリカ、お父さんが心配するし、大賢者様が怒り狂うだろうから、な?」


 主に後者が怖いです。怒り狂って地形を変形させたりしそうです。

 頬を膨らませたピリカは、じゃあっと言って俺の手を引き家に向って駆け出す。

 おいおい、俺は置いていってくれよ。


「お父さぁ〜ん。ピリカ、勇者様とファクトにお出かけするぅ」

「何故そうなる!?」


 家に駆け込むや否や、ピリカの一言で室内が凍りつく。

 いや、燃え上がる?


「まぁごぉはぁ〜、よぉめぇにぃはぁ〜」

「いやいやいや、大賢者様落ち着いて。ね? その手に持ったカップ、燃えてますってばっ」

「お義父さんっ。カップの代えは無いんですよ!」


 トリトンさんに叱られ、すぐさまカップを叩いて火を消す。が、時既に遅し。原型を留めてはいるが、焦げてます。半分以上焦げてますから。

 それを見たピリカの表情がパァっと明るくなった。


「おじいちゃん! ピリカがね、ピリカが新しいカップを買ってきてあげるっ。勇者様が付いててくれるから、大丈夫だよ!」


 あ、そうきましたか……。


「じゃあ、マジックさん、よろしくお願いしますね」


 にこにこ顔のトリトンさんが、一瞬だけ真顔になって俺を睨んだ気がした。

 気のせいであって欲しい。

お読み頂きありがとうございます。

予約更新が面倒なので、もう手動でいいや!

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