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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バージョン1.02(予定)
174/268

174:マジ、新たなる力を手に入れる。

 謎のホゲホゲ効果で集客率は鰻上り!

 シリウスさんの演奏も完璧すぎる内容で、どんなリクエストにも応えてくれた。ただリクエストするたびにシンキングタイムに入っているので、観客プレイヤー曰く「ネットから曲をダウンロードしてるんじゃね?」との事。まぁ、ありそうだ。

 何度目かのアンコールを迎えたとき、突然観客が座りはじめた。

 疲れたのか?


「おや……マジック様、新しい技能を習得されたようですね」

「え? 新しい?」


 熱唱して気づかなかったが、ステータスを確認すると『応援歌』という技能が追加されていた。


「しかもマジック様、呪いのアイテムもお持ちですよね?」

「え、持ってるけど、どれが?」

「その『応援歌』という技能は、歌の力で味方の潜在能力を上げる効果があるのです。その効果が呪いのアイテムの力によって、真逆になっているようですよ」


 おぅ……。ついに俺はバフスキルを手に入れてしまったのか。

 技能の確認をすると『応援歌』には基本スキルとして、これまた『応援歌』というのがあった。

 効果は全ステータスALL+1。HPとMPの自然回復量50%アップ――だ。

 スキルの説明文に、気持ちを高揚させるというのもある。

 観客が座り込んでいるのは、高揚の反対――気落ちとか、そういうのだろうか?


「マジック様、演奏はここまでに致しましょうか」

「あ……はい」


 くっ。

 ギター効果のせいで、二度と歌えなくなったじゃねえか!

 うぅ。一人カラオケならぬ、森でこっそり一人オンステージでもするか。

 あ、これ、モンスターには効果ないんだろうか?

 だったらピッピやチュンチュンやポッポに聞いてもらうかなぁ。


「ふ、ふんどし王子、恐るべし」

「歌の力で俺たちを屈服させるとは……さすがだぜ、放電の人」

「はぁ〜。デバフでもいい、もっと聞いていたぃ」


 そ、そうなのか?

 ま、まぁ町の中だし、今から戦闘するわけじゃないからいいか。

 じゃあ俺のオンステージ再開!


「てっ! 俺の目的はこれじゃねぇっ! み、皆、聞いてくれっ」

「聴いてま〜すっ」


 歌の事じゃねぇえぇぇぇっ!

 集まった観客は五十人以上いる。その観客を前にちょっと緊張。


「ふんどし王子様、どうしたんですか?」

「おう、呪い覚悟で聞いてやるよ」

「光れーっ」

「脱げぇー」

「脱ぐか馬鹿野郎!」

「まぁまぁ彗星殿、落ち着く出ござるよ。どぉ、どぉどぉ」


 ふがー、ふがー。

 そ、そうだ。霧隠さんの言う通り、落ち着け、俺。

 ちゃんと話して、大勢のプレイヤーに参加してもらわなきゃいけないんだ。

 さっきみたいなナンパ内容だとダメだ。

 よし、参加してやるぜ! って気になるような話し方じゃないと……。


「なんだよ、オンステージはもう終わりか」

「えぇ、残念」

「もう光らないのか。あ、SS(エスエス)撮りそこねたわ」

「え、ちょ、待って」


 集まった連中が蜘蛛の子を散らすようにバラけていく。

 待ってくれ……明日……明日ぁ、


「明日、モンスターによる大規模襲撃が行われる。こことガッソがターゲットだ!」


 手を伸ばし、あらん限りの声を振り絞って叫ぶ。

 誰か聞いてくれ。振り向いてくれ――


「「なんだって!?」」

「お、おい。王子様は町を襲撃なさるのか!」

「ちっがーっう! 俺じゃなくって先住民NPCがだっ」

「なんだ、違うのか」


 何故そこで残念がる!

 が、襲撃と聞いてか、バラバラに散らばろうとしていたプレイヤーが一斉に集まってくる。

 通りはもう通行も間々ならないほど人が溢れ、何事かよく分かってないような人も足を止めて注目していた。

 これってば……せ、成功?

 ちらりと霧隠さんの方を見ると、彼女は笑みを浮かべていた。


「彗星殿。我々プレイヤーは、襲撃イベントが大好きなのでござるよ。だってこれは、ゲームなのでござるから」

「イベントが、大好き……そ、そうか!」


 何も深く考える必要はなかったんだ。

 襲撃イベントが行われる。それだけでプレイヤーは飛びついてくるんだ。

 よしっ。


『ふふ。よろしかったですね』

「おぅ。お前のアドバイスのお陰さ」

『そうですとも』


 ぐぬ……どんだけ上から目線なんだ。


『それではワタクシはロビーに戻りますが、最後に彗星マジック様のお手伝いを致しましょうかね』

「お手伝い?」


 こくんと頷いたシンフォニアは、次の瞬間、両手を大きく掲げ、突然声を張り上げた。


『来たれぇぇっ、時空の門よおぉぉぉ。我を元の世界へと、いざなえぇぇっ!』

「はぁ?」


 何その恥ずかしい呪文。しかも本当に門がニョッキしてるし!

 ざわつくプレイヤー。

 突然現れた三メートルほどの、しかも地獄の門かよってぐらい仰々しいデザインの門。

 

〔ぷぷぷぅっぷぷ〕

「え? 遠くからどんどん人が集まってくるって?」

〔ぷぅ〜〕


 遠目でも見えるこのデカイ門のせいで、人が集まってきてるのか。


『では皆様、ご健闘をお祈りしておりますね』


 そう言って彼女は門を潜った。それと同時に門は閉じ、下の方からすぅっと消えていく。

 その光景を、俺たちプレイヤーは奇怪なものでも見るかのような目で見つめていた。

 門が完全に消えてから少しして、誰かが呟く。


「カッケー」


 ……マジか。


「そ、それで、襲撃イベントってなんぞや?」

「あ、ああ。実は――」


 カッケーの事は忘れて本題にはいろう。

 ディオ――先住民NPCから聞いた襲撃計画の内容を、大声で伝えていく。

 リーダー格、つまりネームドの名を口に出すと、当然のようにプレイヤーは色めき立つ。


「そういや俺、『ゴブリンリーダー』ってネームド見た事あるぜ」

「俺は『コボルトリーダー』なら」

「なんとかリーダーって名の付くネームドは実際に居るのか。わくわくしてきたぞ!」


 ほほぉ。実際に生息しているネームドなのか。

 既にやる気満々のプレイヤーもいる。が、もちろん「ガセネタなんじゃ」という声も上がった。

 するとシリウスさんが、


「既に冒険者ギルドには、町長より警固の依頼がいっていると思います。安心してください、というのも変な話ですが、偽りの情報ではないのだけは確かです」


 NPCである彼がそう擁護してくれると、不審に思っていたプレイヤーもあっさり納得。

 そこからはもうお祭ムード全快だ。

 俺は出会った先住民NPCの事を聞かれたり、中には面白い意見もあった。


「先住民NPCと交流フラグ立ったんじゃね?」

「対立か友好か。どちらにも進めるルートなんだろうな」

「戦争イベントあるなら、やってみたいけどな」

「でも防衛が失敗して、襲撃成功ってなると町に被害でるんだろ? そうなったら施設やらNPCやらが利用できなくなるんじゃね?」

「あぁ、それは困るよな」

「他の町のを利用すればいいじゃん。問題なし」


 戦争か……。シミュレーションゲームは苦手なんだよなぁ。

 って、これはVRMMOだから、ジャンルが違うか。

 一人で遊ぶコンシューマーならいざ知らず、こういうMMOで戦争はなぁ。


「俺なら……遊ぶ為にゲームやってんだから、もっと軽い気持ちでプレイできるほうが良い。戦争とか重くてやってらんねぇよ。そもそもシリアスなのはノーサンキューだ」


 と、ついぽろっと本音を溢す。

 周囲からは「わかるわかる」という賛同の声もあれば、「ゲームなんだから気軽に戦争できるんじゃん」という反対意見もある。

 まぁ確かにな。

 リアルで戦争なんて、やりたいと思うわけがない。

 まぁどっちに転ぶかは分からないが、俺は『友好ルート』を進みたい。

 その為にもとりあえず――


「この襲撃計画を絶対阻止し、先住民とのお友達計画を実行するのだ!!」


 ばさっとマントを翻し、拳を突き上げ高らかに宣言する。

 決まった。今のは絶対決まった。

 そう思った瞬間、自然と顔が緩み……


「おおおぉぉ、光った!」

「半裸にマントとか、どんだけHENTAIなんだ」

「これか……これがHENTAI光か!」

「神々しくさえあるな」

「私、もうダメ。はうぅ〜ん」

「ちょっと、カナちゃん! カナちゃんしっかり!!」


 これかっ。このキラキラが全部悪いんだなっ。

 誰か助けてぇ〜。

 

「おおぉーい。変態やぁ〜い!」


 どこからか聞こえてくるあの声は……

 救世主の声ではない。

 俺を更なる地獄へと叩き落す声だ。


「誰が変態だとぉっ!」


 振り向くと、周囲を囲った観客の噴出す顔が見えた。

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