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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バージョン1.02(予定)
167/268

167:マジ、どん引きされる。

 MP消費する手間が省けたぜ〜。代わりにデスペナ貰ったぜヒャッハー。

 はぁ……あれ絶対ネームドだろ。しかし格上だぜきっと。

 か弱いマジが一人の時に襲ってくるとか、酷い。

 もう少しでレベル32になるところだったのにな。デスペナで経験値1%分消滅っと。

 まぁ今のレベルなら、1%稼ぐのに十五分ぐらいあればいいんだけどな。


 さて、襲撃の事をどうやって広めたものか。

 今からファクトで叫びまくるか?


「ご、ご通行の皆さんっ」


 試しに叫んでみた。

 その辺を歩いているプレイヤーが一斉に振り向く。

 ……こわひ。


「なんだなんだ」

「ぉ、もしかして放電の人じゃね?」

「何なに、何かはじまるの?」


 お、おぉう。期待の眼差しで見つめられてます。

 ど、どうしよう。

 何か披露しなきゃダメかな?


 よ、よし。覚えたての必殺技を!


「す、水芸『ウォーター』」


 ぴゅーっと指先から飛び出す水が、月明かりを浴びてキラキラと光る。

 違う。俺が笑ってるから光ってるだけかよ!

 さぁ、観客どもよ、拍手喝采の時間だぞ!

 さぁ。

 さぁ!


 あ、なんかどん引きされてる。何人かの女子は黄色い歓声を上げてはくれているが、ほとんどはどん引きだ。

 うん、失敗したか。

 じゃあ次――


「誰かと思ったら、マジックじゃん。何してんの」

「はへ?」


 背後からの声に振り向くと、ぎょっとした顔で見つめる犬獣人のシースターが立っていた。


「マ、マジック、何それ。なんで光ってるの? っくく。ぷくくく」

「……い、いいだろう! ひ、光ってるんだぞぉ。はーっはっはっはっは」


 こうなったらもう開き直ってやる!

 そうだ。俺はアイドルなんだ! 光って当然なんだよ!


「なんか自虐的に見えるんだけど」

「気のせいです」

「そう? まぁいいや。丁度マジックに頼みたい事あったんだ。時間、いいかな?」

「お、おお。いいぜ」


 丁度いい。

 このどん引きされた冷たい風の吹く場所から逃げたかったんだ。

 ついでだ、シースターにも意見を聞こう。襲撃イベントの件を、どうやって広めるか。

 ふ、べ、別に忘れていた訳じゃないんだぜ。






 ファクトの路地裏でこそこそとする俺たち二人。べ、別に怪しい事とかしていませんから!


「で、ぼくが分解で得た『能力石』を、製造した装備品に合成できるか、やってみて欲しいんだ」

「『能力石』……こ、これっ。石の説明にある能力を、装備に付与するものか?」

「そそ。製造するときにこれを混ぜ込めば、その能力を確実に与えられるんだよ。まぁ製造そのものに成功すればだけどね」


 じゃあ、ハイクラスなら一つ、レアなら二つ、レジェンドなら三つ、全部自分好みの能力を付けた装備を作ることも可能ってことか!?

 あれ?

 でもなんで合成?


「試したいのは、既に完成している装備に合成で能力を付与できるかどうかなんだ。考えても見てよ。ハイクラスの装備は当然、素材も少なくて住むし成功率も高い。レアと比べても半分ぐらいの素材数なんだよ」

「げっ。そんなに違うのか」


 尻尾をふりふり頷くシースターは、そのハイクラスに石の能力を付与できれば、レアと同程度の効果になるんじゃという。

 防御力やHP補正なんかは劣るが、プレイヤーによってはそれより能力重視って人もいるからね――と。

 確かにAGI系前衛なら防御力やHPが欲しくない訳じゃないが、回避向上能力が確実にあるほうが嬉しいだろう。


「あとね……合成が可能だとして、レジェンドに石を追加できたら……能力四つになるんだよっ。これって凄くない!?」

「……は!? そ、そうかっ」


 能力四つ……確かにそうだ。

 レジェンドを超える……超える……ハイパーレジェンド!?


「ま、さすがに試しでレジェンド出すのは恐ろしいから、まずはノーマル装備にこれね」

「臆病者!!」


 シースターが取り出したのは、なんの飾り気も無い皮手袋で、その名も『普通の手袋』だ。アイテム名の文字色は白。

 これに水色の『能力石』を付与するとのこと。受け取ってアイテム説明を見ると、水属性に対する耐性3%アップ――と書かれていた。


「属性耐性は10%ぐらいないと、あんまり見向きもされないんだよ」

「へぇ。こういう石って分解だと結構手に入るもんなのか?」

「うん、まぁ割とね。良い『能力石』を手に入れるためなら装備分解するのがいいんだけど、こういう低級のものならドロップ品分解でも手に入ったりするよ」


 素材とか、売るだけのアイテムだったりするんだろうか。

 へぇ。割と手に入れられるってんなら、これを市場に流通させれば儲けるんじゃね?

 俺のお古装備も分解して貰おうかな。


 ってことでまずは合成チャレンジ!

 受け取ったアイテム二つを合成していく。

 もちろん外見を残すのは手袋のほうなので、左の合成枠に。石を右側に。


 特にシステムメッセージが出るわけでもなく、無事に完了。

 出来上がったのは……


「アイテム名の文字色は白のまま……『普通の手袋+』ってなってるぞ」

「プラス? 見せて」


 完成品をシースターに渡す。

 能力は確認し忘れたので、彼に尋ねてみると、水属性耐性3%アップはちゃんと付与されているとのこと。

 これ、『+』ってことは、何個でも付けられるんじゃね?


「シースター。屑石他にないか?」

「あるけど……追加合成するのかい?」

「おう!」


 受け取った石と完成品を再び合成する。

【装備品の過剰合成は行えません】――というメッセージが浮かんだ。

 おぅ……そうだった。


「じゃあ、石同士の合成は?」

「そ・れ・だ! シースター、まだ屑石――あるんだなっ。よし」


 石を追加でもう一つ受け取り、二つの合成を試みる。

【この組み合わせは合成不可能です】――おぅ……ダメですか。


「ダメだったみたいだね」

「あぁ。この組み合わせはダメだっていうメッセージが出たよ」

「そか。でもまぁ、装備の複数回合成が出来ないんだし、当たり前と言えば当たり前だよね。『能力石』を複数合成できれば、それあけでやっぱり壊れ性能だし」


 まぁそうなんだけどさ。

 こうなると、自分好みの『能力石』を探し出すのは重要だな。

 装備分解と言っても、このゲーム、普通のモンスターからの装備ドロップは無いし……。ネームドやボス装備を分解用に使うってのは、着古したのならいいが、適性レベルだと自分で着るか、売るかしたほうが絶対良いだろうし。


「なぁシースター。装備分解以外だと、どんなアイテムから石が取れるんだ?」

「うぅん。ぼくもいろいろ分解しまくって、なんとなく法則を掴んだ程度なんだけど……アイテムにさ、それっぽいネーミングが含まれてる物があるんだけど――」


 例えば、ピッピからドロップする『風斬り羽』。これを分解したとき、『能力石』が出る事があるらしい。必ずという訳でなく、三割ぶらいの確率なんだとか。

 三割ならまぁまぁいいんじゃないか?


「ピッピそのものの個体数が少ないし、時間限定だからねぇ」

「あぁ、そうか」

「しかも取れる『能力石』がさ……どんな能力かはランダムっぽいんだ」

「は? どういうこと?」


 シースターがインベントリから、水色の『能力石』を三つ取り出して見せてくれた。

 一つは風属性を武器に付与する石。

 一つは風属性耐性をアップさせる石。

 そしてスラッシュのダメージアップという石だ。


「スラッシュって、剣スキルの?」

「うん。風斬りっていうぐらいだから、斬り付け攻撃のダメージ増加なんて能力もあったんだ」

「ほぉ」


 なら、他にも初期スキルのダメージアップ系とかもありそうだな。

 で、この三つの石は、ピッピからドロップする『風斬り羽』を分解して得たものだという。

 同じアイテムから複数種類の石が取れるのか。


〔ぷぅぷぷぅ〜ぷ〕

「あん? お前の風切羽? え? くれるのか?」

〔ぷ〕

「おぉ。シースター。一本ならぷぅがくれるらしいぞ」


 さっそくぷぅは羽を啄ば……めず、ぷるぷる体を震わせて羽根を一枚、落とした。

 まぁあのフォルムだもんな。自分の翼にすら顔が届かないっていうね。うん。


「いいのかい?」

「一本ぐらいなら、すぐに生えてくるからいいんだとさ」

「ありがとうぷぅちゃん。でも……一本じゃなぁ」

「そう、だよなぁ……」


 ぷぅの青い風切羽を見つめ、俺とシースターはシンキングタイムへと入る。


〔ぷっぷぷぷぅ、ぷぷぅ〜ぷぷ〕

「な、に……その手があったか!!」


 ぷぅの助言によって、大量の『風斬り羽』を手に入れる方法を思いついた。


「え? なに? どんな手なの?」

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