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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バージョン1.02(予定)
164/268

164:マジ、ご主人様になる。

「おぉう……。なんだここ……。モンスター仕様なのか?」


 鉱山ダンジョンから少し下山すること三十分。

 高原の名に相応しく、山々に囲まれた盆地に広がる草原。

 花が咲き、近くには小さな湖なんかもあって最高の景色だ。

 ただし、遠目から見た状態に限る。


 花は、その一本いっぽんが俺の腰ほどもあり、花びらの一枚が掌よりもでかいときている。

 巨大な花で構成された花畑――と思いきや、足元には普通サイズの花も咲いていたり。

 数本の巨大花の群生地が点々としている感じなので、視界が悪いだの、どこから襲われるかわからないだのは無さそうだな。


「ぷぅ、ちょっと上の方から周囲を見てくれないか」

〔ぷぅぅ〜〕


 ばさばさと羽ばたくぷぅを見上げながら思う。

 あのボディーサイズに対してあの翼。小さすぎるだろ。何故飛べる?

 たとえるなら、バレーボール――いや、大玉スイカにシソの葉をくっつけたような、そんな感じだ。

 普通に考えたら飛べるわけが無い。


 考えるのは止めよう。これはゲームなんだから。


「おぉい、ぷぅ。繭とか見えないかぁ〜?」


 採取をメインにするなら、芋虫より繭だ。たぶん生産行為でも経験値が入るから、結局はレベリングになってしまうんだろうけど。

 モンスターを倒すよりは少ないだろう。きっと。


〔ぷぷぅ〜ぷぷ〕


 ぱたぱたと舞い戻ってきたぷぅは、巨大花の群生地に白い楕円形の物があると教えてくれた。

 白い楕円形といえば、繭だろうな。

 点在する巨大花の群生地へと向う。

 近づけば目で見てすぐに分かるソレが、巨大花の茎にくっついていた。


「よし。んじゃ『採取』っと」


 繭に手を伸ばすとゲージが現れ、このゲージが消えると――あれ? 以前、夢乃さんと採取したときには、ゲージが消えて綿が取れたんだけどなぁ。何もおきない。

 再度手を伸ばすとやっぱりゲージが出て、消えて、何も手元に残らない。

 おかしい……。


〔ぷ?〕

「あぁ、いやな。前に採取したときと、なんか様子が違うんだ。アイテムが手元に現れないっていうか」

〔ぷぷぅぷ。ぷっぷぷぷぅ〕


 採取の失敗か、それとも鞄に入ってるんじゃない。とぷぅが言う。

 失敗は有りえるな。技能レベルが低いんだし、ここいらの素材はランクが高いのかもしれない。

 念のためインベントリを確認してみると――


「糸玉……インベントリに直送かよ!」


 いつのまに仕様の変更があったんだ?

 不具合じゃないだろうな。ちょっと聞いてみるか。

 ログアウトしてロビーへと移動。


『お帰りなさいませ?』

「おう。採取の仕様変更とかあったか? なんか前とちょっと違う気がするんだけどさ」


 シンフォニアが首を傾げ、すぐになるほどという顔をしてみせる。


『採取によって取れる素材の数の調整を行いました。またこれまでは採取したアイテムは一度手元に現れ、それからプレイヤー手動によってインベントリに収める仕様でしたがこちらを変更。現在はインベントリ内に直接入るようになっております。作業の手間を少しでも緩和させる処置でしたが、不評でしょうか?』

「いや、それならそれでいいんだ。不具合かと思ってちょっとビビっただけだし」

『左様でございましたか。不具合ではございませんので、どうぞご安心ください』

「おぅ。サンキューな」


 そうお礼を言うと、シンフォニアは笑みを浮かべた。

 随分と笑顔がスムーズに出るようになったもんだ。最初は表情をプログラムされてないんだとか言ってたが、今では傲慢な笑みも今みたいな柔らかい笑みも出せるんだもんな。


『彗星マジック様もお役に立てられたのでしたら、ワタクシと致しましては嬉しく思います』


 にっこりと微笑まれてそう言われると、なんだかこっちが恥ずかしくなってしまう。

 俺の役に立てるのが嬉しいとか……


『うふふ。ご主人様のための奴隷……みたいですわね。ふふ』

「怖ぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


 俺は急いで旅の扉を潜った。






 繭から採取するアイテムは一つではなかった。

『糸玉』が六割ぐらい、三割ぐらいが『縺れた糸玉』。そして一割ぐらいの確率で『上質な糸玉』だ。縺れたのも素材と表記されているが、ダメな部類だろうな。そして上質なヤツはアイテム名の色が緑で、ハイクラスだ。

 そういや素材も合成できるんだろうか。今までずっとペットフードだの装備だのポーションだのしか合成してなかったけど。

 ちょっとやってみるか。


 失敗品であろう『縺れた糸玉』を二つ合成してみる。

 すると『激しく縺れた大糸玉』という、余計にダメそうなアイテムが出来上がった。

 インベントリから取り出してみると、握り拳大の絡まった釣り糸みたいなのだ。うん。解ける気がしない。

 じゃあ『糸玉』を二つ合成すると?

『大きな糸玉』になった。

 じゃあ合成する数を増やしてみるか。

 三つだと『上質な糸玉』に変化。

 おぉ、これちょっといいんじゃね?

 次!

 四つを合成して……『上質な糸玉』。同じかよ!?

 なら五つはどうだ?

 完成したのは『上質な大きな糸玉』で、ハイクラスのままだった。

 普通の糸玉と大きいのの違いがなんなのか……。


『上質な糸玉』を合成するとどうなるのか。

 やってみるか。

『上質な糸玉』二つで『上質な大きな糸玉』が完成。

 うん、まぁそうだよな。

 じゃあ三つだと?

『絹糸玉』が完成。

 絹!?

 アイテム名は緑でハイクラスだが、明らかにこっちのほうが質が良さそうだよなっ。

 これ『糸玉』から合成繰り返して全部絹にすれば、良い装備作れねぇかな。

 いや、でも合成って繰り返せないんだっけか?

 前にシースターが調査してくれたとき、そう話してたが。でもあの時は装備品の合成の話だったしな。もしかして――

 いや、そうじゃなきゃ今出来た事が不具合ってことになってしまう。


 こんな時は――


「シンフォニア!」

『はい、ご主人様』

「うがああぁぁぁぁっ!」


 思わず俺は『ちゃぶ台返し』を発動させていた。

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