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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。 作者:夢・風魔

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16/103

16:マジ、お使いにでる。

 石畳の上を走り、町の中にある工房へと急ぐ。
 そういや俺、あの人の名前も聞いてなかったな。

 薄紫の髪のエルフ……エルフエルフっと……エルフ多いな糞っ!
 そういや俺もエルフでした。ダークが付くけど。

「おーい、ダークエルフのお兄さ〜ん」

 そうダークエルフのお兄さんなんだよ――って、居たあぁっ!
 向こうから気づいて呼んでくれたのは有り難い。

「すんません。ちょっとアクシデントがあって、時間かかっちまった」
「いいよいいよ。このワカメさ、一般素材やなかったと。調合師のNPCに教えて貰って、はじめて素材やって解ったんよ。やけ、全部加工したのついさっきやったし」
「うわ、すんません、面倒なアイテム押し付けて」
「うんにゃ、ぜーんぜん平気。寧ろ有り難いぐらいやよ。なんせ一般の素材加工より、もらえる経験値が多かったし」

 マジか。じゃあ生産する人はワカメでレベル上げできそうだな。

「でもね、広く知られると一般素材化してしまうらしいけん、そうしたら経験値も減るやろうねぇ」
「あ、そういう罠もあるのか」
「うんうん。まぁだって、ワカメレベリングがずっと出来るんなら、楽してレベル上げする人増えてゲームバランス崩れるやろ」

 それもそうか。
 なら今のうちだけの特典だな。
 追加のワカメを渡し、彼女が加工する様を見学させてもらう。

 まずは鍋で煮込み……一分もしないうちに終わりですか?
 取り出したワカメをすり鉢でごりごり――すり棒を五周しただけで緑色のペースト状になったぞおい。

「はい。これがNPCに教わった『喉薬』ばい。調合失敗もあるけん、出来たのは合わせて四十本なんよ」
「もう終わったのか!? って、喉薬?」
「うん、そう。沈黙を解除できる薬らしいんやけど、この辺の狩場だと状態異常攻撃してくるようなのもいないし、必要なさそうやね」

 どうしよう。必要なのは腰痛の薬なのに。
 小瓶を受け取ろうとして触れると、取引要請画面が出てきた。
 画面に小瓶が表示され、その脇に小さく『40』という数字が見える。お互いが『OK』ボタンを押すと取引完了――であってるな。
 それにしてもこれ、毒々しい色だな……。まぁ元の素材がワカメなんだし、当たり前といえば当たり前だが。

 他の用途に使える薬には出来ないのか聞いてみたが、調合師のNPCも喉薬しか知らないという話しだ。
 材料を間違ったのだろうか。それとも大賢者のほうが間違えたのか。
 とにかく持っていくしかないな。

「あ、それで、お礼はどうしよう。沈黙を治せるってんなら、そのうち需要もでてくるだろうし、それでいいなら……」
「私はいいけど、お兄さんは魔術師系やろ? 必要なんじゃ?」
「うっ。言われてみれば……」
「うーん、こっちは経験値いっぱい貰ってるし、別にいいんやけどなぁ。うーん……あ、いらない素材とか持ってたら、安く譲ってくれると有り難いかも」
「素材?」

 そう言われて、今まで拾ったアイテムに一切手を付けてなかった事を思い出す。
 インベントリを見ると、アイテムを入れられるスペースが残り三しか無かった。
 やばいやばい。このまま狩りに行ってたら、アイテムを地面に捨てるところだったぞ。

 素材と書かれているのは『ブルーゼリー』と『蟹のハサミ』『硬い甲羅』『兎の毛皮』『猪の毛皮』『猪の牙』『貝』『巻貝』か。
 ずっと整理しなかっただけあって、いろいろあるな。

「え? こんなん持っとると? え、アイテム整理してなかった? あぁ、それでやね。でもどうしよう、こんなんいっぱいあったら、払えるお金のほうが……」
「あぁ、いいよ。ちょっと良い事あって、装備も手に入ったし。ほくほくだからさ」
「良い事? 告白されたとか?」
「……何故そうなる」
「いや、その顔やし」

 イケメンならそこかしこに居るだろ。

「そうなんや。ところでこの素材で作れる装備とかあるけん、何か欲しいのある?」
「作れる? 技能は何を持ってるんだ?」
「えっとね――」

 調合の他には、『裁縫技能』『採取技能』『鍛冶技能』『鑑定技能』、そしてDEXを上昇させる『集中力』と『弓術』の七つだという。
 採取と鑑定はこの港町でも修得できる技能ってことで、初期に取るのは罠らしい。

 鍛冶といえば前衛御用達の武器や、重装備を作れる技能だが俺には不要だ。
 裁縫は布製の、服と言えるような装備を作る技能だから、俺が必要な装備だとこれだな。
 丁度いい。服が初期のままだし、上下揃いの服をお願いしよう。

「オッケー。でも直ぐ作れるのはレベル4の装備なんやけど、どうする?」
「直ぐってのは、材料的な意味で? それともレベル的な意味で?」
「ふっふっふ。両方っちゃ」

 うーん、できればレベルに近いほうがいい。欲を言えば一つ上の装備とかでも。
 生産装備のレベルは4の倍数ごとに作れるという。
 じゃあ8か。

「技能レベルを上げるには、やっぱ技能スキルを使わなきゃならないんだろ?」
「うん、そうなんよね。その為にも素材が必要不可欠なんやけど、今だとまだ素材売ってくれる人少ないし、NPCに売却する人多いんよ」

 あぁ、解るなそれ。
 前にやってたVRでも、俺は素材をNPCに売る派だった。
 買取してる生産職がいるのも知ってたけど、NPCと違って取引するまでが面倒くさいんだよな。
 自動で計算して瞬時に金を払ってくれるし、詐欺することもないNPCに対し、プレイヤー相手だと計算待ちに、最悪持ち逃げってのもある。

 あぁ、そういや俺。初対面に等しい人によくワカメ預けていったもんだ。
 久々のVRだったから、警戒心無さ過ぎだったな。
 ま、結果的に良い人だったからノープロブレムだ。

「よし。じゃあこの薬を渡してくるから、その後でも素材集めの手伝いするよ」
「いいと? じゃあ、採取覚えてもらえたら、綿摘み一緒して貰って良い? 北に少しいった草原に咲いとるから」
「オケオケ。ちょっと待っててくれな」





 ピリカの家の灯りはまだ点いていた。待っててくれたんだな、大賢者!

 静かーに戸をノックすると、またもや親父さんが出てきた。この人、このクエスト中ずっと起きてるつもりだったんだろうか。

「冒険者さん、まさか本当に……」
「はい。でも腰痛の薬じゃなくって、喉薬だったんです。素材を間違えたのか、それとも……」

 大賢者がボケてたのか。なんて言える訳ない。悪い印象を持たれては、技能修得も拒否られるだろうし。

「あの、その件なんですが……」
「トリトンさん。またあの若造かの?」
「あ、はい。おとうさん」

 奥の部屋から出て来た大賢者。腰がいたいのか、その歩みは遅い。
 頭を下げ、違う薬が完成してしまったことを謝罪する。

「すみません。大賢者様は腰痛だってのに、出来上がった薬は喉薬でした。拾ってきた素材が間違っていたのかもしれません」

 受け取った喉薬を一本出して、大賢者に見せる。

「……こんな時間に……」
「はい、すみません」
「本当に作ってきおったのか」
「いや、俺じゃなくて、たまたま知り合った人に頼んで作って貰いました」

 あ、また名前聞いてねえや。

「随分と正直に話すもんじゃな。普通は自分ひとりの手柄にしたがるもんじゃが」
「え? じ、じゃあ、俺が作りました」
「今更嘘を付いてどうするのじゃっ。と、とりあえず、わしは腰が痛いんじゃ。薬は確か……おおっ、草原に生息するピッピの卵じゃ!」

 ピッピ?
 名前や卵というキーワードからして鳥か?

「お、おとうさんっ。あんな滅多に――」
「うぉっほんっ。トリトンさんや、口出し無用じゃっ」
「いえ、でも……万が一ピチョンが」
「それこそ好都合じゃっ。けちょんけちょんにされて諦め――ごほんっ。とにかく卵じゃ、卵を持ち帰ってくるのじゃ」

 よぉし、今度は鳥か。
 鳥だと羽根とかが装備の素材になりそうだよな。
 生息場所が草原ってことは、綿が取れる草原と同じかもしれない。なら一石二鳥だ。鳥だけに。

「んじゃあ草原に行ってきますっ」
「え、あっ。冒険者さんっ」

 家を出ると、走って工房まで戻ってきた。
 かくかくしかじかでエルフの人に事情を説明すると、確かにピッピという名のモンスターが同じ草原に出るらしい。
 ただ――

「そのモンスターね、早朝にしか現れないレアモンスターなんよ」
「レア? ネームドとどう違うんだ?」
「ネームドは一つのフィールドに一体か二体しか存在せんモンスターで、レアってのは特定条件にしか出現しないモンスターなんよ。数は少ないけど、数十羽ぐらいは出てくるんばい」

 ほう、そういうのもいるのか。
 しかし特定の時間だけかぁ。今から行って間に合うかどうか。

「採取技能は直ぐ取れるけん、ささっと取って行こうか」
「うす」
「じゃ、こっち」
「あー、ところでそちらのお名前は? まだ聞いてなかったし、なんて呼べばいいのか。ちなみに俺は彗星マジック。ハレー彗星のすいせいだ」
「私はゆめの。寝てみる夢に、のは漢字変換して出てくるカタカナのノにカクカクしたのをくっつけた乃ね」

 なんとなく言わんとしている漢字は解った気がする。

「この名前ね。半分はログインサバのサポーターさんに付けて貰った名前なんよ。夢っていう漢字好きやけど、夢だけやと既に使われとったし。なんか良い組み合わせの名前、ないかなぁって相談したんばい」
「サポーター?」
「うん。そう。あー、ロビーに居たNPCって言うたら解るかな」

 あぁ、あいつね。

「プレイヤーの性別によって、あそこのNPCの性別も違うんよ。知っとった?」
「え、そうなのか? 俺は女NPCだったが……」
「私のほうは男の人。イケメンやけど、彗星君には負けるかなぁ」

 なんか無駄なところでプレイヤーに媚びてるなぁ。
 NPCに――といえば。

「俺のこの顔も、その受付ロビーのNPCに作って貰った顔なんだよ」
「え? そのクール系超絶イケメンフェイスも?」

 こくりと頷く。
 自分でキャラメイクするのが面倒くさく、NPCに任せた事。
 奴が質問を出すから、それに答える事で好みを聞かれてたっぽいが、技能の事とか考えてたもんだから上の空で答えてたら――

「その完璧なまでのイケメンになったって事?」
「まぁ、その……」
「そのサポーターさんとお友達になりたい! 凄くいいセンスしとるしぃ」

 はぁ、左様ですか……。

「とにかく、よろしくね彗星君」
「マジックのほうが恥ずかしくなくていいんだけど……まぁいいか」
「よぉし、急ぐばーいっ」

 ところでどこの方言なんだ?
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