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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バージョン1.02(予定)
159/268

159:マジ、幻覚を見る?

 じりじりと集まってくるモンスターたち。主にゾンビとスケルトンだ。

 なら、最高の魔法で迎え撃ってやろうじゃないかっ。


「ノーム!」

〔むむっ!〕


 地面から飛び出してきたノームは、俺の意図を察してその場にちゃぶ台を立てる。

 広場から通路に出るその場所に、まるで開いた扉のような形で座卓が出来上がった。少しの隙間を空け、もう一枚俺がちゃぶ台を立てる。

 そして――


「ほっぷ、すてっぷ――」


 座卓の足を蹴って上り、更に壁も使って三角飛び!


「ジャンプからの『シャイニングフォース・フィンガアアァァァァ』」


 迫り来るアンデッドどもの頭上から、聖なる光が降り注ぐ。

 悲鳴のような、ただの嗚咽というか、不気味な声を上げ、それでもじりじり向ってくる。

 スチャっと着地して、手の届く距離の奴にフィニッシュを決めれば、塵になって四散していく。

 さぁて、次は『焔のマント』で――


 スコンッ。グサッ。ヒュッ。っという音が聞こえ、バタバタとゾンビスケルトンどもが倒れていく。

 お、俺が華麗に止めを刺そうと思っていたのにぃ。


「マジ大丈夫か?」

「いくらマジックどんでも、一人で突っ込むのは無謀であるぞもし」


 そう言いながら二矢目を放つ二人。それぞれ一体ずつ倒してドヤ顔だ。

 HPのほとんどを俺の魔法で削られていたアンデッドは、矢の通常攻撃一発で塵になっていく。

 だから『焔のマント』で火葬しようと思っていたのにぃ。


 最初こそ焦ったものの、アンデッドとの相性バッチリな聖属性魔法と、それに追加補正が入った杖のお陰で意外といけるもんだな。

 ノームと俺の『ちゃぶ台返し』もいい具合に壁になり、一度に大群が押し寄せられない構図にすると、モンスターハウスも楽に潰せそう。

 もちろん、通路という狭い場所がそういう立地を作り出せた訳だし、最初からここに大群が詰まってたらどうにもならなかっただろう。

 条件が良かったのだ。

 とりあえず、巨大スライム周辺の雑魚は一掃した。

 残りは奴と、奥のほうで固まってるプチモンハウ住人だな。


「奥のを刺激しないように、ネームドをこっちに釣るか」

「じゃあ私が、ギリギリの所でヘイトスキルを使えばいい?」

「おう。そうしてくれ。『カッチカチ』やぞ」


 セシリアはAGI型だ。基本的に防御力は高くない。まぁ俺よりはマシだろうけど。

 けど万が一の事を考えて、まずは彼女にバリアを掛けてやる。CTが明けたら次は自分だ。


 両手剣を斜めに構え、すたすたとスライムに向って歩いていくセシリア。

 もっと慎重に……。

 それからいつものフレーズでスライムを馬鹿にすると、全力で戻ってきた。


「出来た!」

「おぉ、出来たできた」


 ちゃんと釣れたことが嬉しいらしい。

 慎重さの欠片もない釣り方だってのに、ちゃんとスライム一匹だけを釣ってくるんだもんなぁ。

 あの初心者だったセシリアが……立派になったもんだ。


 身構えたセシリアを中心に、ドワーフたちが左右と後ろに分かれて戦闘態勢になる。

 俺はセシリアの隣で、攻撃と回復の二役を演じなければならない。ヘタすると回復メインになるかもな。

 とりあえず、『カッチカチ』効果がある間は攻撃に専念しよう。

 まずはこいつの属性を見極めないとな。



◆◇◆◇◆◇◆◇


 魂のスーパーデラックスレッドスライム / LV:33

 

◆◇◆◇◆◇◆◇



 ネーミングセンスの欠片もねえな。なんでもスーパーだのデラックスだの付ければ、強そうに見えると思ったら間違いだぞっ。

 が、スライムの色といい、名前のレッドといい、たぶんこいつは火属性だな。


「ふ。今の俺に属性の死角は無い! 行くぞっ『ウォーター』」


 右手を突き出し、水球を――あれ? 水球が作れない、だと?

 突き出した右手の掌からは、ピューっと一筋の水が噴出しているだけ。


「おいマジ。なに一発芸なんかやってんだよ!」

「マジックどん、新しい芸を身につけたぞなもし」

「マジック君! 凄いぞ!」


 ちがうちがう。そうじゃない!

 え、えっと、水球をぶつける攻撃だったよな?


「『ウォーター』」


 自分の手を見つめながら詠唱すると、噴出した水が顔面に掛かった。

 ……水の勢いとか全然ありませんけど?

 これでダメージ与えられるのか!?


〔ぷぷぷっ〕

「わ、分かってるさ。糞。水撒きのしすぎで、へんな風にイメージが固まっちまったぜ」


 もうこうなりゃ、一発芸のノリでやってやる!


「『ウォーター』」


 右手でピストルの真似でもするかのようなポーズを作り、人差し指の先からピューっと水を噴出す。

 弧を描きながらじゃばじゃばとスライムに水が掛かると、じゅっという音と湯気が立ち昇った。そして予想に反して三桁後半のダメージエフェクトが浮かぶ。


「一発芸でもダメージはちゃんと出るんだな」

「よかったな、マジ」

「うん、よか――いいからお前らも攻撃しろよ!」

「ふひひ」


 でもほんと、良かったぜ。

 ただ三桁ダメージってのは辛いな。試しに『サンダー』を使ってみたが、ダメージはほとんど変わらず。『ファイア』は……


「うぉ! 緑色のダメージエフェクト!?」

「マジックさん、それ回復してるんですよ」

「火属性なうえに、耐性強すぎて逆に吸収してるっすな」

「「『ファイア』禁止」」


 はい。すみません。


 うーん。決定打に欠けるなぁ。

 俺の水属性のレベルが低くて、レベルの高い『サンダー』と基本ダメージが違いすぎて、結果的に差がなくなってしまってるし。

 今からスキルと作成といっても、戦闘中は作れないんだよなぁ。

 まぁなんとかするしかないか。


「『ウォーター』からの、『サンダー』。そして『ロック』」

〔のっむ!〕


 ノームも『ロック』を使って頑張っている。その頑張りは俺のMPなんだけどな。

 しかしノームの魔法もあまりダメージは期待できない。属性の相性もあるし、『ロック』のレベルも低い。それでもゼロよりはマシか。


「『ウォーター』」


 水芸を披露しながらスライムを濡らしていく。

 こいつ、別に熱い訳でもないのに、水を掛けるとじゅっとか音だして白煙が出るんだよな。

 ぼよんぼよんと揺れる体から、時々びよんっと細い鞭みたいなのが伸び、それでセシリアを攻撃している。が、彼女はひらりと躱して、今のところノーダメージだ。

 あれなら俺でも回避できそうだな。だって、びよん、だし。

 びよんっと飛んでくる鞭を、ぴょんって躱す。

 くふふ。びよんでぴょんだってさ。くふふふ。


「危ない、マジック君!?」

「『ウォーター』へ?」


 水を噴出しながら、俺は何度か味わった事のある衝撃に襲われた。

 視界の端では、数本の赤い鞭がセシリアに襲い掛かる光景が見えた。


 まただ……

 また俺は彼女に……


 彼女に突き飛ばされた!

 しかも今回は、俺を突き飛ばして尚、彼女はスライムの攻撃を躱している!?

 なんだよ、むちゃくちゃ強くなってるじゃん。

 助けてくれるのはいいけど、もっとスマートな助け方ってないんですかね?


 あぁあ、スキルが発動した状態だったせいで、思いっきり自分に水が掛かったよ。

 あ、こういうのを、水も滴るいい男って言うんですかね?

 どうせなら綺麗な子が居る前なら、かっこも付けられたんだけど。


〔ぷくぷくぅ?〕

「そうそう、こんな綺麗な子の前ならかっこつけようってもん、だ、け、ど?」

〔ぷく!?〕


 ぷくって、この目の前に居る掌サイズの綺麗な半透明なお姉さんは、誰ですか?


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