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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バージョン1.02(予定)
151/268

151:マジ、召喚される。

 昨日一昨日と、俺は本来の目的を忘れてしまっていた。

 そう、俺はガッツリレベル上げをするための狩場を探していたんだ!

 何故ガッツリやりたかったかというと、技能経験値アップのアイテムを使いたかったからだ。

 メッセージボックスにあるアイテムは、アイコンがカプセル錠剤のようでなんとも妖しい薬のようだ。

 受け取ったら有効効果時間が消費されていく仕組みなので、狩場で受け取り、そこから可能な限りレベリングをしたい。

 少しぐらい背伸びした狩場で、ポーションなんかもがっつり用意して引篭もるんだ。

 その為の狩場探しだったのに、寄った開拓村で大賢者に捕まるわ、ピリカが誘拐され犯人扱いされるわ、犯人探しに行ってNPC最強イベントを見せられるわ。

 散々な目にあった。


 いろいろ疲れたので夜はペットフードの合成をしまくって、合成技能がレベル33に!

 技能レベルのほうがキャラレベルより高くなってしまうとは……。まぁ生産系技能はこれしかやってないしな。

 更に合成剤の材料集めで楽したいときは、ダークエルフ集落下北のコスライム天国に行ってるもんだから、レベルが上がらなくなってしまったし。

 仕方ないっちゃあ、仕方ないか。


 そんな訳で本来の目的であるガッツリ狩場探しだ。

 レベルも31になったし、次の32装備の素材集めも兼ねてレベリングするか。

 ウィキ見ながら32装備の素材をドロップするモンスターを探そう。

 まぁ情報が出てるかどうかってのもあるけど。


 飯を食って受付ロビーまでログインしてから――


「パソコン出してくれ」

『お帰りなさいませ彗星マジック様パソコンですねはいどうぞ』

「……息継ぎぐらいしろよ」

『ワタクシ、呼吸はしておりませんので』


 いや、そうだろうなぁとは思ってたけど。ぶっちゃけられると、改めてこいつが人間じゃないってことを認識させられる。

 

 渡されたノートパソコンを持ってウッドデッキへと出る。


〔ぷるぷるん〕

「よう。今日はこんな所までやってきたのか」


 読書週間の間に、なんとなく仲良くなってしまったコスライム。

 赤、青、黄色、緑、白の五色だ。まさに戦隊ヒーローだな。

 ウッドデッキの上で、ゆる〜ると散歩を楽しむコスライムたちに手を振り、パソコン画面を立ち上げる。

 まぁ横のスイッチを入れた瞬間、ネットに繋がるんだけどな。


『何をお調べですか?』

「次のレベルで装備変えだからさ。素材集めしようと思って」

『ドロップ情報ですか』


 返事の変わりに頷く。


『買う、という選択肢はないのですか?』


 そう言ってモニターを見つめる俺の顔に、シンフォニアが密着して!?

 思わずがばっと仰け反る俺。


「おおお、お前っ。呼吸してないからって、顔近づけんなっ」

『呼吸していない事と、顔を近づけてはなら無い事と、どう関係があるのでしょうか?』

「いい、いろんな関係があるんだよ。いろんなだっ」


 ごもりながら適当にはぐらかす。

 つまるところ――恥ずかしいのだ。

 俺だって年頃の男子なんだからな!


 さ、さて。脱線してしまったが、シンフォニアの言う事にも一理あるな。

 買うという選択肢もあってもいいかもしれない。

 いや、今までも何度か露店を見てはいたが、あまりの高額さにドン引きしてたんだよな。


 だがしかし、俺も最近は懐が随分と潤ってきた。それもこれも、合成ペットフードのおかげだ。

 委託に出せば即完売!

 儲けは少ないとはいえ、合成剤がほぼタダだからな。

 合成ペットフード作るのに、経費としては175ENほどだ。一つ売れば25ENの儲けが出る。

 これを毎回百個単位で販売しているが、即売れで2500EN儲け。ほぼ毎日のように、時には一日に何度も委託に出してるから、純粋なドロップ品の売却も含めて結構稼げている。

 つまり、


「金持ちだ!」

『お気を確かにお持ちください!』

「五月蝿ぇ!」


 手持ちの財産は……おぉ、十八万EN!

 これが現実のお金だったらと思うと、何ヶ月分のプレイチケットになるんだろう……。

 よし、ちょっとログインして露店を見て回ろう。






 ファクトの露店街で俺は呆然と立ち尽くしていた。


 レア上半身布装備。最安値が七万EN。最高値は十万を超えている。下半身も似たり寄ったりだ。

 買えなくも無い。

 だが買ったら金がほぼ無くなる。


「うがあぁぁぁっ! 怒りの『ちゃぶ台返しぃっ!』」


 我を忘れてつい魔法を発動させてしまう。

 足元は土だ。見事な座卓がその場に現れて、周囲の目を引く。


「おいおい、どうしたんだよそこのあんた」

「あ、ども。すみません。ちょっとムシャクシャしてつい」


 MP消費半減という、魔法使いなら目から鱗ものの効果が付いた、最高値のローブを見ながら溜息を吐き捨てる。

 欲しい。だがあれを買ったら他の部位の装備すら買えなくなる。


「素材のドロップ数上がってるのに、なんで価格は下がってないんだよ」


 寧ろ上がってんじゃね?


「あぁ、気持ちはわかるよ。生産組の言い分としては、これまで高額で買取った素材の事を考えたら、ドロップ調整はいったからって安くできないんだとさ」


 更に他の露店プレイヤーが値下げでもしない限り、自分のところだけ値下げしたら転売されるから嫌だ――という意見もあるんだとか。

 そんな事を親切に教えてくれた人は、最後にこう付け加えて去っていった。


「今は素材持参で製造依頼をしないほうがいいぜ。露店で買えば高い。だから素材を集めて依頼をしたほうが安上がりって考えのプレイヤーが多く、この手のプレイヤーを狙った請負詐欺が横行してるって話だ」


 俺の初VRでやたれた苦い経験が蘇る。

 くそう。真っ当に生産やってるプレイヤーも多いってのに、こういう奴が一人でもいると全員が信用できなくなっちまうからなぁ。

 露店で直接買うのが安全なんだろうけど……。

 再び視線を向けた露店では、俺と同じように指を咥えて高性能高額ローブを見つめるプレイヤーの姿があった。

 もう一度深く溜息を吐き捨てる。


『ドドン:召喚、変態!!』

「ぶふぉっ!」


 突然浮かんだチャットウィンドウに表示されたのは、変態の文字。

 誰が変態だゴルァ! 思わず吹き出したせいで、周りから変な人でも見るような目を向けられてるだろうっ。


『彗星マジック:なんだノーム』

『ドドン:ノームじゃねえし。ちょっとお願いがあるみゅ☆ミ』


 きめえええええええっ!

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