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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バージョン1.02(予定)
149/268

149:くっころ。

「おじいちゃあぁぁん」

「ピリカアァァァ」


 がしっと抱擁しあう孫とそのじじ。

 感動的な場面なんだろうけども……。

 今、俺たちの背後には元砦の成れの果てがあった。見る影も無い、ただの瓦礫です。

 それを作り上げた張本人のうちの一人がこのじじだ。感動するどころか、唖然とさせられる。

 お陰でこっちは砂まみれだ。砂埃とか、リアルに再現しなくていいってのになぁ。


「ケホケホッ」

「大丈夫か、ココネさん、霧隠さん?」

「だ、大丈夫でござる。この無駄にリアルな砂埃は必要なんでござろうか?」


 そう言って霧隠さんはマフラーを外し、砂埃を払う仕草をする。

 ポニテちゃんだ。

 やっぱりポニテちゃんだ。


「やっぱ女装じゃん」


 ぼそりと呟くと、霧隠さんが物凄い形相でこちらを睨み付ける。

 あ、女装家がバレるの、嫌だったんだな。まぁそうだよな。俺が女装してたら、知り合いにバレるのは絶対に嫌だし。

 分かるよその気持ち。

 女装しようとする気持ちは分からないけど。


「えぇーん。怖かったよお姉ちゃ〜ん」

「お姉ちゃ〜ん」


 解放された子供たちがココネさんやアイリス、そして――


「お姉ちゃん、助けてくれてありがとう」

「よかったでござるな」


 何故か霧隠さんのところに行って抱きついている。


「おい、坊主。その人はお姉ちゃんじゃなくって、お兄ちゃん、だぞ」


 そう言うと、NPC坊主は硬直し、シンキングタイムへと突入してしまった。

 いやまぁ見た目はお姉ちゃんだけどな。


「オネェ、オニ、オ、オ――」

「あ、バグったか? おい霧隠っ、お前が女装なんかしてるから、NPCが性別判断できなくってバグってるじゃないか」

「……貴殿は……うん、まぁいいでござる」

「マジックさん、霧隠さんって、女の人ですよ?」

「はっはっは。ココネさんまで。何言って――なぁぁにいぃぃぃぃっ!?」


 え、うそん?

 霧隠さんって女の子だったの?


「拙者、女装ではなく、男装のつもりであったでござるが。彗星殿が女装家だと思うならそれはそれでいいでござる」

「えぇ〜? どうしてですか?」

「拙者、元々女扱いされたくなくて男装しているでござるから」


 俺の頭がぐるぐる目まぐるしく回っている間、ココネさんと霧隠さんの女子トーク(?)は続いた。


「拙者がVRゲームで求めているのは、現実とは違うファンタジー世界での冒険でござる! 危険と隣り合わせの世界で、ちゃんと自分の実力で勝負したいのでござる!」

「えぇ!? 女の子だったら皆が優しくしてくれたり、いろいろ教えてくれたりしていいじゃないですかぁ」


 なんとなく……思考がセシリア寄りなんじゃないかと。


「ネナベプレイが出来ればそれが一番だったのでござるが、このゲームは異性キャラでのプレイが不可能でござるから、だぼついた装備なんかで隠していたでござる」

「そ、そうか。でもなんでござる?」

「それは、忍者といったらござるだからでござるよ! この『IFO』はプレイスタイルでどんな職業プレイも可能でござる。拙者、忍者大好きでござるが、ニンジャが用意されているほかのゲームだと、気に入らない術なんかもあるでござる。しかしこのゲームであれば、自分の思い描く忍術を作ることが可能でござるからして――」


 その後、約十分に渡って霧隠さんの忍者論を聞かされた。

 聞いてる限り実在した忍者ではなく、人気アニメの忍者がモデルのようだった。

 つまるところ、ヲタク女子だな。


 俺が霧隠さんの理想とする忍者の話を聞かされている間、NPC同士での会話が始まる。

 これはイベントかな?

 忍者ネタは一旦置いといて、ココネさんと三人でNPCの輪の中へと加わった。


「さすがは大賢者様ですわ」

「ダークエルフの始祖殿も、噂に違わず素晴らしいお力の持ち主だ」


 アイリスとファリスの二人が、遅れて登場した二人のNPCを称賛する。

 俺からすればあんた達もどっこいだと思うんだけど。


 無事に子供たちを救出し、俺が『シャイニングフォース・フィンガー』でぶん殴ったダークエルフ以外の五人はブリュンヒルデの手で捕まえられた。


「さぁ、あなた達の悪巧み、全部話すですの!」

「ふん。裏切り者の始祖になど話すものか」

「別に裏切ってないですの。私は元々光の神様の僕。だから元の鞘に収まっただけですのよ」

「物は言いようだな」


 まったくだ。

 悪ダークエルフの話を聞きながら、なんとなく頷いてしまう。

 しかしこの悪ダークエルフどもはいったいなんなんだろう。ブリュンヒルデの様子からすると、集落で暮らす連中ではなさそうだ。

 コスライム天国に居たNPCダークエルフも「見慣れない」と言っていたし。


「大賢者様、あいつらはいったい何者なんですか?」


 孫との抱擁中に声を掛けたからか、やや不機嫌な大賢者。そして俺の顔を見るなり――


「孫はどこにも嫁に出さんからな!」


 と、ボケはじめた。


「おじいちゃん、勇者様だよ。ピリカの勇者様なんだよぉ」

「勇者? ――――おぉ、お主か! ピリカを助けに来たのか? ご苦労じゃったのぉ」


 ダメだこのじじ。今になってようやく俺が『俺』である事に気づきやがった。

 それはどうやらブリュンヒルデも同じだったようだ。


「まぁ、マジックさんですの!? まさか巻き込まれた冒険者というのが、マジックさんだったとは……我らの救世主、マジックさんに罪を着せようなんて、許しませんの!!」


 と言って彼女が両手を天に付きあげると、空には暗雲が立ち込め、稲光が走った。

 ガクブル。彼女を怒らせるのは止めておこう。

 そう思ったのは悪ダークエルフも同じだったのだろう。

 更に彼らに追い討ちを掛けるように、ファリスが長剣を抜いて、白銀の刃をリーダー格っぽい、いちばんイケメンダークエルフの首元に突きつける。


「貴様らの企み、全てこの場で吐いて貰うぞ」


 ファリスの落ち着き払ったその口調が、余計にダークエルフらを追い詰める。

 だって、口調はアレでも、目がすっげぇ怖いんだよっ。

 だが悪ダークエルフのリーダーも負けてはいない。

 キっと睨み返し、無言の反撃に出る。

 その様子にファリスは、更に剣を押し当て、奴の首下に薄っすらと血が滲んだ。


「くっ。殺せっ!」

「なに?」


 悪ダークエルフがくっ殺!?


「貴様ら異端者どもの慰みものになるぐらいなら……いっそ殺せ!」


 はい?

 な、慰みもの?


「ふっ。そうか、ならば――」

「いやいやいや、今こいつ、おかしな事言ったでしょ? ねぇ、そこつっこまないの?」


 慰みものって、アレだろ。こう……いやんばかんな事される。

 そういうのって、男じゃなく、女の人がいうセリフじゃないか? それともこのゲームでは男が受けなのか? 女が攻めなのか!?


「な、なぁ? 慰みものって、おかしいだろ?」


 同意を得るため振り向くと、霧隠さんは顔を背け小刻みに震え、ココネさんはニコニコ笑ってこっちを見ている。


「マジックさん。マジックさんはすっごくかっこいいです。でぇと出来るなら、ココネ、したいです!」

「は?」

「っぷ……。そ、そうでござるな。彗星殿は美麗な男でござる。目の保養にはなるでござるよ。っくす」


 え? え?


「わぁ〜い。ピリカの勇者様ぁ〜。ステキ♪」

「孫は嫁にやらんどおぉぉっ」


 大賢者はおいといて、その場にいる女性陣が俺をギラギラした目で見つめる。(気がする)

 その目はまるで、得物を狙う肉食獣のような……。


「ふっ。貴様も異端者どもの慰みものではないか。ふふ、ふはーっはっはっは」

「うわあぁぁぁっ。止めろぉ。同情するような目で見るなぁ。俺はお前らの同類じゃないんだっ。そこっ。俺は得物じゃないんだからなっ」

「ふふ。マジック殿。貴殿は何を言っているのだ?」


 ギラリと光る目と刃を向け、ファリスがニタリと笑う。(気がする)

 がくがくぶるぶる。

 お、俺……年上のお姉さんは……嫌い、ではありません。


「ああぁぁぁっ、何を言っているんだ俺はぁぁ。このままじゃ、このままじゃ……くっ、殺せ! 慰みものにされるなら、いっそ殺してくれぇぇぇっ」


 ……。

 ……。

 あれ?

 無反応?


「もうっ。マジックさん、何言っているんですか」

「彗星殿が変な事言うから、みな固まってしまったでござるよ」

「はへ?」


 抱えていた頭を起し、辺りを見てみると、悪ダークエルフ軍団も大賢者も子供たちも、他のNPC全員が俺を見つめてフリーズしていた。

 ただ……


「コロ……ク、コロ……」


 ファリスだけは奇妙な言葉を口にしながら、その剣先をミリ単位で俺の方に向けようとしていた。

 怖い。怖い怖いこわいコワイ。


「う、嘘です。冗談ですっ。は、話を進めて下さいお願いしますっ」


 必死になってそう弁解すると、長い硬直から解放されたNPC達が動き出す。


「ふはははははっ。貴様もやはり慰みものだったの――ぐべっ」

「五月蝿いです」


 話の辻褄を合わせようとしたのか、悪ダークエルフの一人がが調子に乗って俺を嘲ると、ココネさんがその魔女っ娘ステッキで奴をボコった。

 何発かボコボコされた後、悪ダークエルフが悲鳴を上げて命乞いをしだす。


「た、頼む。命だけはっ」

「じゃあ、計画を全部話してくれますか?」


 チラっと見たココネさんの顔は、笑っていた。

 怖い……。


「た、大陸から移住してきた異端者どもを、わ、我らの神に改宗させるために――」

「やめろっ。黙っていろ」

「この状況が分かっているのか? 相手には始祖がいるのだぞっ。われらが太刀打ち出来る訳などないのだ! なぁ、頼む。命だけは助けてくれ」


 うん。なんとも情けないダークエルフである。

 ダークエルフってのはもっとこう……誇り高くて、命乞いなんてしない、そんな種族っていうイメージなんだけどなぁ。

 仲間に止められながらもずるずると計画を暴露していく悪ダークエルフ……ここはEとしておこう。いちばん下っ端くさいし。

 Eの話だと、彼らは元々この大陸に住むネイティブなダークエルフらしい。

 つまり、始祖であるブリュンヒルデの若かりし時代に、光の神々から闇の神々に寝返った、そのままのダークエルフだ。

 今、ブリュンヒルデと共に暮らしてるのは、更に光の神々に寝返り戻ってきたダークエルフたち。肌の色は戻して貰えなかったからややこしくなる。


「でも子供を誘拐して、どうやって違う神様を信じさせるつもりだったんですか?」

「ふん。そんな事も分からぬとは、やはり愚か者だな異端者ども――ぶへっ」


 ココネさんが自分の質問に答えようとしない悪ダークエルフを、その魔女っ子ステッキで殴った。

 お、大人しい子だと思ってたんだがな……女の子を怒らせるのは止めておこう。


「お、教えてやろう。子供を誘拐し、邪神様は素晴らしいという事を説き続けるのだよ。そして改宗したのちは、我らの民として受け入れてやるのだ」

「大人どもはいずれ死ぬ。我らの同胞の手によってな。そして子供たちだけは改宗させ、他所の大陸から押し寄せてくる異端者どもを迎え撃つ兵に育て上げるのさ。ふふ、ふはーっはっはっは」


 あ、遂にだんまりを決め込んでいた悪ダークエルフ……えぇっと、Cにしておこう。三番目ぐらいにイケメンだから。こいつも喋りだした。

 うぅん。計画だけ聞けばまぁ恐ろしい内容なんだろうけど。

 マインドコントロールで子供を洗脳させ、その間に親たちは虐殺。

 後からやって来る他の大陸人たちも、洗脳した子供たちを使って殺す。

 みたいな内容だよな?


 でもなんでかな。

 悲痛な顔しているのはNPCだけで、怒ったココネさんにガスガス殴られ悲鳴を上げている悪ダークエルフを見ていると、とてもこいつらがそんな巨悪には見えない。


「しかしなんだって俺と霧隠さんに罪を擦りつけようとしたんだ。ダークエルフなら正々堂々と悪事を働けばいいだろう」

「マジックさん! それでは我らダークエルフが、邪悪な種族みたいですのぉ」

「あ、いや……と、とにかくなんで俺たちを巻き込んだ?」


 口を尖らせ抗議するブリュンヒルデを尻目に、青あざがあちこち出来上がった悪ダークエルフを見下ろす。

 ……ちょっと良い眺めだ。

 我こそはダークエルフの中のダークエルフであるぞ!

 とか、マントを広げて言いたくなってしまう。

 そこをぐっと我慢して、ココネさんに習い喋らない悪ダークエルフを――


「ぷぅ、出番だ」

《ぷ! ぶぶぶぶぶぶぶぶっ》

「あ痛タタタタタタタタタッ」


 俺の号令と共にぷぅが悪ダークエルフEを突きまくる。


「お、お前達は、イタタタタ、誇り高きダークエルフであるにも関わらず、冒険者などというイタ、下等な身分に成り下がってイタ、いるからだ!」

「あっさり命乞いしてるような奴に、誇りとかあるのかよ」

「ほこりはほこりでも、ゴミのほうのアレでござるな」

「誰でもよかったのだ、冒険者であれイテテテ。子供たちを誘拐したのが冒険者であれば、移住してきた異端者どもは冒険者と敵対、イテ、するだろう、クソ」


 容赦なく悪ダークエルフを突きまくるぷぅは、A、B、C、D、Eと、かわるがわる攻撃をしていく。

 安心しろ。ダメージは出ないから、どんなに突かれても『痛い』だけだ。

 しかし、NPCとプレイヤーを敵対させようとは……。

 敵対されたら俺たち冒険者は町を利用できなくなる。各施設が利用できなくなる。クエストも受けられなくなる。ペットフードも買えなくなる。


「それは困るんですけど!!」」


 俺の唯一の稼ぎである、ペットフード合成が出来なくなるとか、絶対ダメだ!


「じゃが、こうして奴等を捕らえたことだし、儂らが保証人となってお主らの身の潔白は晴らせるじゃろう。安心せい」

「よろしく頼みますよ、大賢者様」


 まぁ超が付くほど有名人だろう大賢者やファリス、聖女として名の知れたアイリスもいるんだ。NPCがプレイヤーと対立なんてことは回避できるはず。

 なのに、何故悪ダークエルフどもは笑ってんだ? 青たんの出来た顔で。


「くくく。我らの計画は確かに失敗はした。だがな……」

「貴様ら異端者を抹殺する計画は、もう既に始まっているのだよ。くくくく、はーっはっはっは!」


 ずっと黙っていた悪ダークエルフA――イケメン度ナンバーワン――が、これぞTHE悪! のような声を上げ始めると同時に、地面が激しく揺れ始めた。

 こ、この揺れは、さっき大賢者が登場したときと同じ!?


 ずごごごごごっと地面がぱっくりと割れ、中から強引とも言える形でベヒモスが現れた。

 その背に跨っているのは大賢者ではなく、ダークエルフ!?


「だ、大賢者様、ベヒモスは!?」

「時間切れで精霊界に帰ってしもうたわ。っく。敵にも上位精霊を召喚できる者がいようとは」


 あ、ノームもいつの間にかいなくなってる。こっちも時間切れで土に潜ったのか。


「久しいな、ブリュンヒルデよ」


 ベヒモスに跨る超が付きそうなほどなイケメンが、ブリュンヒルデを見下ろし声をかける。

 その表情は勝ち誇ったシンフォニアのあの顔のように見えて、ちょっとムカつく。


「な、何故君がここにいるですのディガスライザ!」

「ふん。決まっている。裏切り者の貴様に復讐するためだ!」


 あぁ、なんかNPC同士でドラマが展開しはじめちゃいました。

 これって、ゲームのバックストーリーに絡んだりするんだろうなぁ。


「彗星殿、どうやら拙者らは、この『IFO』の根幹に関わるイベントに参加させられたようでござるな」

「うん、俺も今それを思ってたところ。なんかシリアスな展開になりそうだな」

「ココネ、わくわくしますっ」


 そんなココネさんのわくわくは一瞬で終わった。

 ベヒモスが嘶き、そしてすぐさま地中へと潜ってしまったからだ。

 その時にはさっきとっ捕まえていた悪五人衆の姿も消えており、まんまと逃げられてしまったという訳だ。


「くっ。逃げられたかっ。奴等の目的が、開拓移住者の抹殺だなど……我が剣にかけやらせはしない!」

「そうですね。彼らの行い、我が神もきっとお許しにはならないでしょう。及ばずながらわたくしもお手伝いいたします」


 ファリスとアイリスが正義に燃えている最中、ブリュンヒルデは複雑な顔をしていた。

 どうやらベヒモスに乗って登場したダークエルフとは知り合いっぽいな。

 そして大賢者もまた、恐怖で涙を浮かべた子供たちを集めて優しく宥めているが、その表情は険しい。


 シリアスだ。


 どうしよう、俺……笑っちまいそうだ。


〔クエスト【開拓村の収穫祭2】を完了しました〕

〔クリア報酬8500EXPを獲得〕


 そして俺と霧隠さんが……光った。


「っぶはっ」


 我慢の限界を突破した瞬間である。

 霧隠さんとココネさんは驚いた顔をしたが、NPC達は我関せずといった様子で淡々とイベントを進めていく。

 大賢者は子供たちを連れて村へとテレポし、ブリュンヒルデは自前のテレポで集落へと戻り、アイリスはテレポでファリスと共にファクトへと向った。

 テレポ前、大賢者からは――


「村人からは儂がちゃんと説明しておくが、すぐには来んほうがええじゃろう」


 と言われ、ブリュンヒルデからは――


「ディガスライザは私が光の神々の元を離れたとき、一緒について来た同胞の一人ですの。再び光の神々の下へ戻ろうとしたとき、彼に声を掛けそびれ……もしかすると、その事を怨んでいるのかもしれないですの。マジックさんにはとんだご迷惑をお掛けして申し訳ありませんですの」


 と深々と頭を下げられ、何か出来る事があったらなんでも言って欲しいですのと有り難いお言葉を貰った。それに関しては霧隠さん同様にだ。

 そしてファリスとアイリスには――


「今後、彼らのような邪教徒の小競り合いが頻発するだろう。実際、各地では妖しい集団の目撃情報もあるという」

「わたくしがこの地に導かれたのも、もしや悪しき邪教との戦いのためだったのかもしれません」

「君たち冒険者は開拓移住者にとってなくてはならぬ存在。各町には自警団がいるが、戦力として考えるには不十分であるし、まして正規の訓練を受けた者も少ない」

「皆様方冒険者が頼りでございます。邪教徒から開拓移住者をお守りください」


 てな事を言われた。

 正義に燃える二人は、これから各町に今回の事を知らせ、警備の強化などを話し合うんだと言う。

 そんな会話を聞きながら、俺は一つの疑問を抱いてしまった。


 このゲーム。

 もしかして移住者側のほうが侵略者じゃないのか!?

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