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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バージョン1.02(予定)
147/268

147:マジ、救出作戦、決行する。

 階段は狭く、更に暗い。


「『ライト』」


 攻撃兼灯り用の『ライト』を掴んで(・・・)、先頭を下りる霧隠さんの足元を照らす。


「その魔法、そんな使い方も出来るんですか?」

「ん? あぁ、出来るけど、持続時間短いから、消えたらすぐ次を詠唱しなきゃならないよ」

「へぇ。マジックさんって凄いですね」

「え……凄い?」


 いやぁ、そんな風に言われたら恥ずかしいやら照れるやら。うへへ。

 凄いというならココネさんもだ。僅か一日二日で印象ががらっと変わったし。

 いや、元々ヒーラーとして最初は見ていたからおかしかっただけで、魔法火力職として見れば別にどこもおかしいところは無いのか。

 でも『ヒール』を使うようになったし、他にもバフっぽいスキルも使ったりしていたな。

 一昨日のあれから考えたら、物凄い進歩だと思う。


「ココネさん、マジックパワーがどうたらってスキルはなんの効果なの?」


 次の懐中電灯風『ライト』を用意しながら、後ろから降りてくるココネさんに尋ねる。彼女も自分の足元を照らすようの『ライト』を使っているようだ。学習してるなぁ。


「『マジックパワー・ストレングス』です。マジックパワーをもっと高くしたいなぁって羊さんに相談したら、魔法攻撃力を一定時間上げるスキルはどうですか? って教えてくれたんです」

「ひつじ? メェーってなく、あの羊?」


 ココネさんはペットモンスターを手に入れてないのに、羊なんて持っていたのか。普通の動物とか?

 いやいや、だったら喋ったりしないはずだし。


「それ、受付ロビーの執事殿ではござらぬか? 拙者もスキル作成のおりなどは、いろいろ執事殿にアドバイスを貰ったりしているでござるよ」

「あぁ、ロビースタッフね。俺んところは受付嬢というか、メイドさんみたいな奴だから、羊と聞いてもピンと来なかったわ」

「そ、そう! メイド殿でござる。そうそう、メイド殿っ」


 何を焦っているんだ霧隠さんは。

 そうこうする間にようやく階下が見えてきた。

 下りた先は直線通路で、三人横に並ぶと狭く感じる。ここでの戦闘はきびしそうだな。

 だがその通路も長くは無かった。

 十メートルほどで道は終わり、閉じられた扉があるだけだ。


「索敵結果だと、この奥にモンスターが五体居るでござる。あとNPCの反応も」

「当たりか。モンスターってのはダークエルフかな?」

「ダークエルフって、モンスターなんですか?」


 とココネさんに尋ねられ返答に困る。

 だって俺、ダークエルフだもん。

 そもそもプレイヤーが選択可能な種族だしなぁ。比較的少ないが、町を歩けばそこそこ見かけるんだよ。まぁ圧倒的に白エルフのほうが多いけど。


 扉の奥に居るのがダークエルフだとして、はたして強いのかどうか。まだ戦った事ないしなぁ。

 だからと言ってここで引き返すわけにはいかない。

 そして手はある。


「皆、聞いてくれ。作戦がある。ノーム、お前にも働いて貰うからな」

《の! ののーむ、のーむのーむ》

「あ? その前に再召喚しろ? あぁ、制限時間か」


 ノームを再召喚してから作戦会議だ。






「ピリカ! 助けに来たぞっ」


 そう叫びながらバンっと扉を開く。ここでピリカたちが居なかったら超恥ずかしい。

 俺たちの登場に驚いたのか、それともシンキングタイムなのか、中にいた人物達が固まっている。

 うん、シンキングタイムだな。


「あっ、ピリカの勇者様だ! わぁい、勇者様が迎えに来てくれたぁ」

「ほ。居て良かったぜ」


 どうやら恥ずかしい思いはしないで済んだようだ。

 中はかなり広い空間で、だが部屋と呼ぶにはちょっと殺風景かも? 寧ろ何も無い。そんな所に五人のダークエルフと、五人の子供たちが居た。

 子供たちは特に縄で縛られているとかもなく、床に座らされているだけだ。


 動揺したダークエルフたちだが、こちらに駆けてこようとするピリカの手を掴み静止させる。


「くっ。何故この場所が分かった!?」

「えっと……森のダークエルフから教えてもらって」

「な、なに!? 見られていたのかっ。くそ」


 おマヌケですね。

 いやまぁ逃走ルートのヒントが無ければ、それこそ追いかけることとか出来ないんだけど。

 そもそもこれはゲームだし、そういうの用意されてて当たり前っていうね。

 問題はここからなんだよ。


「じゃあ皆、作戦通り行くぜ」

「分かったでござる」

「うん。頑張ってね、マジックさん」

《の!》


 ノームと並んでジリジリと悪ダークエルフたちに近づく。

 近づけば当然向こうは構えるが、同時に奴等も少しずつ下がろうとする。

 これはラッキーだ。

 あと少し、もう少し……ピリカたちとの距離、二十メートル!


「ピリカ、みんな。大丈夫だからな。ぎゅっとくっついて待ってるんだぞ」

「うん。待ってる、勇者様」


 俺の言う通りに子供たちがぎゅっと一塊になってこちらを見つめる。


「ノーム、頼むぞっ!」

《の!》


 足元も見ず、俺はピリカをじっと見つめて魔法を唱えた。


「『リターンオブテレポート!』」


 一瞬にしてピリカの下へと飛び、急いで一人を肩車し、二人を両脇に抱える。


「二人っ、俺の足の上に乗れっ」

【うん、分かった!】

【うん、分かった!】


 双子かよってな感じで同じセリフを流す二人の子供が俺の足にしがみ付く。その間、俺は一歩も動かず時を待った。

 もうほんとギリギリだったぜ。

 足の上に子供が乗るのとほぼ同時にリターンが発動。

 

 これは一種の懸けだった。

 テレポは場所的に使えない。頭部を強打するだけだからな。

 ならリターンならどうか?

 なので突入する前、試しにそれをやってみた。

 結果、霧隠さんを抱えてリターンする事が出来た。ただ大人だと一人が精一杯だろうし、NPCに通用するのか不安もあった。


 だがどうだ!


 リターンで下の位置に戻ったとき、肩に一人、両脇に二人、両足に二人、計五人の子供の救出に成功!

 重いっ!


「ノーム!」

《のののーむ!!》


 ぼこっと床石が捲れ上がり、石で出来たちゃぶ台がにょきっと立ち上がる。

 同時に子供たちを下ろし、俺もノームのちゃぶ台横に同じちゃぶ台を作った。

 まさかノームが作ったスキルを、俺も使えるようになっているとは。

 

 二枚壁となってダークエルフたちの視界を防ぎ、その間に――


「逃げるぞぉー!」

「成功ですね、マジックさん」


 NPCのリターン輸送が不可能だった場合――その時はゴリ押しして霧隠さんとココネさんがこっちに合流する手筈になっていた。

 が、成功したのでノープロブレム。

 急いで引き返し、階段を駆け上るだけ!

 最悪、追いつかれたとしても通路は狭い。

 霧隠さんが最後尾に立ち、ダークエルフと接近戦。俺がその後ろで『カッチカチ』と『ヒール』で支援。手が届けば攻撃にも参加。範囲魔法なら霧隠さん越しにも届くだろう。そしてココネさんは子供たちと一緒に俺の後ろから攻撃ってなわけだ。

 これで勝てる!


「くっ。我らから逃げおうせると思うなよ! ピィー」


 背後ではまるで捨てセリフのようなことをほざいている悪ダークエルフ。だが、セリフの最後に聞こえた口笛は、すごぉく嫌な予感がします。

 そして予感的中!

 ガラガラっと壁の一部が自動ドアのほうに開き、向こうからブヒブヒとオークが大量に出てきた。

 更に前方の通路側からもオーク出ましたぁ。


 おいぃーっ!

 まさかクリアさせる気のないクエストかよ!!


「これでは脱出は無理でござるっ」

「あっちの豚さんを倒せばいいんじゃないですか?」

「いやいや、その間に後ろから追いつかれる――」

《プギャアァァッ》


 万事休す。

 そう思った刹那、豚の悲鳴が上がる。

 更にバタバタと倒れる前方の豚たち。

 な、何が起こってる?


 豚が倒れた事で姿が顕となったのは、純白の鎧に身を包んだ黒髪の――


「ふぅ。間に合ったようですね。大丈夫ですか、皆さん」


 これ、なんてデジャブ?


「神の裁きをお受けなさいっ。『プリズンホーリーサークル!』」


 女騎士の背後からもう一人飛び出してくると、小さな体に大きな胸を揺らして魔法をぶっぱした。

 はい。

 どうみても女騎士ファリスと、聖女アイリスです。


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