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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バージョン1.02(予定)
140/268

140:マジ、罠に嵌められていた。

「勇者様、こっち向いてぇ」

「なんだ、ピリカ?」


 呼ばれて振り向くと、そこかしこから黄色い歓声があがる。あと噴出すような笑いも。


「光った」

「おもしれー」

「ここの開発は何考えてんだろうな。もっとやれ」


 遊ばれている。俺、思いっきり遊ばれている。

 歌うんじゃなかった……そう思いながらも、人前で熱唱する快感はなかなかによかった。


「ピリカ、家から料理を運んできておくれ」

「はぁい」


 大賢者に言われてピリカが駆けていく。一人で大丈夫か?

 手伝ってやるか。

 ピリカの後を追っていくと――


「きゃあぁぁぁ」


 布を切り裂くようなピリカの悲鳴が!?


「どうしたピリカ!」


 家に駆け込むと、そこには豚がいた。

 豚がテーブルの上に置いてあった料理を食べていたのだ。

 いや、豚じゃない。服というか、鎧を着てるしな。


「勇者様ぁ」

「ピリカ、こっちにくるんだ」


 だだだっと駆け寄って来たピリカを後ろにやり、一心不乱に料理を食べる豚を見る。

 これ、オークか?


〔ブギ?〕


 おっと、気付いたか。

 体長は俺とさほど変わらず、横に広い。鎧を留めるベルトから肉がはみでている。

 醜い……。


〔プギィ!〕


 あれ、考えていた事を見透かされたか?

 オークがテーブルに立て掛けていたらしい棍棒を手に取って襲って来た。

 まずい……


「ノーム!」


 ……来ねぇ。


〔プギァ〕

「今笑ったか? 笑ったのかぁ? うおりゃあ!!毬栗『サンダー』」


 バリバリとオークが感電する。その間に――


「勇者様、土の精霊さんはお外じゃなきゃ来てくれないよ」

「はっ! そうだった。よしピリカ、外に出るぞ」


 ピリカの手を引いて外に出る。見える範囲に他のオークは居ないな。


「ノーム!」


 今度はすぐに反応があった。土が盛り上がり、ノームが出てくる。

 直後に土を捲ってちゃぶ台返し。

 ごすっという音がして、オークの悲鳴が聞こえた。

 ノーム、優秀だな。


「ピリカ、他の人達にオークが出たと知らせてくれ」

「うん!」


 たたたたっと駆けていくピリカを見送り、目の前のオークと対峙する。

 オークって種族や属性はなんだろうか? 豚だし、動物? いや、ゴブリンとかと同じ系統だろうしなぁ。亜人とか妖魔?

 うーん、分かん。適当に魔法ぶっぱしてみるか。


「んじゃまずは『ファイア』ソード!」


 両手剣を構えるイメージで手を組むと、いつもより少し大きめのぼうが現れた。

 おぉ、イメージって大事ですね。

 そのまま薙ぎ払うようにして攻撃!

 ダメージ約800。


「次っ――っとと、あぶねっ」


 棍棒を振りかざしたオークの攻撃を、間一髪回避。AGI上げといてよかったぜ。

 が、決して高いステータスではない。

 オークのレベルは――32か。格上だな。なら……


「『カッチカチ』からのぉ、毬栗『サンダー!』」


 ボコっと殴るが、ダメージは650ぐらい。下がったな。

 やっぱり豚なだけに、火に弱いってか?

 足元ではノームが駄々っ子パンチを繰り出しているが、こちらは160ダメージ。

 ん? 攻撃力、上がってる? それとも相性なのか。

 確認する為に俺もロックで殴る。

 ダメージは400……更に下がった。

 じゃあ、ノームの攻撃力が上がっているってことか。


〔ブギィィィ!〕


 解析している間に怒り心頭なオークさまが、棍棒をぐるんぐるん振り回しはじめた。

 回転するたびカッチカチバリアに当たって弾かれる。

 うおぉぉ、いつ割れるかと思ったら怖いんですけど。


〔のーむ!〕

〔ブギャッ〕


 再びちゃぶ台が現れ、オークは顔面を強打。これ以上醜くなることはないだろう。

 しかしノームってば、攻守共になかなか優秀だなぁ。この分だと他の精霊も期待できそうだ。


「よぉっし。俺もやるぜ! 『シャイニングゥ、フォース・フィンガアァァァァッ』」


 ちゃぶ台の足を蹴って上空に舞い上がり、聖なる光を放ってオークにダメージを与える。

 すちゃっと着地して、ダメ押しのフィニッシュブロウ!


〔プギャアァァァ〕


 最後のフィニッシュブロウだけでもダメージ1200……あれ? こいつって、もしかして聖属性に弱い?

 ってことは妖魔とか、そういう類の種族なのかもな。んで属性が土とか。それなら火のダメージが高く、土がやたら低いのも納得できる。

 ま、とりあえず。一匹だけとは限らないんだし、他にモンスターがいないか探すか。


 しかし、とんだ収穫祭になったな。

 これじゃあまるで――


「きゃあぁぁぁぁ、オークよぉぉぉ」

「こっちにも出たぞっ」

「ホブゴブリンまで居るぞっ」

「た、助けてくれぇっ」


 お、おいおい。一気に湧いたのか?

 これじゃあまるで、襲撃イベント――


「ってまさか、その為のクエストだったのか!?」


 俺、NPCにハメられた!?

 通りの向こうから聞こえる悲鳴の下へと駆けつけると、そこには徒党を組んだオークとちょっとでかいゴブリンの姿があった。

 既に戦っているプレイヤーの姿も見える。


「ノーム、行くぞっ」

〔の!〕

〔ぷぅ!〕


 あたちもいるのよ、と言われてもなぁ。お前、何も出来ないじゃん。


「お前、いつになったら進化するんだよ」

〔ぷ? ぷぷぷぅぷ〕

「何? 経験値が足りない? くそう!」


 やっぱり役立たずじゃないか!

お読み頂きありがとうございます。

次回更新は木曜日の予定です。たぶん2話更新します。


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