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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バージョン1.02(予定)
139/268

139:マジ、歌う→アンコール→歌う→繰り返して覚醒する。

 一度ログアウトし、今日は早めに晩飯を食った。今日はしょうが焼きだった。


「収穫祭って、何するんだろうな」

『クエスト、お受けしたんですか?』

「いや、受けさせられた」

『あぁ……ご愁傷様でございます』


 どういう意味だよ。

 お腹を休める為にロビーで時間いっぱいまで過ごし、ピリカに聞いた収穫祭開始時刻だというゲーム内四時――現実だと夜八時直前にログインした。

 ログイン場所は畑の真っ只中である。

 おかしい……ログアウトするときには芽すら出ていなかったはずなのに。今は辺り一面、南瓜だらけだ。

 しかもでかい。

 踏まないよう足元を見て必死に村まで辿り着くと、そこには既にできあがった(・・・・)村人で溢れかえっていた。


 そう。

 ここは酔っ払いの巣窟!


「おぉ、お客さんだべぇ、ヒィック」

「ささささ、飲んでくだせぇ」


 あっちからこっちから差し出されるコップには、紫掛かった液体がたっぷりと……。これワインかよ!?


「い、いや……俺は未成年だから」

「あぁん? あんちゃん、ダークエルフだろう。なぁにが未成年だ、おおぉう?」


 アカン。酔ってる。しかも絡み上戸だ。

 未成年に酒飲ませようなんて、NPCとしてそれはどうなんだ?


「あぁぁん、冒険者さまあぁん。私の勧めるものが、飲めないなんていいませんわよねぇ。ねぇ? うふふふふふ、くふふふふふ」

「ちょ、待って。だから未成年――」


 お色気担当なのか?

 やたらぐいぐい迫ってくる女の人に、とうとうコップを押しつけられてしまう。

 そのまま口に誘導され、無理矢理飲まされそうに……あぁ、もういいよ。飲んでやるよ!

 ぐいっと一気に飲み干す。

 甘い香りと甘い味。シュワーっと喉を通る炭酸……え?

 炭酸?


「なんだこれ、炭酸ジュースじゃん」

「やっぱ酒はVR規約に引っかかるからダメなのか」


 と、別の方角から俺の言葉を代弁してくれるプレイヤーの声が。

 どうやら他のプレイヤーが飲んでいるのも炭酸ジュースみたいだな。

 意を決した俺の覚悟を返せ。

 そこへとてとてと駆けて来るピリカの姿が目に入る。


「勇者様ぁ~」

「よ、ピリカ。来たぞ」

「うんっ。えへへ」


 いつもは赤いワンピースなんだが、今日は不思議の国のなんちゃらの緑バージョンみたいな服を着ている。

 スカートの裾を持って、くるっと一回転をして見せるピリカ。


「今日は可愛い(服だ)な」

「本当!? わぁい」

「本当、本当」

「えへへ、えへへ」


 よっぽど嬉しいんだろうな、可愛い服を着せて貰えて。

 ピリカの頭を撫でてやると、何故か俺の頭に激痛が。


「孫は嫁にやらんぞ!」

《ぶぶぶぶ》


 あたちがいるのにぃと、大賢者もぷぅも何言ってるんだ。もしかして二人とも酔ってるのか?

 そんな時、システム音が鳴ってチャットウィンドウが開いた。


『GMアキヨ:もしもし、今よろしいでしょうか?』


 ふわっ!?

 ゲ、ゲームマスター!?

 お、俺何かした? も、もしかしてジュースか? 実はやっぱりアルコールでしたとかで、未成年飲酒でYOU BANとか!?


『GMアキヨ:お忙しいですか?』


 どどど、どうしよう。とりあず返事しなきゃだよな。


『彗星マジック:いえ、大丈夫です』

『GMアキヨ:よかった。まもなく称号争奪戦イベントが開催されるのですが、今回もご参加になられますか?』


 称号……あぁ、キラキラか。

 なんだ、イベントか。BANとは関係ないんだな、安心した。


『GMアキヨ:彗星マジック様がお越しくださると、盛り上がるのですが』

『彗星マジック:いえ、もうキラキラしたくないので辞退します』

『GMアキヨ:そんなぁ~』

『彗星マジック:すみません。今クエスト発生中なんで』


 酔っ払いの巣窟で絡まれるイベントだけどな。


『GMアキヨ:クエストですか?』

『彗星マジック:はい。収穫祭なんですけどね』


 しかしこのクエスト、収穫祭が終わったらクエスト完了になるんだろうか。そして報酬はちゃんとあるんだろうか。

 他のプレイヤーなんかは冒険者ギルドでクエストを受けてきてるっぽいけど、クエスト内容は畑仕事の手伝いだと聞いた。報酬はENで支払われると。

 あ、俺タダ働きやん。このクエストの後に貰えるんだろうか。収穫祭なだけに、野菜が報酬……なんてな。

 しかしゲームマスターのチャットが突然切れたな。サーバーの調子が悪いのか、それともイベントに参加しないんならもうようはねえぞってか。


『GMアキヨ:収穫祭クエストですか。えっと、ご健闘をお祈りします。それではお忙しいところ、失礼いたしました』


 ご健闘?

 ま、まさか、酔っ払いどもが更にエスカレートするのか!?

 うぅ、嫌だなぁ。

 健闘を祈られたところでゲームマスターからのチャットは、今度こそ終了した。

 視線を周囲に向けると、酔っ払いの輪が大きくなっていた。

 げんなりだ。

 はぁっと溜息を吐いたところで、ぼろろんっと楽器の音が耳に入る。

 見ると、男が噴水の脇に腰を下ろしてギターを弾いていた。

 あの噴水、いつの間に出来てたんだ。


「ねぇねぇ勇者様。ピリカたちもあっちに行こうよぉ」


 ピリカに手を引かれ噴水のほうへとやってきた。こっちに居るのはプレイヤーが多いみたいだな。

 ギターを弾いているのもプレイヤーっぽい? 服装が『装備』だから、たぶんそうなんだろう。

 しかしこの曲……俺知ってるぞっ! ちょっと古いアニソンだろ、これ。

 いやぁ、懐かしいなぁ。五、六年ぐらい前だっけか。俺が小学生だったもんなぁ。


 大好きだったアニメの主題歌を聞き、つい口ずさんでしまった。

 ま、まぁこれだけ人がいっぱいいて騒いでるんだ。聞かれやしないって。うん。


 目を閉じれば懐かしいアニメの名シーンが浮かび上がる。

 熱い男の友情。そして裏切り。最後には親友が命をかけて主人公を守り、死ぬ。

 その親友とは一人の女の子を巡って争ったりもして――まぁ今思えば王道中の王道パターンだな。

 でも好きだった。大好きだったんだ!

 

 そんな想いを胸に熱唱。

 曲が終わり、閉じていた目を開く。


「うぉ、放電の人、歌上手いじゃん!」

「さすが王子様ぁ」

「はぁ……顔良し声良し、そそられる」


 拍手喝采!?

 え、何? もしかして聞かれてた?


「勇者様、お歌すっごく上手!」

「そ、そうか?」

「うんっ。もう一度歌ってぇ」

「え、も、もう一度……」


 恥ずかしい。

 いや、褒められた事は嬉しいけど、でもなぁ……。

 頭をポリポリ掻いてどうしたものかと考えていると――


「「アンコール」」

「「アンコール」」

「アンコールわっと」


 ア、アンコールを求められてしまった。

 一人カラオケ行って採点器使ってみたら、確かに90点台後半をよく叩きだしてはいたけど。でも他の人と行った事無かったし、こんなに注目されるとは思ってもみなかった。


「第二期のオープニングは?」


 と、いつの間にか横に来ていたギターの弾き手に問われ、もちろん大好きだと答える。

 え、弾いちゃう? 弾いちゃうんですね。

 あ、はい。じゃあ、歌わせて頂きます。


 伴奏が始まり、足でリズムを取って――熱唱!!

 更に弾き手の人と話し合って、別のアニソンも熱唱!

 いつのまにか村人NPCも集まってきて、大きな輪が出来上がり、その中心で俺は歌った。

 歌いに歌ったが、ゲームだからなのか声が枯れることもない。

 途中までは棒立ちで歌ってたが、気分のノッてきた俺は、いつしかオリジナルダンスを披露するように。

 いやもう、適当だけどな。


 でもなんか、気持ちいいよな。

 今の俺、きっとキラキラしてるんだぜ。こう、歯を見せればキラってね。そして少女漫画のように、キラキラ背景が――そうそう、こんな風に。

 こんな……え?


「おぉ、放電さんの歯が光ってる」

「王子様再び!」

「ふんどし王子にはやっぱりキラキラエフェクトがお似合いですぅ~」

「キャーッ、こっち向いてぇ」

「イケメンっ、是非ふんどしで」


 ……称号争奪戦には参加してないんだぞ?

 もうナンバーワンホストの称号は無いはずだろ?

 慌てる俺の視界に、システムメッセージが浮かんだ。


【称号『アイドル』を獲得ました】


 なんかきたーっ!



◆◇◆◇◆◇◆◇


『アイドル』

 対象が男性であった場合。

 笑顔を作った際、白い歯がキラリと光る。

 また同時にキラキラエフェクトが浮かび上がる。

 振り向き様にも同様の効果が現れる。


 対象が女性であった場合。

 笑顔を作った際、可愛い花柄エフェクトが浮かび上がる。

 上目使いをした際、瞳がうるうるする。

 ウィンクをするとハートが飛ぶ。


 美少女美女美少年美男子度倍増間違いなし!


◆◇◆◇◆◇◆◇



 期間限定じゃないっぽいのきたーっ!


 いったい俺はどこに向っているんだろうか。

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