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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バージョン1.02(予定)
124/268

124:マジ、コスライムを手にいれ……損なう。

「じゃあ行ってくる」

『はい。十分以内にお戻りになられない場合は、強制的に接続を終了いたしますのでお気をつけください』


 晩飯を食い終え、お腹を休めるのも兼ねて別荘ロビーで読書に励んだ。

 その甲斐あって、あと数ページで読破完了だ。残りは明日に取っておこう。

 ログイン状態を維持したままヘッドギアを外し、トイレへと向う。

 済ませた後、急いで部屋へ戻ろうとしたら――


彰人アキト、荷物届いてるわよぉ〜」


 というお袋の声が一階から聞こえてきた。

 荷物? 俺に?

 ネット注文した覚えもないし、誰かから何かが届くなんてこともないだろうし。

 いったい何だろう。着払い――なんてことはないよな?


「はい、これ。何買ったの?」

「いや、何も買ってないけど……」

「ふぅーん。結構軽いんだけど、なんだろうね」


 リビングで荷物を受け取る。

 後ろでつけっぱになっているテレビからは、何かコント番組でもやっているようだ。

 こんなマズイ飯食えるかーとか言って茶碗を投げるおっさん。それをちゃぶ台返しで防ぐ女装おっさん。。今時そんなネタで笑う奴なんかいねえよ。っぷぷ。

 一瞬だけ視線をテレビに向け、直ぐに荷物を確認する。

 差出人名義のところには――


「え? う、運営会社?」


 差出人名義が株式会社AQUARIaになってる?

 い、いったいどういう事だ?


「なになにぃ、お母さんにも見せて」


 リビングで荷物を受け取る

 がさごそと箱を開ける横でお袋が興味津々そうに覗き込む。

 ぱかっと開けた箱の中には、和紙のような物に包まれたピンク色の物体と、ぷちぷちに包まれた小さな硬い物体とが入っていた。


「ぬいぐるみ?」

「え? 人形なのか、これ?」

「そう見えるけど?」


 お袋が掴んで包み紙を捲ると、そこにはなんとなく見慣れた物が……

 ピンク色の、コスライム!?


「え? なんでコスライムが?」

「あ、手紙入ってる。はい、どうぞ」


 渡された手紙には、【Imagination Fantasia Online】チーフマネージャーだという人からの詫びだという内容が書かれていた。

 どうやら公式画像掲示板での一件と、劇的のプロモーション動画でうんピー騒動の件でのお詫びらしい。

 しかも手書きで、読みやすい字だ。

 あとお詫びとは別に、劇的ロビー案のお礼やプロモーション撮影協力のお礼として、商品として用意した物と同じ物をお贈りします――とかも書いてある。

 なんかマメな運営だなぁ。すっげぇ好感が持てる。

 贈られてきたこれって、1/1サイズのコスライムクッションか!

 野球ボールよりちょい大きいぐらいのビーズクッションだな。

 うん。尻に引くにはあまりにも小さすぎる。

 でも鷲掴みした感触はいいな。

 これを――投げる!


「ちょっと、アキト、なんでいきなり捨てるの!?」

「……一発でゴミ箱に入った……いや、捨てないから」


 捨てる気はまったくないのに、思わず投げたらゴミ箱っていう。

 お袋がゴミ箱から拾上げると、そのままポケットの中に入れやがった。奪い取る気満々だな……。こうなるともうダメだ。お袋の物になってしまう。


「こっちは?」


 と言って今度はぷちぷちに包まれた方を所望しはじめる。

 中身はコスライムキーホルダー。

 レッド、ブルー、グリーン。そして五色のコスライムキーホルダーと、全種類揃っている!?


「お母さんこれがいい!」


 と言ってグリーンを掴み取るお袋。

 そうですね、あなたは緑大好きですもんね。


「車のキーに付けたいから、頂戴」

「はいはい、どうぞ」

「じゃあお父さんは青ね」


 親父、まだ帰って来てないし。つか持たせる気満々だし。

 手元に残ったのは赤と五色のコスライム。

 手紙と二つのキーホルダーを手にし、自分の部屋へと戻った。

 どうせならプレイチケットも同封してくれればよかったのになぁ。


「よいしょっと」


 カポっと被ったヘッドギアの画面は暗く、【強制切断いたしました】という白い文字だけが表示されていた。






『お帰りなさいませ。長いお手洗いでございましたね』

「ちげーよ。荷物が届いていたんだ」

『荷物?』


 届いた物を説明すると、『あぁ』と納得した顔。


『チーフさんがお礼のお手紙を添えて、販売物を贈ったそうですし』

「やっぱり売り出す気満々かよ!」

『よろしければお手に取った感想など、レビューを頂けると販促にも繋がりますので、よろしくお願いいたします』


 どこまでも商人根性丸出しだな。

 だいたいどこに感想を書けと。

 まぁいい。お袋に取られたし、感想なんて特にないさ。

 掴んだ感触はまぁよかったけどな。


「じゃあゲームに行ってくる」

『いってらっしゃいませ』


 ログインしたのはファクトの町の中。

 再び冒険者ギルドへ向かってパーティーの募集を再開する。


【海賊D攻略パーティー募集】

【募集主:前衛魔法火力職】

【募集内容:タンカー、ヒーラー、他火力】


 よし、登録っと。

 ドキドキしながら貯まったペットフードを委託販売へと持っていく。

 売り出す傍から売れていくペットフードたち。安定して売れるなぁ。

 完売通知がシステム音と共に流れるが、パーティーのほうはうんともすんとも言わない。


 はぁ。フレンドリストから誰か誘うかなぁ。

 って見たら、ログインしてるのはシースター一人だけ。

 あいつは生産メインだし、ダンジョン攻略に誘っても迷惑だろうな。

 あ、杖のお礼あんまりできてないわ。

 レジェンド製造で禿げさせたし、なんかお礼しとかないとなぁ。

 その為にもバルーンボを攻略して、素材ゲットせねば!!


 でも誰も来てくれなぁ〜い。


 はぁっと肩を落として冒険者ギルドを出ると、唐突にその時は訪れた。


 ピコンっというシステム音と同時にチャットウィンドウが開く。


『筋肉あんまん:今大丈夫ですか? パーティー募集を見たんですけど』


 おぉ、第一メンバーきたこれ!?

 しかし筋肉あんまんって、食いたくないあんまんだな。

 大丈夫だと返答を返し、待つこと数秒。

 再びピコンと音が鳴り、別のプレイヤーからのチャットが入る。


『きざくら:短剣使いですが、パーティーオケですか?』

『彗星マジック:okです。今別の人からもチャット来てるんでちょいお待ちください』


 最初に反応のあった筋肉あんまん氏に、職業を尋ねる。


『筋肉あんまん:防御特化のタンカーです。武器は斧ですが、盾持ちです』


 という頼りになる返答が返ってきた。

 盾持ちか。いい肉壁になりそうだ。筋()なだけに。っぷぷ。


 程なくしてネトゲ初心者だというヒーラーもゲット。まぁ俺も回復できるし、カッチカチもあるから大丈夫だろう。

 昼間と違い、アッサリ揃ったな。

 ふ、やっぱり昼間のはたまたまだったんだよ、たまたま!


 システムのコミュニティーにあるパーティー募集掲示板状況。ここから参加表明した人にパーティーを飛ばすことが出来た。

 いやぁ、楽だな。

 パーティー専用チャットを使えば、メンバー全員が見る事が出来る。


『彗星マジック:じゃあ冒険者ギルドの裏手あたりで集合でいいですか?』

『筋肉あんまん:ok』

『きざくら:その辺にいます』

『ココナ:は〜い』


 俺も急いで建物の裏手に回ると、そこには――

 

 右手にやや小ぶりの斧を持ち、やたらでかい盾を背負ったふんどし姿の男と、

 頭に青い球体を乗せ、一升瓶を左右の腰にぶら下げた軽装備の男と、

 どっピンクなふりっふりな服を着た、魔法少女が、

 何故かこちらに手を振りながら立っていた。


 俺、仮装パーティーを募集したつもりは無いのになぁ。

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