123:マジ、募集をかける。
「はぁはぁはぁ……ざ、ざまぁみろ」
カッチカチを掛けていたが、それでも途中で割れて、危うく死に掛けた。
だがおかめ軍団には勝利した! 結果良ければ問題なし。
しかし、なんでおかめだけ残したんだよ運営め。どうせならちゃんとした美人でぼんきゅっばんな人魚を配置しろよ!
前回俺が破壊した壁はそのまま残っていた。
ダンジョン内構造は巻き戻り修復しないみたいだな。
この通路にはスケルトンとゴーストが居たはずだが……
《うぼおあぁぁぁぁ》
「うげっ。ゾンビかよ」
パイレーツグール。
やっぱりパイレーツか! なんでもかんでもパイレーツ付ければいいと思うなよっ。
しかしレベルは30。前回の時は25、26だったからなぁ。それを考えると、難易度上がってるぞ。
まぁ今の俺ならレベリングに丁度いいけど。
それに――
今装備している、いや見た目はギターに取り込まれてるが、レジェンド杖は完全に対アンデッド仕様だ。
最高の得物だぜ!
《うぼおおぁああぁぁぁ》
見た目キモぃですけど。
《うぼおおぁああぁぁぁ》
……。
《うぼおおぁああぁぁぁ》
「いやあぁぁぁぁ。こっち来るなあぁぁぁぁっ『焔のマントオォォ』」
目を閉じ、壁に手を付いて全力で走りました。
「はぁはぁはぁ。やっぱりダンジョンソロはデンジャラスだな」
いろんな意味で。
途中のカーブで頭をぶつけ足が止まると、結局グールに追いつかれて危うかった。
まぁシャイニングフォース・フィンガー一発で消し飛んだけどな。
何度か死線を垣間見た気がしたが、無事にジャックルームまで到着。
そぉっと中を覗くが誰も居ない。
ジャックはちゃんと成仏したようだ……が、ボスはどこに?
静かぁ〜に、そぉ〜っと一歩足を踏み込むと、突然前方に大きな丸い影が現れた。
《ジャアァァァック……残りのお宝を、どこに隠したあぁぁぁぁ》
「……新しく君臨したって……お前かよっ!」
◆◇◆◇◆◇◆◇
宝に目が眩んで成仏できない裏切り者の海賊副頭バルーンボ/ LV:32
◆◇◆◇◆◇◆◇
なんか二つ名長くないですか!?
視界に映るモンスター名が、横に長すぎて余計に気になるんですけど!
しかしレベル32かよ。こっちも難易度上がってんなぁ。
《ジャアアァァック、ジャ……》
あ、俺に気づいた。
おいおい、なんで頭抑えてんだよ!
《お宝を横取りしに来やがったなぁぁぁぁっ》
「いやいや、シュミットじゃあるまいし。第一ここのお宝はお前のじゃないだろ」
お前の物じゃないから……ジャックは成仏してるしぃ、つまり俺の物でいいんだよな。
「っという事で、死ねやデブウウゥゥゥっ」
《ジャアアァァァック》
いや、ジャックじゃないから――というツッコミを入れる間もなく、いきなり奴の体が膨張し始める。
ふっ。いいぜ、受けてたつ!
「『カッチカチ』。さぁ、来るがいい。デバフ祭にしてくれるわっ。ふはーっはっはっは」
一度大きく弾んだあと、バルーンボが高速回転するボールと化して突っ込んできた。
それを両手でぐわしっと掴み、そして耐えるっ。
「よしよしよし。さっそく一個目のデバフ来たあぁぁ」
ぎゅるぎゅると回転するバルーンボのHPが徐々に減っていく。
火傷か、鼻血か。
パリンっという音が聞こえたが、何か割れたか。
さぁ、二個目だ!
特に何も変わらないらしい。もしかして不死属性?
っち。不死を不死にしても無意味だ。
次!
「はーっはっはっはっは。じゃんじゃんデバフろうかっ」
《ぷっぷぷぅ、ぷぷぷぅぷぷっぷぷ》
「あ? デバフる前に、俺のHPがじゃんじゃん削れてる?」
はっとなってHPを確認すると、物凄い勢いで削られていた。
しまった……前回は皆が必死にヒールしてくれていたお陰で耐えれたんだったぁぁっ。
【戦闘不能状態になりました】
【最寄のセーブポイントに帰還しますか?】
【はい いいえ】
【海賊Dパーティー募集】
死に戻りしたその足で冒険者ギルドへと向かい、パーティー募集掲示板なるものを使ってみた。
募集内容に、海賊ダンジョンのボス攻略を目的としたパーティーと明記。
募集主の戦闘スタイルとか書かなきゃならないのか。まぁ何も書かなかったら、どんな職業が集まるか分からないしな。
同時に募集する戦闘スタイルという項目もあるんだな。
えぇっと、俺の戦闘スタイルは――魔法使い。
いや、これだと後衛職だと間違われそうだ。
うぅん……前衛魔法職? よし、これでいいだろう。
募集するのは肉か――タンカーが分かりやすくていいだろう。
あとはヒーラーと火力職で。
登録完了っと。
ふっふっふ、楽しみだな。
メンバー集まるまでペットフードの合成でもしてよう。
――合成ペットフード二百個完成。
ダンジョンで合成剤の材料も集まったな。ちょっくらブリュンヒルデん所行って、合成剤にしてもらうか。
――合成剤百五十個獲得――をペットフードと合成。
……。
……。
待てど暮らせど、パーティー募集掲示板からの反応が、無い。
ちゃんと機能してんのか!?
冒険者ギルドに戻ってパーティー募集の掲示板を確認するが、ちゃんと俺の募集も一覧に出ている。
おかしい……何故誰も来ないんだ。他の海賊D募集なんかは、既に何人か参加者が決まっているのおあるし、寧ろリアルタイムで募集人数が揃って一覧から消えるのもある。
なんで俺の募集には誰も来ないんだ!
『お早いお戻りですね、、彗星マジック様』
「た、たまにはな!」
ゲーム内で三時間待ったが誰も来なかった……。
た、たまたまさ。うん、偶然なんだ。
現実から逃げたくて、現実に戻る。ふ、もう何言ってるか分かんねぇよ。
「時間が勿体無いな。夕飯前まで読書でもするか。シンフォニア、リアル時間で十八時になったら教えてくれ」
『承知いたしました。召喚の書、現在九回読破しておりますね』
「あぁ。ちょっとした時間にちょい読みしているが、案外サクサク読めるもんだからさ」
インベントリから取り出した本を持って家を出る。風が心地いいウッドデッキで、リクライニングシートに座り、しおりを挟んだページを開く。
精霊魔法の項目だ。
召喚できる精霊は、最初は下級のものになる。
属性単位で熟練度のようなものがあり、それが上がっていけば上位の精霊も召喚出来る――かもしれないと書いてあった。
かもってなんだよ、かもって。
まぁコンプリートはともかく、火の上位精霊は必須だな。
俺のメテオ大作戦にとって、イフリートは必要不可欠だから。
岩を火達磨にしてぇ〜、
持ち上げてぇ〜、
投げる!
もちろんイフリートが。
あ、岩は土の上位精霊とかに任せるってのも手だな。
うんうん。夢がひろがりんぐ。
何度も読むうちに、いろんなイメージが浮かぶ。
水の精霊を呼び出し空気中の水分量を増やして、放電による範囲感電スキル。
土の精霊を呼び出し俺を中心に落とし穴を掘らせて、敵を罠に嵌める。
尚、俺が動くと俺も落ちる――いや、これはイカン。消えろイメージ!
いろんな魔法を想像出来るものの、まずは習得しなきゃ話にならない。
先週末はソロ必死狩りが多かったし、長時間篭るのが苦手なもんだがら割とこっちで本を読む時間も長かったんだよな。
お陰でこれを読みきれば……くく、くくくくくく。
フォントサイズの大きな、まるで絵本のような召喚の書を黙読すること――どのくらいたったかだろうか。
『彗星マジック様。お時間でございます』
「ん? もうか。じゃあ飯食ってくるわ」
しおりを挟みぱたんっと閉じる。
夜。もう一度だけパーティー募集してみるか。
日中より人が増える時間なら、きっと集まる――はず!
現在のマジックの装備
【頭】
『ピチョンの飾り羽根付きピチョンの巣(レア)』
INT+6 風属性耐性+20% 回避率+13
【上半身】
『黒いマント』+『レアジャケット』=見た目上半身裸マント
(上記に呪いのロックギターを背負っている)
【下半身】
『不運を撒き散らす孔雀のパンツ(レジェンド)』
【腕】
『レアグローブ』+『レア杖』=見た目指ぬきグローグ
【足】
『ミドルブーツ』
【武器】
『呪いのロックギター』+『レジェンド杖』=見た目ギター
*合成装備は左側が見た目として残っているもの、
右側が性能(約二割減)のみを残したものです。
現時点では上半身が一箇所のみの合成なので、実際には性能が下がっている状態。
合成技能を持っているが故に、合成したくってやっちまった的な。
早くもう一枚上着が欲しいね。
性能が書き込まれていないのは、性能より見た目構成が大事だからです!