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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バージョン1.02(予定)
120/268

120:マジ、コンビニへ行く。

「ほ、本当にいいんだね?」

「おう。サクっとやってくれ」

「も、もしも失敗してゴミ屑になっても、ぼく責任持てないよ」

「はっはっは。心配するな。マジで大丈夫だから。お礼は働いて返すぜ!」


 呪いのロックギターin上半身装備の分解をシースターに依頼。

 夢乃さんから素材交換で買取った上半身装備ジャケットの等級はレアだ。それを話すとシースターが躊躇する。

 だから大丈夫だからと笑顔を返してやった。


「そんなにキラッキラした笑顔を見せられても……」

「いや、これは素でキラッキラしているだけだから」

「ペットフードくださ〜い」

「あ、は〜い」


 シースターが出しているござ露店の店番をしつつ、ついでに貯まりに貯まったペットフードも置かせて貰っているのだ。

 称号効果のせいで、露店に立つとキラッキラ光る仕様なんだよ。

 あぁ恥ずかしい。


「まぁそこまで言うならいいよ。失敗しても絶対弁償出来ないからねっ」


 そう言い切ってからシースターは露店の裏でこそこそと分解作業をし始めた。

 呪いのロックギターを外す事は出来ない。ので、肩ベルトを俺が掴み、その延長線上でシースターが分解作業をするのだ。

 結果は直ぐに出る。


「弁償できないって言ったからね!」

「ちょ、マジで失敗したのかよ!?」

「いや、それがさぁ」


 怪訝な顔をしながらシースターがギターと、ゴミを押し付けてくる。

 なるほど。シンフォニアが言っていたな。

 ギターは決して破損しないが、合成したもう片方はゴミ屑になる可能性もあると。


「ごめん。ジャケットが2エンになったね」

「いや、いいんだ。目的はただのギターに戻す事だったから。それにジャケットの装備レベルをだいぶん超えてしまってるからな」


 ジャケットの装備レベルは24。

 俺の現在のレベルは29。

 金、土、日とこの三日間、ひたすら合成剤の材料集めに奮闘しまくった。

 最初は格下モンスターを範囲攻撃で大量に轢き殺そうと思った。だが狩場に着いて適性レベルのプレイヤーが頑張っているのを見ていると、これから弱い者虐めをしようとしている自分が情けなくなって……。

 気持ちを入れ替え、自分よりレベルが高いコスライムと必死な攻防を繰り広げたさ。

 結果、三日間でトータル二十回近く死んだけどな。


 だがその甲斐あってレベルはガンガン上がって、新しい装備が欲しくなったという。


 呪いのロックギターが決して破損しない。

 なら、心おきなくレジェンドを合成出来るぜ!

 その下準備の為に技能のレベル上げもした。シースターに分解もして貰った。

 ギターは破損しないが、合成する装備側がさっきみたいにゴミ化するからな。分解するときはいいが、合成するときにゴミ化するのは避けたい。

 こちらも頑張った甲斐あって、合成レベルは31まで上がっている。


 ご、ごくり……。

 ご、合成、しちゃうぞぉ。


「ってことで、レジェンド素材から28杖作ってくれ。余った素材はお礼に受け取ってくれていいから」

「ひいいいぃぃぃぃぃぃ」

「あのぉ、ペットフードくださ〜い」

「あ、毎度〜」

「ひいいいぃぃぃぃぃぃ」


 泣き叫ぶシースターを横目に、俺は見事な接客を続けた。






「おおぉぉぉ! これがレジェンドの杖!」


 キラッキラ光る俺は、きっと目もキラッキラしているはずだ。

 レジェンドの効果は三つ。


 一:聖属性の攻撃力、及び回復力向上。

 二:アンデッドに追加ダメージ15%。

 三:CT50%減少。


「CT50%減か。再詠唱までの時間が半分になるって……これでカッチカチしまくれば、ノーダメ時間をキープできるかも!?」


 うぉおおぉ。攻守揃えた最強魔法使いじゃね、俺って!!


 周囲からは「おめー」という声も聞こえる。

 ありがとう! マジありがとう!

 さっそくギターと合成し、レジェンド呪われたギター完成!

 嬉しい、マジ嬉しい!


 だがシースターは燃え尽きたようだ。

 

「さ、三回目でやっと成功……」

「おう。三本分の素材しか無かったんだ。ラッキーだぜ」

「ううぅぅぅ」


 耳も尻尾も力なく垂れ下がったシースターには感謝しているぜ。

 もう一本作って貰いたかったんだが、それはまた今度にしよう。


「ってことでレア杖作ってくれ」

「鬼ぃー!」


 レア素材も結構貯まったんだよなぁ。三日間必死狩りすると、気づいたら結構拾ってたっていう。


 裏ですすり泣くシースターの声を聞きながら、引き続き店番に励む。

 安心しろシースター――


「うわっ。なんか光ってる」

「いらっしゃい!」――例え男相手でもニッコリ営業スマイル。

「なんすか、そのキラキラ?」

「しくしくしく」

「これ? 称号効果。早く捨てたいんだ」

「捨てれるのか?」

「まぁメンテ明けのイベントで優勝しなければ」

「しくしくしく」

「なんぞそれ。あ、その弓、見せてもらっていい?」

「どうぞどうぞ」

「おぉ、火属性付きじゃん! 意外と安い。これください」

「しくしくしくしく」

「まいど〜」


 ちゃんとお前が作った製造武器も、売ってやったからな!

 だから泣くなっ。

 さっきから後ろでしくしくと……


「三回失敗したよぉ〜」

「なんだ、成功したんじゃないか」


 戻ってきたシースターの尻尾に生気が感じられない。

 自前のペットフードを取り出し、食うかと尋ねたが首を振られてしまった。

 ツッコム気力も無いのか。


 彼が手にした杖を受け取り、その効果を確かめる。

 水属性モンスターに追加ダメージと、MP20%還元……消費MPの二割が戻ってくるってことか?

 MPにはあんまり困ってないんだけど、まぁいいか。なんたって魔法攻撃力がノーマルやミドルの比じゃないもんな!


 さて、早速手袋と合成しますか。

 この手袋も夢乃さんから素材交換で買った、レベル28指抜きグローブだ。

 甲の部分がちょっとゴツ目で、さらに硬い。


――殴りやすいでしょ?


 と夢乃さんは言っていたが、別に殴るわけじゃないから……。

 んじゃサクっと合成しますか。

 呪いのアイテムはジャックのメダルがあるが、こっちはレジェンド用に取っておきたい。

 寧ろ孔雀のパンツと合成してもいいんだが、そうすると不審者になってしまうからな。

 ズボンはダメだ。さすがにいろいろ開き直るにしても、パンツで走り回るのはマズい。

 それなら上半身裸のほうがまだいい。

 ってことで上半身のレジェンドを所望する。


「ペットフード、く〜ださい」

「あ、ちょっと待ってくださいね。あと決定押せば――」

「え!? まさかその杖――」


 シースターが声を上げ、慌てて俺に駆け寄ってくる。

 決定、ポチっと――


「よし、成功」

「ふぅぅぅぅぅぅぅ。よ、よかった」


 接客後、完成したグローブin杖を装備。

 ステータスを確認し、魔法攻撃力がぐんっと上がっているのを見てニヤけた。


「でもなんでマジックは杖なんだい?」


 露店に立たず、座り込んだシースターが尋ねてくる。

 なんでって、俺としては「なんで」と思う事がなんでなのか分からない。

 魔術師であれば杖を装備するのなんて、当たり前だろ? 何故それを聞くのか。

 例えば剣を装備する。素材によっては魔法攻撃力付きの剣も作れるらしい。が、所詮は剣だ。魔法攻撃力は同レベルの杖と比べて、半分以下すらも無い。

 装備する価値がどこにある?

 まぁ見た目に拘って実益を無視するならいいかも?

 だが俺はそんなマゾプレイをする気は無いっ。だからこう答えようではないか!


「杖がいいからに決まっている」

「……ふーん」


 なんだその冷めた目は!


「あ、そういえばさ。マジックはもう課金した?」

「は? 課金? してないけど」

「そろそろ無料チケット期間終わるけど、継続しないとか?」


 無料チケ……あ、そういや月額課金だったっけ。

 月額無料のアイテム課金制ってのが多い中、これは珍しく月額課金のアイテム課金有りというハイブリット型だったな。

 正式サービスから十日間だけ、オープンベータテスト参加者には無料チケットでプレイ出来るようになってたんだった。


「今日は月曜だから――九日目か。やばい、チャージしておかねえと」

「継続するんだね。ぼくも昼食をコンビニに買いに行くついでにチャージしておこうと思ってたんだ」


 やっべぇ。シースターに言われるまですっかり忘れていた。

 昼飯代貰ってるし、俺もコンビニ行くかな。






「じゃ、コンビニ行って来る」

『いってらっしゃいませ。月額課金のチャージですと、三ヶ月用、六ヶ月用、年間パスなんてのもございます。一ヶ月単位でのチャージよりお得ですので、どうぞご検討ください』


 年間パスとか、どこぞの遊園地かよ。

 一度に大金を使える訳がないんだ。一ヶ月単位でしかチャージしねえよ。


 シースターと別れて直ぐログアウトし、そのまま今月の小遣いを持ってコンビニへと向った。

 お袋から貰った昼飯代は五百円と少ない。大きいサイズの冷やし中華は税込み四百九十八円。ミニなら三百二十八円。

 ミニにしよう。


 コンビニの各種チケット販売機でウェブマネーを……

 えっと、前回この手の販売機を使ったのが約二年前。使い方、覚えてないな。

 画面の案内に従って操作するか。

 昔はウェブマネーの購入までしかコンビニで出来なかったそうだが、VRが普及し始める頃には販売機で直接各種オンラインゲームに課金チャージ出来るようになった。

 ただ問題がある。

 チャージ中に他の客が後ろに並んだ場合、どのオンラインゲームをプレイしているかとかが丸分かりになる事だ。

 操作に慣れればすぐに終わらせられるので、その心配もないらしいが……

 操作方法を見ながらチマチマやっている今、確実にバレる!

 それはさすがに恥ずかしい。

 チャージ無しでシリアルコードの印字だけしておこう。


 が、その前に該当画面まで進まなきゃな。


 えぇっと――


 画面をタッチしていると、背後に人の気配が!?


 はっとなって振り向くと、そこには――


「あ、れ。星、見……くん」


 同じ高校、同じクラスのイケメン男子、星見(くん)が立っていた。

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