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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バーション1.01【始まり】
114/268

114:マジ、シンフォニアに説教される?

『お帰りなさいませ、彗星マジック様』

「あー……うん」


 ジャックの所で見つけたお宝を分配し、もやっとしたままパーティーは解散。それぞれ夕飯だの続きの狩りだのに向った。

 俺は晩飯前に風呂と、ほんのちょっとだけ宿題をしておこうと思いログアウトする。


『生返事でございますね。何かございましたか?』

「あー……なぁ、シンフォニア。ボスの居ないダンジョンに、価値はあると思うか?」

『はい?』


 怪訝な顔で俺を見る彼女。

 海賊ダンジョンに居たボス、裏切られた海賊頭のジャックが成仏した事を伝え、ダンジョンボスが不在になるかもな事を説明する。

 すると、眉間にしわを寄せ、首を振るシンフォニアが呆れてこう言った。


『またでございますか……。どうして彗星マジック様は、そうイレギュラーな事ばかりなさいますかね』

「イレギュラーって……しかもまたってどういう意味だよ」

『はっ。い、いえ、なんでもございません』


 なんでもない事ないだろう。

 またとはなんだ。イレギュラーとはどういう事か!

 と問い詰めると観念して話し始めた。


『いいでしょう。お教えいたしましょうともっ』

「お、おう」


 なんだ、この上から目線な物言いは。


『まず海岸でのことです!』


 海岸?


『清掃員に流木や流れ着いたものの再利用方法を提案いたしましたよね?』


 清掃員――あぁ、コスタの事か。

 えぇっと、確かゲンさん関係の時にそんな事があったような?


『しかもクエストとして依頼すればよいと、そんな事も仰ってますよね?』

「い、言ったかなぁ?」

『言いました! 全ての発言、行動はサーバー上にデータ保存されているのですよ。言い逃れが出来るとお思いですか?』

「ぐ……じゃあ、言った」

『はい、よろしい』


 だからなんで上から目線なんだよ!

 そもそも、提案のどこがいけないっていうんだ。

 ゴミが減る。コスタは喜ぶ。プレイヤーも報酬もらえて喜ぶ。大工も安く資材が手に入って喜ぶ。

 万々歳じゃねえか。

 悪い事なんか、これぽっちもしてないだろ。


『悪くはございません。ただ、余計なデータ処理が増えるのでございます。例えば材木を運んでくるクエストが発生すれば、それに伴うシステムの追加が発生しますし、報酬をどうするか、集まった材木の保管場所をどうするか、集まりすぎた材木をどうするかなどなど!』

「集まり過ぎている、のか?」


 こくりと頷くシンフォニア。

 狩りの移動のついでにコスタん所に寄って材木を受け取る。狩りが終わって帰ってきたらギルドに行って材木を渡し報酬を受け取る。

 楽なクエストだとかで、大人気になっているんだとか。

 故に材木が集まりすぎて、港町にある資材置き場が満杯状態。


『外観的に置くスペースがもう無いんです。ですのでここ数時間は材木のアイテムコードを消去して、文字通り、データの藻屑にしているのですよっ』


 あぁ……そりゃあ、大変だ。他人事だけど。


『他にも、現在各町ではダークエルフ族による合成、分解屋がございますね。あれも彗星マジック様のさしがねでございますよね?』


 さしがねって、なんかあくどい事してるみたいじゃねえか。


『本来であれば、NPC一名のみで行われる合成ゆえに、プレイヤーの方が自ら合成技能を習得しようという気にさせる予定だったのですよ。それを――』


 ファクトの合成屋よりも安価で、且つ技能レベルの高いダークエルフが出てきたもんだから、合成技能を自分で習得しようとするプレイヤーが出てこないと嘆き出す。

 実際、技能習得に必要なフラグを立てているプレイヤーは、片手で数えるほどしか居ないんだとか。


『彗星マジック様はトリトンさんから習うという、これまたイレギュラーな方法で習得されていますが、正攻法以外での技能習得は、一人のNPCにつき一人のプレイヤーまでとなっております。よって、他のプレイヤーは正攻法での習得しか出来ない事になっておりまして――』


 習得には結構な時間を有するらしい。

 時間が掛かる上、その正攻法での合成技能伝授者が――


『ファクトの町のドナルドさんでございます。彼、廃業寸前で弟子を取ろうともしないんですよ!』

「……NPCとして役目の放棄かよ」

『誰のせいだとお思いですか! ま、まぁ、それは後々に修正してどうにかいたします。しかし、ジャックさんを成仏させてしまっただなんて……』

「ボス不在って、やっぱマズいよな?」

『いえ? 不在にはなりませんが?』


 え、じゃあジャックって復活するのか?


『いえ、別の方が君臨しますので、問題はございません。ただ、予想以上にジャックさんの成仏が早かったので、ジャックさん産のアイテムがまったく世に出回らなくなってしまいましたねぇっと』


 ジャックさん産……ダジャレのつもりか?


《ぷ》

「おう。ぷぅが、寒いわね、と申しておられるぞ」

『左様でございますか? では温かくいたしましょうか?』


 シンフォニアが指をパチンと鳴らすと、急に室温が上昇して春うららな陽気になる。

 いや、その寒いじゃなくってだな……


 しかし、アイテムが出回らなくなる事に、何か不都合があるのだろうか?


『いえ、特には……まぁ強いて言えば、せっかくプレイヤーの皆様が歓喜するようなアイテムがございますのに、それを獲得する機会が減って残念でしたねぇというような』

「か、歓喜って、何だよそれ!?」

『ふふふ。気になりますか? 気になりますよねぇ?』


 にやりと笑って勝ち誇るシンフォニア。

 相変らず根性悪いなおい。

 だがこいつは根性が悪いだけではない。実はかなりの『うっかり屋』なのだ!


「気になります。教えてくださいシンフォニア先生」


 と煽ててやればきっと――


『ふふふ。そこまで仰るなら致し方ございませんね。実は、一部のレアボスモンスターには呪いのアイテムがドロップするようになっております。確率のほうはボスによってまちまちでございますが』

「呪い?」

『はい。そのアイテムは決して破損する事の無い物で、合成に使用しても決して破損せず、更に合成後に分解しても決して破損いたしません! ジャックさんがご存命であれば、この呪いのアイテムを手に入れるチャンスがあったのですが。あぁ、残念でございますねぇ』


 ご存命って、あいつは元々死んでるって。

 しかし、決して破損しないって……。そういや耐久度とかは装備品にしかついてないもんな。

 もしかして何度でも合成分解が出来るってことなのか?

 一度合成しても、分解すれば元のアイテムに戻って、別の物とまた合成でき――る?


「その呪いのアイテムと装備を合成して、それを分解した場合どうなるんだ?」

『呪いのアイテムは決して破壊されませんので、元の状態に戻りますね。装備の方は分解レベルにもよりますので、2ENのゴミになる可能性もございます』

「じゃあ、呪いのアイテムを更に別の装備と合成とかって?」

『出来るに決まっています。ワタクシの説明をちゃんとご理解頂けていないようですね?』

「いやいやいや、理解してる。うん、してる。その呪いのアイテムって、例えばこのギターみたいな?」

『はいっ、そのギターみたい――……はっ、ゆ、誘導尋問ですね! 卑怯でございます』


 いや、そっちが勝手に答えたんであって、俺のせいにするなよ。

 まぁ、良い事聞いたし、今日の事は全部水に流してやろう。

 そういや、巾着袋にジャックの顔が彫られた不気味なコインが人数分あったな。

 記念にって皆で一枚ずつ貰ったけど……アイテムの確認してなかったわ。

 あれももしかして?

 いやいや、そんな簡単に手に入る訳――


 こそこそっとインベントリを確認するると



◆◇◆◇


 名称:裏切られやすいお人好しジャックの記念メダル

 備考:百五十年前、幼馴染であり無二の親友からアッサリ裏切られ死んだジャックの記念メダル。

 これを所持していると一定確率でパーティーメンバーからのヒール、及びバフスキルが無効化される。

 呪われている。


◆◇◆◇



 ……ヒールバフ無効化……。

 ま、まぁヒールは自前があるけど、バフはきっついなぁ。

 うーん、自分でもバフスキルを作る、とか?

 一定確率だっていうし、無効化されればまた掛けて貰えばいいだけでもあるんだが。

 地味ぃ〜な嫌がらせ効果だな。


 くくく。しかしこの程度の呪いでへこたれる俺ではない!

 合成技能のレベルをがんがん上げて、レジェンドをギターに合成してやるぜ!

 その為にもまずは――


 風呂、夕飯を終え、さっそくログインした俺は、海岸で甲殻類の素材集めに勤しんだ。

 宿題は……明日。

 うん、明日だ!

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