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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バーション1.01【始まり】
110/268

110:マジ、楽してお宝ゲットを画策する。

『裏切られた海賊頭ジャック』レベル28。


《ぬぅぅぅぅぅっ。宝を奪いに戻ってきたのかぁぁ》


 やっぱりだ。

 大きな海賊帽を被った髭もじゃの男は半透明・・・。どうみても幽霊です、本当にありがとうございました。

 身長は三メートルも無さそうな、人間としてはもちろんデカいけど、ボスモンスターとしては小さい奴だな。


 大きく開いた空間には朽ちかけた……いや、朽ち果てた小船が一艘と、ジャックの座る椅子が一つ置いてあるだけだった。

 恨めしそうに唸りながら椅子から立ち上がり、一歩、俺たちに向かって前進する。


《どうやってこの場所を突き止めたぁ。ここは、貴様等にも教えていない仕掛けが施してあったはず》


 何を言っているのだろうか、この海賊は。

 湿気の多い洞窟に長い事いたから、脳が腐ってんじゃないのか?

 戻ってきたとか教えてないとか。

 そもそも初対面だっての。


「海賊王よ! 貴様は人違いをしているぞ!!」

《か、海賊……王》


 セシリアがビシっと指差し、ジャックに向って高らかに声を上げる。

 そして何故かここまで来た事情を、まずぷぅが風に飛ばされたところから説明しはじめた。

 おいおい、モンスター相手にそんな話したってなぁ……


《ほぉほぉ、なるほど》

「素直に聞いてるぞおい!?」

「もしかしたらモンスターじゃないのかも?」


 とルーンは言うが、実際奴の頭上にはボスである髑髏マークがあるし、二つ名とレベルも表示されている。

 モンスターなんだよ、あれは!


 セシリアが隠れ里の連中の話を口にしたあたりから、海賊ジャックの顔が緩みはじめた。


《おぉ、我が子らが心配して来てくれたのかぁ》


 いや、あんたが隠した宝が欲しかったんだろう。


「お前がこの大陸に隠したお宝が欲しかっただけだと思うぞ」


 セシリアさん、そこズバっと言っちゃうのね。

 鬼ですね。


《がっはっはっは。さすが我が子らだ》


 お前も喜んでんのかよ!


 そしてネイティブ大陸人に襲撃されたり、ロックンピーコックのせいで岩壁に囲まれた場所から出れなくなったりという話に移り……

 俺たちがロックンピーコックを倒して、セシリアが村人にロッククライミング技能を教えたからその内彼らは自由の身になるだろう――と。

 んで、俺たちはこの場所の入り口を教えて貰ったから、冒険を求めてやってきた!


 と、セシリアと、最後はインディーさんが熱く語った。


《我が子孫を救ってくれた者達であったか。いやすまん。てっきり儂を裏切った者共かと思ってな》

「はぁ……二つ名が裏切られたになってるもんな」

「どうせ部下に裏切られて、お宝を強奪されたダメ船長なんだろ」

「きっと一番信頼していた部下だとか、親友だとか、そういう人に裏切られたんですよね!」

「あぁ、ありそうありそう」


 ノーリスの言葉に海賊ジャックは耳を塞ぎ、そしておうおうと泣き出した。

 図星だったようだ。


 ジャックはぽつりぽつりと話しはじめた。

 あ、これボス戦回避コースだわ。最後まで聞いたらお宝貰えるのかな。


《この大陸にお宝を隠そうを言い出したのもそいつだった……今にして思えば、既にこの時から裏切り計画は始まっていたのだろう》


 海から直接侵入できる洞窟を発見したというのは、彼の片腕的な部下であり、子供の頃からずっと一緒だった親友だった。

 元々住んでいた大陸では安心して強奪したお宝を隠せる場所もなく、ここまでやってきたらしい。

 そして宝を隠し、家族の下へ帰ろうとした日――


《奴は息の掛かった数人の部下を伴い、儂と他の連中を洞窟に残して船に乗り込みやがったんだ! この洞窟は、元々は海から船でしか出入りする事の出来ない構造だったからな。取り残された儂等は文字通り、生きてここから出る事が叶わなくなってしまったのだ》

「え? じゃあ地上から来た俺たちって?」

《それは儂の部下どもが、スケルトンになって穴を掘って繋げた道だ》


 もしかしてさっきのスケルトンさんたちですか!?


 けれども洞窟から出れなかったのは、やっぱりアンデッドになっているからだと切なそうに話す。

 ここで死んだから、未練が無くなるまではここから離れられない――と。


「未練とはなんだ!」


 またもやビシっと指差すセシリア。けど、目が少し赤いんですけど?


《儂を裏切ったバルーンボがその後どうなったか、だ!》

「いや、もう死んでるだろ。だってもう百年以上前の事なんだぜ、あんたらが行方知れずになったのって」

「そうですね。百年前に村人のご先祖がこっちの大陸に来たって話ですから、それよりずっと前に死んでますよね」


 首を捻る幽霊。

 可愛くないからな、可愛くないんだから止めろ!


 俺の祈りが通じたのか、捻るのを止めたジャックは変わりに手をぽんっと叩いて――


《儂も死んどるんだった!》


 と……やっぱり脳みそ腐ってボケてるんだろうな。

 そしてブツブツと呟きはじめる。


《なら奴も死んだのか……。いったいどこで野たれ死んだのか》


 よっぽど恨めしいのか、それとも――かつての友として心配しているのか。

 なんて俺も感傷的に浸っていると、


《この海で死んだのさ!》


 と、背後からしゃがれ声が聞こえた。


 パソコンモニターを見ながらプレイするMMOの時代ならきっと、バーンなんていう効果音が付いただろうな。

 振り返るとそこには、ジャック同様に半透明の海賊帽を被った太った男――を背後に背負ったプレイヤーが立っていた。


「あれ? さっきの魔術師じゃないですか?」

《ぷっぷぅぷぷ》

「おいおい、背後霊連れてきやがったぞ」

「取り憑かれてるんですかね?」


 さっきの魔術師……あぁ、中ボスのところでやられた奴か。生きてたんだな。


《ぷぷぷぅ。ぷぷ》


 ん? 海岸で開かれた称号イベの時に絡んできた男だって?

 あぁ、そういえば居たな、まるで王子様ルックの男が。


《おぉっ。バルーンボ!》

《貴様が隠した宝の全てを頂きに来たぞっ》

《何を言うかっ。お前が儂を裏切って根こそぎ持っていっただろうっ》

《……そうだったか?》

《……そうだったと思うが?》


 ダメだこの幽霊どもっ、腐ってやがる!


「おい、話が違うではないか。ここまで連れて来てやる代わりに、宝を半分寄こすという約束だっただろうっ」

《そうそう、ここにはまだお宝が残っているハズなんだ! 帳簿と合わないからな》


 太った海賊、こいつがバルーンボらしいが、帳簿とか付けてたのか。海賊のくせに律儀な奴だ。

 後ろのプレイヤーはどうやら取り憑かれてる訳ではなく、彼の意思で幽霊を連れて来たようだな。お宝目当てで。

 そんな事も出来るのか、このゲームは。

 憑依合体! とか、楽しそうだなおい。


「ふん。だったら――奴を――裏切られた海賊頭ジャックを倒せばいい! お前も協力しろ」

《ぶひっひっひ。任せろっ》


 え?

 ボス戦無しになるんじゃなかったの?

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