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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バーション1.01【始まり】
104/268

104:マジ、サンドバッグになる。

 俺がサルに尾っぽビンタを食らったとき、お尻の尾羽がぴやぁーっと広がった。――らしい。

 そして孔雀のような派手な部分が上に向って扇状に開き、九本ある派手なやつが左から順に光出した。――らしい。

 その事をフラッシュとノーリスが笑いを堪えながら報告した。


「サ、サルが痙攣したのって、尾羽があまりにもおかしくて笑い死にしそうだったんじゃないか?」

「そんな事、あるわけないだろっ」

「そうか。笑いすぎると呼吸もままなくなるものな」

「いや、真面目に答えるなよセシリア」

「痙攣自体はデバフのようでしたよ。スモーキーモーキーの情報欄にデバフアイコン出てましたから」


 と、別の意味で真面目に答えるノーリス。

 スモーキーモーキーって何? と尋ねると、さっきのサルの名前だった。


 そういやこのズボン、九種類のデバフがあるみたいだが、どんな効果があるんだろうか。

 もし元のロックンピーコックが使っていたデバフと同じだとしたら、出血に爆笑と沈黙があるはずだ。


「なるほど。なかなか面白い効果の装備を手に入れたのだな彗星マジック君は」

「よぉし、検証してみようぜ」

「え? どうやって?」


 そう言うと、一斉に全員が俺を見つめた。


 やだ怖い。






「ま、まだ?」

「まだまだ」

「あ、右から二番目の尾羽で光が止まったぞ!」

「えぇっと、デバフ効果は……禿げ?」


 スモーキーモーキー三匹に尾っぽビンタされまくっている俺。

 このゲーム、無防備になると敵の攻撃をほぼ100%受ける仕様らしい。AGIとかまったく関係なく、回避をする事も無く全弾被弾している。

 そして攻撃を受けるたびに尾羽が開き、もしくは開きっぱなしで派手な羽がチカチカ光り出す。その光りがどこかで止まればデバフが発動という仕組みだった。

 今はそのデバフの種類と、光りが止まる位置の関係性を調べている。俺がタコ殴りになって……。


「右からっていうと、左から八番目ですね。禿げの効果ってなんですかね? スモーキーモーキーに禿げが出来てますかマジックさん?」

「いや――ぶへっ。見えな――へぶっ、い。そろそろ――ごふっ、こいつ、でべっ、倒していいか?」

「ん〜……あ、新しいモンスターが来ました。そいつ、倒しちゃっていいですよ」


 にこにこ顔でいいやがって……ルーンって案外サディストの属性があるんじゃないか?


「ふらあぁぁっ、食らえ『ファイア』ソード!」


 ぶすぶすと音を立ててスモーキーモーキーの後頭部を燃やす。

 あ、禿げが出来た。これがデバフの効果か!!


「お、マジック氏の羽根ランプが一番右が光ったままだな。デバフ出るか?」

「出たぞ。出血らしい」


 セシリアの声が聞こえる頃には、瀕死状態のサルが鼻から血を流していた。

 エロぃサルめ。


「『サンダーフレア』」


 そしてご臨終。

 新しく加わったモンスターは新顔だ。


「あの、明らかにこいつ強そうなんですけど!」

「ボクサーガルー、レベル26ですから大丈夫ですよ」


 俺の身長とほぼ同じ。見た目はカンガルー。どう見てもカンガルー。

 だが拳に青いグローブを嵌めてるんですけど!!


 と思った刹那――左フックが飛んできた。

 こめかみにモロに食らった! が、特にふらついたりもしない。


 何度もパンチを食らったが、昏倒とかそういったデバフは一度も貰っていない。

 まぁそういう特殊攻撃ではないのかもしれないが、逆にズボンの状態異常耐性効果があるのかも――


 あ、右ストレート来たあぁぁっ――……


「はっ!? お、俺、どうなったっ」


 意識が飛んだ気がしたが、気のせい?

 と思ったが、カンガルーの姿が見当たらない。


「マジック氏、気絶しちまったからさすがに検証は中断して全部倒したよ」

「だがお陰で分かったことがあるぞ。ボクサーガルーは気絶効果のある状態異常攻撃を持っているということをな!」


 いや、インディーさん。そこ誇らしげに言うところじゃないですから。


「はぁ、じゃあ検証再開……か」


 俺をボコってくれる獲物はどこだ!!


「いや、もう必要ないよ。九種類、全部揃ったから」


 そう微笑むルーンは、やっぱりサディストだと思います。






 孔雀特有の派手な尾羽は九本。

 九種類のデバフってのは、この一本一本にそれぞれ仕込まれているんだろう。


 左から一番目の尾羽でランプ(フラッシュ命名)が止まると『毒状態』。

 効果は二十秒間、二秒毎にダメージ50。回避率低下となっていた。具体的にどのくらい下がるのかは検証していないし、するのも面倒くさい。

 インディーさんあたりは検証をしたがってたが、そこまでやってたら日が暮れてしまう。


 左から二番目の尾羽は『暗闇』。

 効果は二十秒間、視界が塞がれる。これに掛かったモンスターは、あらぬ方向に攻撃をしていたので、まったく見えていないのだろう。まぐれで当たることもあったが。


 左から三番目は『眩暈』。

 効果は五秒間、眩暈を起させるだけだ。だけとはいえ、実戦では戦闘を有利に出来るのは間違いない。


 左から四番目。『沈黙』。

 十秒間、スキルが使えなくなる。ついでに鳴いても口パク状態だった。


 五番目。丁度真ん中の尾羽だ。これが『火傷』。

 効果としては三十秒間、二秒毎にダメージを受けるんだが、徐々に数値が増えていくみたいだ。

 最初は100からスタートし、10ずつ増えていく。

 効果時間も長いし、持続時間中に雑魚モンスターを倒す事が出来てしまった。


 左から六番目は『不死属性付与』。

 これだけだと意味が判らなかったが、試しにルーンが不死化したスモーキーモーキーにヒールしたところ、ダメージを与える事に成功。

 当然、不死化してないやつにヒールすると回復してしまう。

 アンデット化させるという事だ。

 それがどうデバフなのか、皆でちょっと悩んだがここの運営は良く分からないからという事で最後は納得させることに。


 七番目。『爆笑』。

 二十秒間、とにかくひたすら笑い転げる、恐ろしい効果だ。

 スモーキーモーキーがごろごろする姿は、若干可愛くもあった。


 八番目は『禿げ』。


「禿げは結局、ドロップする毛皮の数が多かっただけなのか?」

「そうですね。通常、一匹から一枚しか出ない毛皮が、禿げデバフ受けたスモーキーモーキーだと一度に五枚でました」


 それのどこがデバフ?

 するとセシリアが、世にも恐ろしい事を口にする。


「禿げた分、たくさん落ちたのだろう」

「何が?」

「何って、毛、だ」


 ……抜け落ちたのかあぁぁぁっ!?

 こ、これ……動物タイプ以外ならどうなるんだろうな。

 寧ろプレイヤー相手だと……ごくりっ。


「さぁフラッシュ! 俺を好きなだけ殴れっ」

「マジック氏、絶対禿げさせようと思っているだろうっ」

「これも検証だ。お前、検証好きだろ!!」

「ふっ。無駄だなマジック氏。PKは未実装なんだぜ! ここの運営は最初から、このゲームにはPKを実装しないと公言していたからなっ」


 っち。そんな事公言してやがったのか。


「だがPVPは近いうちに実装するらしいと、俺のところの受付嬢が言っていたぞ」

「本当ですかインディーさん!? よし、フラッシュ。実装されたら決闘な」

「ひぃぃぃぃ」


 最後、一番右端の羽根が『出血』――つまり鼻血だ。

 効果は十秒間、毎秒50ダメージ。

 俺の時の事も考えると、ヒール一発で解除できるかもしれない。


「これが検証結果です、マジックさん」

「マジック君という、尊い犠牲の上で知った事だな」

「勝手に俺を殺すなセシリア」

「ロックンピーコックから出た装備は、基本的にデバフを付与するのが多いのかな? 俺のレア二つもデバフ関係だし」


 とフラッシュが言う。彼が手に入れたのは弓と手袋で、どちらにもデバフ付与効果が一つずつ付いているという。

 ルーンは法衣と素材で、法衣は状態異常耐性。で、素材の中に不思議なものがあった。


「武器に使えばランダムで一種類の状態異常効果を付与し、防具であれば状態異常耐性効果を付ける、か」

「法衣に既に同じのがあるから、より強化させるか、武器に付けて殲滅速度に貢献するか……どっちにしようかなぁ」


 ハイクラス、レア、レジェンドとなると、特殊効果が付与される。その特殊効果を事前に決定できるアイテムをドロップした事になるな。

 しかもデバフ関係だ。


 最後のセシリアの大剣にもデバフが付いていた。

 出血だ。そしてやっぱり鼻血だ。


「なんでこのゲームの出血は、鼻からなんだよ」

「恐らくエフェクト効果を、あまりグロテスクにしない為だろうな。想像して見ろ、切り口からモンスターの血がドバーっと噴出す場面を」

「止めてくださいインディーさんっ」

「はっはっは。顔が青いぞノーリス君」

「ふひぃ〜。思いっきり想像しちゃったよぉ」


 可哀相な少年だ。

 そんな俺も思いっきり想像して、目のスモーキーモーキーが肉塊化して――


「『サンダーフレアッ』」


 さっさと燃やすに限る。


 こうしてようやく検証も済み、ロックンピーコックの巣まで到着した。

 俺の頭の上に乗っている鳥の巣と同じような、枝を集めて作られた鳥の巣だ。ただしサイズが桁違いだけどな。

 その巣の中に、何故かチュンチュン達が居る。

 俺の姿を見ると嬉しそうに――たぶんそうに違いない――飛んできた。


《チュンチュン》

《チュンチュンチュン》

「ぷぅ、通訳」

《ぷっぷぷぅぷぷぷぅ〜》

「助けてくれたお礼に、歌を披露する?」


 なんて可愛らしい奴等なんだ。

 なんの事だか分かっていないインディーさんとノーリスに、俺の称号効果とここでの経緯を簡単に説明。

 そうこうしている間にもチュンチュン達は歌い出す。


 高音やら低音やら、長く、短く――その鳴き声でいろんな音を奏でるチュンチュン達。

 その愛らしい姿も相まって、なんとなく癒された気持ちになるなぁ。


 そうしてチュンチュンの大合唱が終わると、俺達全員で拍手した。

 照れくさそうに他のチュンチュンの後ろに隠れようとする全チュンチュン。

 一羽が隠れ、その後ろにまた隠れ、そして更に後ろに隠れ――終わる事のないかくれんぼだな。

 最終的にはロックンピーコックの巣に全羽隠れてしまった。

 可愛いな。


「お、またチュンのバフか」

「バフ?」

「付いてますね。効果時間――ログアウトまで!!」


 ルーンの驚く声に巣の中のチュンチュンが鳴いて反応している。

 どんな効果だ?



『チュンチュンのお礼』

 次にログアウトするまでの間、HP、及びMPの自然回復量が+50。

 即死効果の回避。



 おぉ、自然回復量が増えるのか。

 VIT1の俺にとって、HPの自然回復量は雀の涙なだけに、この+50は正直に嬉しい。

 即死効果回避もいいが、そんな攻撃してくるモンスターがそこかしこに居たんじゃ、恐ろしくて仕方ないな。

 まぁそういうのはボスだけなんだろうけど。


「そういやマジック君。君にもちゃんとバフ効果は来ているのか?」

「ん? 来ているけど、どうしたセシリア」

「うむ。ほら、ギターの効果がアレだったから」


 アレ?

 あぁ、バフスキルがデバフになるっていうな。

 そういや他人から貰うバフは――


「じゃあ試しにボクが――」


 と言ってルーンが速度上昇系バフスキルを唱える。

 アイコンを見てみると、ちゃんとバフ効果だ。


「つまり、俺が他人にバフるとデバフになるだけなんだな」


 俺自身がバフられても、それがデバフになる事は無い――と。

 なんだ、やっぱり心配すること無いんじゃないか。

 見た目だよ。うん。

 いろいろ問題あるのは見た目の方なんだよ!!

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