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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バーション1.01【始まり】
102/268

102:マジ、呪い解除を試みる。

 撮影会が終了して当初の目的に戻るとすぐに、布装備専門で取り扱う露店を発見。

 カウンターの上に置かれている売り物リストを少し離れた所から凝視する。


 えぇっと、INT補正の付いたハイクラスの24ジャケットが……一万八千エン……だと?

 え、ちょっと前までレアが一万超えじゃなかったのか?

 別の装備品露店を見ても、ハイクラスは一万後半代ばかりだ。レアなんて三万超えすらあるぞ。


「高騰しすぎだろ!」

「何がだい?」


 拳を突き上げ怒りを顕にしていると背後から声を掛けられた。

 お、わんわん獣人のシースターじゃん。


「よ、久しぶり」

「久しぶりだねマジック。高騰って、もしかして装備?」


 うんうんと頷くと苦笑いするシースター。

 彼も生産組だから、思うところはあるのかもしれない。

 それから彼の視線は俺の下半身――いや、背後のふっさふさに向けられる。


「いいだろ、これ」

「……いや、羨ましくはないけど……まぁ君は派手なのが似合うからいいと思うよ」

「本当か!?」

「うん。割と本音」


 おぉぉ、男からも似合うと言われたらちょっと、本気で似合うんじゃないかと思えて嬉しいな。


「でも上半身裸ってことは、合成で?」

「あ、ああ。まぁ合成ではあるんだが――」


 コートを合成していたズボンがお払い箱になってしまい、着替えのコートを持ち合わせしていなかったんで結局半裸だ――というのを説明。

 今はその上半身装備を探しているところだ。


「上半身装備って、そのまま装備するのかい? それともまた合成?」

「うーん、どうしようかなぁとは思っている。まぁここは開き直って半裸でももういいやと思ってるし、合成して性能が二割減とはいえ、二ヶ所に合成すれば結果はプラスだしな」

「そうだね。ウィキとかでも検証されてるけど、上半身二箇所が防御を上げる最適コースみたいだよ。裸になっちゃうけどね」


 ウィキにそういう情報も出てきたか。

 中には上半身と下半身装備をそれぞれ二ヶ所ずつに合成して、パンツ一丁になって町中走り回った奴もいるらしい。

 そして自警団に捕まったとか。


「やっぱ捕まるのか」

「うん。ただお説教で終わるみたいだよ」


 俺も目先の性能に囚われていたら、捕まってお説教部屋に連れて行かれていたかもしれない。

 前例を作ってくれた勇者に感謝しよう。


「まぁ今の装備販売価格は確かになかなか手が出せないよね」

「んだ」

「どうにかしてあげたいけど、残念ながら裁縫技能はずっと放置中なんだ。ザグに頼んでみたら?」


 実はお払い箱になった装備はザグに作って貰ったものだ。作って貰ってすぐに要らなくなったなんて、なかなか言えないよ。

 他に知り合いの生産組といえば……


「あ、ヤッホー。さっき常連さんが派手な王子様見つけたって言ってたから、もしかしてと思って見にきたらやっぱり彗星君やった〜」


 なんでこの人は絶妙なタイミングで現れるかなぁ。


「……派手ですみません、夢乃さん」






「えぇ〜。合成で装備外見無くしちゃってるのぉ? 勿体無い」


 とかいいつつ、人の腹筋見る為にマントを捲る人。


「夢乃さん、それ他の人にやったらセクハラで訴えられますからね」

「つまりマジックは訴えないってことだね」


 ……好きにしてくれ。でも触るのはこそばゆいから勘弁して。

 そういうと、夢乃さんは頷きながら腹筋を見ていた。


「デザインが消されるのは勿体無いけど……これはこれでいいね!」

「たぶん大勢の女子がそう思っていますよ。ね?」

「ねって、誰に言ってんだ」

「あの辺の人とか?」


 そういってシースターがどこかを指差す。その先に、女の子の一団があった。

 目が合う。

 叫ばれる。

 頷かれる。

 どういうことだってばよ?


《ぶぶぶぶぶ、ぶぶぶぶぅ〜ぶ!》


 ぷぅが彼女達に威嚇しているが、まったく効果が無い。というか、可愛い〜と叫ばれてるし。


「彼女達の為にも、彗星君はそのままでいるべきばい!」

「力説せんでください。まぁデザイン度外視で、性能優先で上半身装備、何か余ってませんか?」

「デザイン度外視ねぇ〜。あ、失敗作なんやけど、あるよ」


 失敗作かよ。

 そう言って夢乃さんがインベントリから取り出したのは、真っ白の皮ジャンっぽいやつ。

 これまたどこのステージ衣装だよ。

 次にデニムっぽいジャケット。夢乃さんにしては、随分と普通なデザインだ。

 三着目もデニムっぽいのと似ているが、肩の所にふさふさのボアが付いていた。


「この白いのはね、本当は腕にさらっさらな紐を滝のように垂らそうと思っとったのに忘れたんよ」


 本当の意味でステージ衣装にするつもりだったのか!

 アイテム情報を見たら、普通にレアですやん!

 デニムのジャケットも、背中に羽の刺繍を入れようとして、レベル不足で失敗したとか。見てみると、なんともガタガタな刺繍が施されている。

 刺繍がダメならと、一昔前のヤンキー風を意識したが気に入らず失敗作の一員に。


 全部レアだ。


「これ、露店に出したら売れるでしょ?」

「私のプライドが許さんの! だから知り合いに素材と交換してもらおうと思ってね。彗星君みたいに、合成で消す人もおるし」


 なるほど。

 だが俺の手持ちにレア素材は無い。ノーマル素材なら午前中の間に結構貯まったけど。

 後払いってことで、手持ち素材と交換で一着貰う。


「マジック、そのズボンに合成するのかい?」

「止めた方がいいばい。そのズボン、レジェンドやけん、失敗したら勿体ないばい」

「うっ……そうだよな。等級も違うし、失敗する可能性高いよな」


 が、今現在、俺の非合成装備はハイクラスの手袋とレジェンドのズボンとレア杖だ。

 杖と合成して失敗したら……確実に泣く。


「私もさすがに他の部位のレア装備は持ってないし」

「ひとまず残念だけど、ジャケット一枚着てたらいいんじゃないかな」

「そうだな。半裸卒業か」

「「えぇ〜」」


 くるっと振り向くとさっきの女子の集団が残念そうに声を上げていた。

 ……このゲームをプレイしている女子は、肉食系ばっかりかよ!


 久々に服に袖を通す気分だ。実際はシステムでポチるだけなんだが。

 貰ったのは普通のデニムジャケット。


「うーん、ジャケットの上にマント、マントの上にギター……なんだろうな、この格好」

「二昔前ぐらいの、特撮変身ヒーローにファンタジーを混ぜたような?」

「そのギター、外せばいいやん?」


 呪われているんです。無理です。


「じゃあギターと合成すれば?」

「いや、これ装備じゃなくってアイテムなんだよ」

「アイテムと装備の合成も出来るんじゃない?」

「え?」


 シースターの一言で、新たな合成の道がほんのちょっと見えた気がした。






 ジャケットと呪いのロックギターの合成に挑戦。


「合成技能、やっぱり持ってたんだ」


 と納得顔の夢乃さん。

 先日の称号イベントで合成ペットフードを俺が持って来ていたから、もしかしてと思ったらしい。

 で、彼女がペットをゲットしたあかつきには、合成フードをよろしくされた。

 装備の面でかなりお世話になってるし、断る理由も無い。

 が、いったいどんなペットを捕まえてくるのか、そこは気になるところだな。


 防御の事を考えるとジャケットを二ヶ所に合成したい。だが一つ試したいこともあった。

 ギターの能力を抽出してジャケットに付与すれば、ジャケットを脱いだときに呪いも解除されるんじゃね!?

 抽出用になる右側のアイテム枠にギターを移動させると、


【『不運を呼ぶ呪いのロックギター』を抽出用にする事は出来ません】


 というメッセージが出た。


 呪い解除失敗。

 じゃあ外見を残す左側に置き、右側にジャケットを乗せる。

 失敗すればそれはそれで呪い解除される!!

 

 これほど失敗を心待ちにする合成って、なんだろうな。


 ピロリロリン♪ と音が鳴って、合成が成功した事を知らせる。

 呆気なく撃沈。


「マジック、嬉しそうじゃないね」

「失敗した方がよかったん?」

《ぷっぷぷ、ぷぷぅ〜》

「あぁそうだよ。お前の言う通り、失敗すれば呪いも解けると思ったんだよチクショウ」

「「なる」」


 まぁLUK半減とか、元々1しか無い俺には無意味な効果だし、デバフにしてもバフスキルを作らなきゃいいわけだしな。

 と思いつつ、元々は自己ヒールとバフ効果を期待して神聖魔法を取ったんだしなぁ。

 どうにかしたいもんだ。

 そういえばこの『不運』技能って、ギターを解除すれば消えるんだろうか。

 もしギターの呪いを解除できて、装備を外せるようになっても技能だけ残ってるとか……

 検証したくても、ギターが外せないんじゃなぁ。


 逆に技能の初期スキル『バッドステータス』を生かす方法を考えるか。

 全ステータスを1下げる効果があるが、これ自体はたいした事ないし、雑魚モブには効果が薄そうだ。

 もっと劇的に効果を下げれるようなスキルを考えてみるか。


「じゃあ彗星君、新しい素材が見つかったら他のジャケットと交換するけんね」

「あぁ、お願いします」

「失敗した時用に靴か手袋も用意しといてやるけん、安心してね」


 安心して合成を失敗しろってことか!?

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