馬鹿は誰だ
ようやく研究者たちが庭に揃い、文句を言いつつも荷車に荷物を収めた時スーがふらふらと戻ってきた。
スー!とエリスが空に向かって呼べば、研究者たちの視線を一気に浴びその視線はスーにも絡まった。
ドラゴンはそこが当然の居場所であるかのようにぽてん、とエリスの腕に納まった。
───まったくあれは何だったのだ?酷い味だった!
エリスを見上げて、その横にいるクリスを睨みつけて憤慨している。
「どこかのばかドラゴンが拗ねて起きないからでしょう。エリスさんに心配かけないで下さい」
言い切ったー!
笑顔でクリスがズバリと言ったよ!
以前のように全面戦争か、と身を固くしたエリスだったが、ドラゴンはふっと鼻で笑った。
余裕を感じさせる態度にクリスの眉が吊り上る。
───どんな味であれ求婚相手に手ずから食べさせてもらったものだ。
ニヤリと悪い表情をしたドラゴンが、素早い動きでエリスの口に手を突っ込んだ。
驚愕の叫びをあげるクリス。研究者たちの食い入る視線。口の中に広がる甘味。
「これ、飴?」
完全に悪役の顔をしたドラゴンが得意げに胸を張る。
───氷砂糖のかけらだ。
「エリスさん!ぺっ、て吐き出して下さい!」
クリスの懇願もむなしく・・・
「溶けちゃった・・・」
───ははははは!今ここに衆人看視のもと、わたしとエリスは番になった!盛大に祝福してよいぞ!
固唾をのんで見守っていた研究者たちが拍手と興奮を伝えてきた。
すごい!ドラゴンの求愛行動を目の前で見た!と盛り上がっている。記録担当の人がすごい勢いで紙に書き綴っているのがチラリと見えたが字が読めそうになかった。
「そんな・・・!嘘だ・・・」
クリスが絶望を背負って膝から崩れ蹲ってしまった。
かすかな嗚咽まで聞こえる。
「あのさ、今のってちょっとずるくない?私は番になるつもりはなかったし不意打ちだったからノーカウントにして?」
その場がしぃぃぃぃん、と凍った。
突き刺さる視線は、何を言い出すんだ馬鹿娘!空気を読め!ドラゴンの研究に一役買え!という研究者たちのもの。
「・・・そうですよ。いくら手順通りにしたとはいえ、肝心の相手の気持ちを置き去りにしていては真の番と言い切れない」
クリスが復活していた。早い。
「エリスさんを騙してまで欲しい気持ちは理解できますが、それでは彼女の気持ちまでは得られませんよ。その点、僕はいつまでも待ちますけどね!」
良いこと言っているけど、要は認めないってことだね。
今度はドラゴンが目を見開きショックを受けていた。
───そうなのかエリス?わたしはお前の気持ちを得てはいなかったのか?
いい加減、面倒くさくなってきた。
「私は誰とも結婚する気はないよ」
ひどい!!と研究者たちがハモッた。




