「後鬼ちゃん、寒くない?」
「後鬼ちゃん、寒くない?」
もこもことした服を着た前鬼様が、心配そうにこちらを見つめている。
薄暗い夜道を前鬼様と二人で歩く。日も暮れると、肌寒い季節を実感する。
買い物に出かけた私達。ついついの寄り道で、随分と遅くなってしまった。
予定より遅くなってしまったので、薄着で出掛けて来たことを反省する。
震えそうな身体に、意地悪にも風は冷たい空気を服の隙間から入れてくる。
今晩は熱いお風呂にじっくり浸かりたい。この道を登れば家はもうすぐだ。
「きゃっ! 」
急に何かが足に纏わり付いた。びっくりして声を上げてしまう。
慌てて振り払おうと足を動かしたが、纏わり付いたままだ。
「な、なにこれ。なにこれ? 」
「後鬼ちゃん、大丈夫!? 」
横で急に騒ぎ始めた私に、前鬼様が宥めるように声を掛けてくる。
依然私は、足に纏わり付いたものを振り払おうと、じたばた足を振る。
「大丈夫だよっ! 」
声をあげた前鬼様。その声に、はっと我に返る。そして足元を見る。
「……。木の枝、ですね……」
なるほど、複雑な形の枝だ。試しに足を上げても、引っかかったままだ。
こんなものに慌てふためいた自分が、とても恥ずかしく思えてきた。
「はい。これで大丈夫」
しゃがみこんだ前鬼様が、私の足に絡まっていた木の枝を外す。
「ありがとうございます」
先程までの感覚が残る足首を、手で払いながら答える。
「それにしても」
まじまじと私の顔を見上げる前鬼様。その顔が、ぱっと緩む。
「慌てる後鬼ちゃん、可愛かったな~」
「なっ」
自分でも今思い出すと恥ずかしいのに、指摘されれば尚更だ。
「きゃっ! だって~」
追い打ちと言わんばかりに、にやにやとした顔で悲鳴を真似る前鬼様。
あっという間に笑い話にされ、なんだか子供扱いされているみたいだ。
ツボに入ったのか、笑い続ける前鬼様。
「むー」
収まりがつかない。気がつくと私は冷たい手を彼女の首元から入れていた。
「つ、冷たいっ! 」
もこもことした服と、彼女のすべすべとした肌に、手が気持ちいい。
「や、やめてっ! ごめん、ごめん、って! 」
冷たい手から逃れようと、暴れる前鬼様。今度はこっちが弄る番だ。
「きゃっ! 」
一揉めした後、息を切らした前鬼様が、小声で悲鳴を真似た。
思い出せば、つい顔を赤くしてしまうが、私は平静を装う。
「さぁ、帰りましょうか」
もし同じようなことがあったら、絶対にからかってやるのだから。
そう心に誓い、温かいお風呂を心待ちにしながら帰るのであった。




