「後鬼ちゃん、行くよ~!」
「後鬼ちゃん、行くよ~!」
暑い日が続く中の、ちょっと涼しい、そんな日。
ここ数日、暑くてぐったりしていたので身体を動かさねば。
涼しい恰好で外へと散歩。おやつや水分を忘れずに。
大きな日除けのついた帽子の中で、前鬼様がにやにやしている。
「すずしーい」
薄手の服はひらひらと風に煽られ、汗っぽさを掻き消す。
風が吹くたび涼しさを感じる。心地の良い風だ。
前鬼様の服がなびく様子を見て、視覚的にも涼しさを感じる。
時々手を繋いだり、追いかけ合ったり、自然を観察したり……
休憩に木陰でおやつを食べながら前鬼様とお話する。
と言っても大半は「涼しくて気持ちいいですね」だったり、
「このお菓子美味しい」だったりと、他愛のない会話。
だらだらと涼しさを楽しむのである。
「あれっ?」
前鬼様が声を上げる。続けて私も何かを感じる。
突如辺りが暗くなる。太陽が雲に隠れたのか。空を見上げる。
「雲、大きいですね」
「うん」
前鬼様は雲を見て口をぽかんと開けている。可愛いような馬鹿っぽいような顔。
雨が降る……そうは感じない。だが太陽がすっかり隠れてしまった。
風が強く感じる。涼しさが、肌寒さへと移り変わる。
「少し、寒いですね」
お菓子をもそもそと食べていた前鬼様はこくりと頷く。
「あえ」
前鬼様が指を指す。口の中にまだお菓子が残っていたのか、発音がおかしい。
「石……いや、岩ですね」
もごもごと咀嚼しながら前鬼様は岩の方に掛けていく。
私も荷物を取り着いて行く。
前鬼様は岩の上に横になった。彼女の表情が緩む。
「あたたか~い」
なるほど、と私も岩の上に寝転がる。ごつごつとした感覚を背中に感じる。
だが徐々にぽかぽかと温もりが伝わってくる。少し熱いぐらいで気持ち良い。
多少風に吹かれても、岩の熱が直ぐに身体を温めてくれる。そして眠気も……
「あー」
「後鬼ちゃん?」
「気持ちよすぎて眠っちゃいそうです」
「……私も」
ゆっくりと流れる雲が、いずれ私達を起こしてくれるだろう。




