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「前鬼様、おやすみなさい」

「前鬼様、おやすみなさい」

「おやすみ~」

寝ようと布団の中にうずくまり目を閉じる。

今日は一日暑かったため、とても疲れている。すぐに眠れそうだ……

次第に微睡んでいく意識……しかしなかなか落ち切らない。何故か眠れない。

浅く心地よい眠りの様な……起こされ続けている朝の様な……

眠気よりも肥大化する不快感。あっという間に目が覚めてしまった。

そう、暑いのだ。雨上がりのじめじめとした嫌な温度と湿気。

何より布団の中で居た分、蒸れて余計に暑い。

加えて自身の汗が下着を湿らせ、妙に気持ち悪い。

どうにかしなければ眠れない。ばっと身体を起こす。

「後鬼ちゃ~ん」

横で眠っている彼女をゆさゆさと揺らしてみるが、起きる気配がない。

「あれ?」

後鬼ちゃんの下着に違和感を感じる。指で素材を確かめるように触ってみる。

風通しの良い薄手のものだ。一人だけ涼しい格好で気持ちよく寝ているのだ。

「いいなぁ……」

と声を漏らす。かと言ってそんな彼女を起こすのは悪いと思う。

私だけで何とかする……思い切って布団を蹴飛ばしてみる。

幾分かましになった。眠れそうなのか、段々と眠気が現れる。

それでもやはり暑い。と言うより汗が気になってしまう。

落ちかけ、朦朧とする意識の中で、徐々に下着が開けていく。

もう脱いだほうが早いのではないだろうか。気がついた頃には裸だった。

不快感が一掃される。今日で一番涼しいと感じる。

暫く、涼しさを堪能しているうちに、若干の肌寒さに身体が震える。

枕元に転がっている脱ぎ捨てた下着。湿ったそれを再び着ようとは思わない。

代わりにそのまま布団の中に潜り込んでみる。普段と違った不思議な感覚だ。

布団の中が自身の聖域のような、暗闇でもここだけは安心できるような。

心地の良い温度と、そわそわとした感覚の中で、意識が次第に落ちていった。


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