「後鬼ちゃんおかえり~」
「後鬼ちゃんおかえり~」
買い出しから帰ると前鬼様が出迎えてくれる。
ふたりで出かけた時は必ず何かを飼い食いする前鬼様。
留守番の時は私のお土産が何かと駆け寄ってくる。
「これです」
さらっと箱を取り出し前鬼様の前に出す。ぱっと彼女は目を見開く。
「えっ、これって…」
半分興奮、半分困惑で言葉が詰まる前鬼様。
「はい、これが噂の洋菓子ですよ」
入手が困難で噂だけが一人歩き。だがその美味しさは折り紙つき。
「ありがとう!」
そう言いながら私の胸元に顔をすりすりと擦り付けてくる。
私もそれに合わす様に屈み、頬を前鬼様に擦り付ける。
……すんすん……何か違和感を感じ、私は鼻を鳴らす。
前鬼様が一瞬目を逸したのを見逃さない。と言っても匂いで分かるのだが。
頬をなすりつけている時、甘ったるいような少し甘酸っぱい匂いが鼻をくすぐった。
「どうして目を逸したのですか?」
少しだけ怒るように問い詰める。
「果物……食べちゃったから……」
「別に少しぐらいなら問題ないですよ」
頬擦りが気持ち良かったので今日の私は少し甘い。
「ほんと!?二つしか食べてないよ!」
「では、大丈夫ですね」
ぱぁっと前記様の表情が緩む。
「念のため、数えますが」
ひぃ、ふぅ、みぃ……数え始めると前鬼様の顔はみるみるうちに青くなっていく。
その時点で分かってはいたが……本当に二つなら許そうと思っていた。倍以上減っていた。
「嘘は駄目ですよ。運動しないといけないですね」
私はわざと前鬼様に見せつけるように、両手をわきわきさせる。
「い、いやっ…」
弱々しく首を横に振る前鬼様。
「じゃあ、私が全部食べてしまいましょうか?」
「だめー!」
半泣きになりながら前鬼様は葛藤している。
食べられないか。惨めにくすぐりを受けるか。
何度も顔を横に振りながら、「いや」を呪文のように繰り返す前鬼様。
しばしの葛藤の後、入手困難なお菓子は前鬼様の腕を万歳させた。




