「前鬼様ぁ……大丈夫ですか?」
「前鬼様ぁ……大丈夫ですか?」
「あつい……」
昨夜の雨のせいか今日はとてもじめじめして暑苦しい。
ジリジリと照らす太陽が余計に不快感を与えてくる。
私も後鬼ちゃんもさっきからぐったりしている。
僅かながら冷気を感じさせる畳の上で涼もうと横になってみる。
ひんやりとした畳が気持ちいい。
畳が温まってしまえば、何度も転がりながら行き来き。
時偶、部屋を通り抜ける風が心地よさを持って来る来る。
稀に、もわもわとした、熱気を帯びた空気を連れて来るのが憎ましい。
「うぅ……偶に温かい風が来るの。涼しくならない?」
「あー……そうですね……」
後鬼ちゃんも歯切れが悪い。こうなってしまうと期待できない。
「よし」
そう言い、立ち上がると何かを探しに行ってしまった。
少し待っていると後鬼ちゃんが戻ってくる。
「あ、風鈴」
彼女の手元には綺麗な風鈴があった。
「まぁ気分の問題ですが……少しは涼しくなるかと」
よいしょと背伸びをしながら、風鈴を適当に括り付ける。
音がなるかの確認もせずに、後鬼ちゃんは横になる。私の真後ろに。
彼女の熱気を感じる。暑苦しいと言うほどでもないが。
「前鬼様の手は冷たくて気持ちいですね」
後鬼ちゃんは私の手を握ったり自身の頬になすりつけたり。
その時、風が吹き始める。緩やかな風は風鈴を一回だけ鳴らす。
澄んだ高音。冷たい音。余韻は耳を通り抜けていく。その音が涼しい。
私も後鬼ちゃんも音を聞き、熱を放出するかのように脱力する。心地よい。
「いい音……ですね」
「うん」
「気持ちがいいですね」
「少しは涼しくなったかな」
畳が温もったのでぐるぐる転がると、後鬼ちゃんもそれに追従してくる。
また私の手を握る後鬼ちゃんであったが、何を思ったか私の指をしゃぶり始めた。
口の中。高音。指先だけ感覚が狂ってしまいそうだ。
熱で頭が回らない。何も考えられない。反抗しようとは思えない。
風、畳、舌の音。そして眠気がやってくる。




