「後鬼ちゃん何してるの?」
「後鬼ちゃん何してるの?」
前鬼様が私の手元を不思議そうに見つめている。
私は腕をタオルケットで結びつけている。
タオルケットの両端を引っ張れば徐々に自身の腕が拘束される。
「えいっ!」
そのまま一気に引っ張るとタオルケットが腕からすり抜ける。簡単な子供だましだ。
「すごーい!」
突然の出来事に前鬼様は興味津々である。
「もう一回して!」
「分かりました」
そう答えながらふと思いつく。
「どうせなら前鬼様の腕でやってみましょうか」
「うん」
二つ返事で答えた前鬼様の腕をタオルケットで結ぶ。
いつもは自身の腕でやるため、感覚的には逆手で慣れている。
向きも逆であり、思い出しながら結ぶのだがどうにもやりにくい。
「よし……出来ましたよ」
軽く引っ張ると、ちょうど手首のところで絞まる。
「捕まっちゃった~」
嬉しそうに演技する前鬼様。手首が動かせないことを見せつけてくる。
「では、引っ張りますよ……えいっ!」
「いたいっ!……あれっ?」
本来であれば手首が解放されるはずであるが……きつく結びついたままだ。
結び目を解こうと指で掴んで引っ張るが固く結ばれたままだ。
私の焦りに気付いたのか、徐々に前鬼様の表情から笑顔が消え始める。
「……だい、じょうぶ?」
「なんとかしてみせます」
そう返すが、自信がない。簡単に解ける筈なだけに、絡まると厄介だ。
前鬼様もなんとかしようと手首を広げるが逆効果だ。ただただ、時間だけが過ぎる。
「切っちゃう?」
そんな単純で確実な発想。だが……
「多分……切れないです……」
太く紐のようになったタオルケット。何度も引っ張ったため結び目で固くなっている。
そうなってしまった今、普通の鋏ではとても手に負えない。それにとても危ない。
……結局数日掛かり解いたのだが、その間前鬼様は手首が結ばれたままであった。




