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「前鬼様」

「前鬼様」

「何?後鬼ちゃん」

「私の髪を解いて頂けませんか?」

そう言って後鬼ちゃんは愛用の櫛を私に渡す。

「いいよ」

私は目を擦りながら答える。欠伸をしながら後鬼ちゃんの後ろに立つ。手入れされていると言え寝た後は少し乱れている。

「乱れてる~。っにゃっやぁ、はにゃ摘ままらいれ!」

振り向かれていきなり鼻を摘ままれた。拗ねた顔を見せられたが正直怖かった。

「お願いしますね」

にっこりと笑うと髪を私の方に向けてくる。笑顔ってこんなに怖かったっけ?

髪の根元から引っ掛からないように丁寧に櫛を通す。長い髪から漂う優しい匂いに惑わされながらも、何回か繰り返すうちに後ろ側の柔らかい髪をきちんと揃える。少し緊張しながら左右交互に横の髪を整える。あっという間に前髪以外は終わった。

「前髪はまだですか?」

前側に行く決心がつかずおどおどとしていると言われた。とりあえず前側に行く。伸ばされた足を跨ぐように立てり、前髪を解かし始める。顔を見ると目を瞑って気持ちよさそうにしていると嬉しい。逆に、目が合うのが恥ずかしいと思っていた自分が恥ずかしくなってくる。何度か繰り返し解かし終えると今度は私の番だ。

私を優しく抱き抱え後鬼ちゃんほど長くない私の髪を解いてくれる。後鬼ちゃんの丁寧な櫛の動きにうとうとしてしまう。気が付くと眠ってしまった。


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