「後鬼ちゃん、勝負しよう~」
「後鬼ちゃん、勝負しよう~」
前鬼様の手には問題用紙。どうやら計算問題だ。
計算が大得意の前鬼様からすると、私は対等な相手らしい。
「いいですよ」
ところで、と付け加える。
「何が欲しいのですか?」
もちろん、ただ計算問題を解くだけの勝負をするわけではないだろう。
「私が勝ったら、いつものを作って」
いつもの……それは前鬼様お気に入りのお菓子である。
私が作るとっておき。市販とは違う。だからこそ価値がある。
「では、私が勝ったら……そうですね。今晩は抱き枕になってください」
「勝てたらね~」
余程自信があるのか、随分強気である。問題を前鬼様が渡してくる。
「正解数が多い方が勝ちね」
「正解数が同じ場合は?」
「もちろん、早い方の勝ち」
「分かりました。では、始めましょうか」
合図とともに問題を解き始める。両面びっしりの計算問題だ。
前鬼様が素早く解く音が聞こえる。私も負けじと解き続ける。
表の半分ほど解いたところで私はあることを思いつく。
問題用紙を裏返し、裏の問題に取り掛かる。
「えっ!もう表終わったの?」
「はい。今日は勝たせて頂きます」
黙々と裏を解き始めた私を見て、前鬼様が焦り始める。
解く速度が早くなり、暗算が増えてきた。
私は正確さを優先し、丁寧に計算を解き続ける。
「終わったっ!」
ちょうど私が裏面を埋め終わった頃、前鬼様が声を上げた。
「では、私は表の残りを解きますね」
「えっ?」
私が表をすべて解いているものだと思っていた前鬼様の拍子抜けの声。
私は残りを丁寧に解き始める。当然前鬼様がすべて正解していないと仮定して。
「ずるいっ!」
「勘違いしたのは、前鬼様ですよ?」
確かに、嘘はついたが確認する術はない。
前鬼様が答えの見直しをしても、私が解き終わるまで間に合わない。
そんな前鬼様は自身の答えを信じることしかできなかった。
「終わりました。では答え合わせですね」
「むぅ~」
不機嫌そうに答えを見比べ答え合わせを行ってい。
流石、前鬼様。かなり早く解いたにも関わらず、計算間違いがない。
表には失敗がなく、私も焦り始める。このまま間違いはないのではないか。
だが、後半になればなるほど、どんどん雑になっていく導出過程。失敗は近い。
「あっ」
前鬼様が声を上げる。同時に顔が真っ青になったので今晩は私の枕になるだろう。




