「後鬼ちゃん、暑い…」
「後鬼ちゃん、暑い…」
「前鬼様あったか~い」
今日は随分冷える。そのままでは眠れない程に。
そんな日、前鬼様は私の湯たんぽとなる。
「むぅ~」
私から逃れようと身体を動かしているが、意味がない。
強く抱いているわけでないが、前鬼様にとってはかなりの力となる。
たっぷりの毛布と私に包まれた前鬼様は暑いぐらいだろう。
眠ろうとしても、暑いと眠れないものだ。温かいぐらいがちょうどよい。
前鬼様の頭を撫でたり、髪の匂いを嗅いだり……毛布の中の天国だ。
そうなると前鬼様は天使……となるが、当の本人はご機嫌斜めだ。
暑さで上書きされた眠気は自然と天使の怒りに変換されていく。
「あ~つ~い~!」
急に声を上げ暴れ始めた前鬼様に、つい力を弱めてしまった。
私の腕から抜け出した前鬼様はそのまま布団から飛び出す。
相当暑かったのか、寝巻を開けさせ、扇ぐように涼む。
「もう、暑かったんだからね」
赤くなった顔で、頬を膨らます。可愛らしい。
まだ暑いのか、前鬼様は戸を開け外の空気を浴びる。
私のところまで冷たい風が届くので、私は毛布の中に隠れる。
「風邪ひかないでくださいね~」
「は~い」
廊下にいる前鬼様にそう忠告し、私は冷えた身体を布団の温もりで温める。
湯たんぽがなくなった今、かなり寒い。それより開けっ放しの戸を閉めないと。
だが、寒さと眠気が躊躇いを助長する。閉めたら閉めたで前鬼様が寂しいだろう。
そう考えているうちに戸を閉めた前鬼様が布団に潜り込んでくる。
「冷たいっ!」
「さ~む~い~」
冷たい手で私の肌をペタペタと触ってくる。
嫌がる私は前鬼様から逃れようとするが、狭い布団の中に逃げ場など無い。
今度は私が湯たんぽの番だ。




