「前鬼様、朝ですよ~」
「前鬼様、朝ですよ~」
いつもの様にお布団を引き剥がそうとする後鬼ちゃんの声だ。
「眠いも~んっ!」
いつもの様にお布団を離すまいと私は駄々をこねる。
「起きてください~」
何度も緩急をつけて引っ張る後鬼ちゃん。
大体身体を揺すられるうちにしぶしぶ起きるのだが……
「もう、少しだけですよ」
今日は何故か甘い後鬼ちゃんがそう言い残す。
私は気にも止めず再びお布団に潜り込むのだ。
中途半端に覚醒した状態から再び落ちる快感。
先程の格闘で残った後鬼ちゃんの匂いにうとうとしてしまう。
二度寝というのはどうしてこんなにも気持ちいいのだろうか。
ぽかぽかとするお布団に包まれ、意識は今にも落ちそうである。
もう一度匂いを取り込もうと、大きく鼻で息を吸う。
「!!!」
突如鼻を突き刺すような痛みに、息が止まったかの如く悶絶する。
両手で鼻を押さえるが鋭い刺激は一向に止まない。
声が出せないまま、ただただ涙が出ているのは分かった。
半分眠っていた意識が途端に最大まで覚醒する。
これは水を吸い込んだ痛みだ。理解したところで痛みは減らない。
泳いでいる時ならともかく、全く無縁のお布団の中でこれほどの刺激。
やられた、と思いながらも耐えるしか私にはできなかった……
少し痛みが和らいだところでようやく目を開けることができた。
余韻でまだまだ潤む目。目の前には、笑いを堪える後鬼ちゃんがいた。
その手には私の鼻に垂らしたであろう急須があった。
「おはよう、ございます」
笑いを堪えながらの挨拶。
「おはよう」
刺激で鼻声になっている挨拶。
後鬼ちゃんは私の声と私の顔で再び笑い始めた。
絶対に仕返ししてやろう、そう涙目で睨むのであった。




