「前鬼様ぁ」
「前鬼様ぁ」
後鬼ちゃんの声で目を覚ます。とても眠たい。
「ねむい〜」
辺りが真っ暗だったのでそう返した私は再び布団に潜る。
布団から後鬼ちゃんが出て行く気配がしたが多分お手洗いだろう。
そのまま意識がふわふわと、綿毛のように沈んでいく……
「後鬼ちゃん?」
はっと気がついて名前を呼ぶ。返事がない。
開きっぱなしの戸。寝息が聞こえない部屋。そして後鬼ちゃんがいない。
本当にお手洗い?気になればなるほど一人ぼっちである自分も心細くなる。
何が起こっているのか、後鬼ちゃんが恋しい私は後鬼ちゃんの布団に潜り込む。
冷たくなった布団は布団の主が随分長い間外にいることを示す。
後鬼ちゃん……風で音を立てる戸がまるで私に何かを知らせているようだ。
不安になった私は布団を飛び出し覚悟を決めようと立ち上がる。
風が身を引き締める。徐々に不安を冷静さに変えていく。
「よし」
ゆっくりと、風で音を立てる戸の方に歩いて行く。
近づけば近づくほどその音が耳障りで、威圧される。
戸に手を掛けるとピタリと音が止む。そのまま意を決して廊下に出る。
廊下に出た途端、左から布のようなものが襲ってくる。
「えっ!」
纏わり付いてきた、妙に肌触りの良いそれは私を押し倒す。
「いやーっ!」
声を上げ、抵抗するが逃れることができない。
「後鬼ちゃん~っ!」
助けを呼ぼうと咄嗟に叫ぶがようやくすべてを理解する。
私を包む布、この匂いは後鬼ちゃんの匂いだ。
「ご!き!ちゃ!ん!」
怒るように名前を呼ぶ。
「も~、寒かったんですからね」
緩む拘束に私は顔を出す。
「でも、叫び声は可愛かったですよ」
「むぅ!」
照れ隠しの様に演じを返す。
拍子抜けして泣きそうだったのを隠すように……




