「後鬼ちゃん」
「後鬼ちゃん」
「何か?」
「…やっぱりいい」
私が散歩に行こうと言い出すと消極的だった前鬼様も次第に文句が出せなくなり今は小高い丘を目指して山道を歩いているところになる。勿論歩幅が小さい前鬼様を見てにやけている私だが。
そんな感じで目的地に着く。一本の木が有りその木陰に腰掛ける。
「やっと着いたぁ」
「そうですね」
へとへとな前鬼様にとお茶を出す。
「ありがと」
それを両手で可愛らしく飲む。そのまま作って来たお弁当を出す。二人分、だが前鬼様だけではなく私も小さい方なのでもっと少なくなる。
「はい、あ~ん」
「自分でたべれるよ、もぅ」
そう拗ねながらも私が一組しか箸を持って来ていないことに諦め、口を開けるので私は玉子焼きを放り込む。
「美味しい…よ?」
上目遣いで感想を待っていた私に疑問符混じりで答える。後は一組の箸でお弁当が無くなるまで食べた。
「寝ちゃった?」
食べ終わると暖かくて気持ちが良いのか私の膝の上で寝息をたて始める。
予め前鬼様は登りきるのが限界なのが分かっているので、必然的に帰りは私に抱っこかおんぶされるのがそもそも拗ねていた理由である。
疲れはて軽く可愛い前鬼様を抱え私は帰ることにした。