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「前鬼様ぁ~」

「前鬼様ぁ~」

と呼ばれ、目を覚ます。

辺りがまだ暗いので寝言だと思い、再び眠る。

ごそごそと後鬼ちゃんが布団の中を移動してくる。

ちょうどお腹の上に手を載せられる。そのまま抱き着かれる。

後鬼ちゃんの手は少し冷たいが、嫌でもないので怒らない。

寧ろ、腕の包容感が温かく気持ち良い。

頭を撫でられる。後鬼ちゃんの息遣いが聞こえる。

寝起きは何もかも気持ち良い。ずっとこのままでいたい……

だが、徐々に頭が回るに連れ、ドキドキし始める。

果たして寝ていると思われているだろうか。私の呼吸は自然だろうか。

気になり始めると止まらず、寝息を意識してゆったりと呼吸をする。

意識すればするほど狸寝入りは、鮮明に私の意識を覚醒させていく。

「ふー」

身体がビクッとする。突然耳に息を掛けられた。続けて何度も息を掛けられる。

強く弱く。長く短く。緩急を付けて。その度に自然な仕草を演じる。

一通り楽しんだのか、吐息が止む。

「起きている時は、こんな事できないですしね」

耳元で……そんな不穏な言葉の意図を理解するには時間が掛からなかった。

「っ!」

一際目立つ、耳への刺激。ぴちゃぴちゃと水の音。

耳を舐められた。自然な仕草で逃げようとするが、後鬼ちゃんはそれを許さない。

柔らかい舌が耳を擦るのが擽ったい。呼吸が乱れる。

耳が静かになった代わりに吐息が近づいてくる。

「眠っているなら、擽ったくないですからね」

その言葉に呼吸をゆっくりと、自然な寝息に戻す。

「尤も、耳に息を吹きかけた時点で起きると思いますが」

嵌められた。振りほどこうと力を入れるが、当然逃げられるわけがない。

そのまま、後鬼ちゃんが飽きるまで耳を舐められた。


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