「後鬼ちゃん、大丈夫?」
「後鬼ちゃん、大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
前鬼様が私の膝の上に座っている。
辺りの席も多くの人が窮屈そうに座っている。
繁忙期のお出かけの帰り道。
幸い個室は取れた……はずだったが、人が多過ぎた。
列車も一度に運べる車両の数に限界がある。
急遽、個室車両は取り止めとなったのだ。
そこで子供は一律、膝の上という事になった。
こうして、前鬼様が私の膝に座るという状況が出来上がった。
辺りにも同様に膝の上に座らせられている子供が多い。
不機嫌そうな子。甘えている子。お菓子を食べている子。
前鬼様はと言うと、ただただ退屈そうだ。
する事もなく、やる事もなく……そもそも膝の上だ。
私も退屈なので、勝手に前鬼様の頬や髪で遊ぶ。
気を遣っているのか、どうも抵抗が弱々しい。
あまりちょっかいを出しすぎると拗ねるので、時々頭を撫でる。
その度に、顔の緩みが見ずとも伝わってくる。
せめて眠らないようにとする前鬼様。
トロンとした目。目を擦っているが、今にも船を漕ぎ始めそうだ。
その僅かながらの抵抗を蝕むが如く、優しく頭を撫でてあげる。
なかなか落ちないので、しっかりと抱きしめる。
流石に限界か、前鬼様はすやすやと寝息を立て始めた。
私も眠らないようにと、膝の上の前鬼様で遊ぶのであった。




