「後鬼ちゃん、ゆり椅子届いたの?」
「後鬼ちゃん、ゆり椅子届いたの?」
「はい」
前鬼様が新品の椅子を興味津々で見ている。
軽く押すとゆらゆらと揺れるそれは揺り椅子と呼ばれる椅子だ。
前鬼様は一人で座ろうとしている。私は二人で座りたいのに。
椅子を傾け座の端にお尻を載せているが滑り落ちる。
それもそのはず、大人にも大きめの椅子は前鬼様では到底背が足りない。
うんとつま先立ちをしても今度は椅子を傾ける体重が足りずにお尻が届かない。
「もうっ!」
痺れを切らした前鬼様は勢いをつけて、飛び乗った。
しかし勢いを付けすぎて、背もたれ側に倒れそうになる。
「危ないっ!」
そう叫び、後ろに体重を掛けたのが間違いだった。
前鬼様は勢い良く椅子から振り落とされた。
「大丈夫ですかっ!?」
ごつん、といい音を立てて頭を打った。涙目になりながら悶絶している。
氷を器に入れ、それで打ったところを冷やす。
「……むぅ…」
失敗を恥ずかしがり頬を膨らませ拗ねているが、目尻の水滴が痛みを表す。
しばらくすると、唸っていた前鬼様が静かになる。
「じゃあ、一緒に座りますか」
元からそのつもりですし、と付け足す。
痛みも引いたのか、前鬼様は 素直に頷く。
私は前鬼様を持ち上げ、そのまま椅子に座る。
そして膝の上にちょこんと座らせる。
身体を揺すると椅子がゆらゆらと揺れ始めた。
ゆらゆら、ゆらゆらと。身体が浮かんでいるような気分だ。
揺れに合わせ、前鬼様の頭を撫でる。
緊張が解けたのか、前鬼様はすやすやと私の膝の上で眠り始めた。
私も前鬼様の体温を感じながら目を瞑る。
ゆり椅子。こんなにいいものだとは思わなかった。




