「前鬼様っ!」
「前鬼様っ!」
後鬼ちゃんがいきなり背後に寄り添ってくるので思わず逃げてしまう。
「な、何っ?」
「そんなに怯えなくても……ちょっと背中に文字を書くだけです」
「じゃあ、何?それっ!」
普通、背中に文字を書くといえば指だ。
後鬼ちゃんは筆を持って空に円を描くようにくるくると回している。
「ああ、これですね。指でやってもつまらないので筆でやってみようかと」
そう言い終わる前に肩を捕まれる。逃げられない。
「嫌っ!くすぐったいのは嫌っ!」
「全部正解すると、お菓子を作ってあげますよ」
「やる!」
その甘い言葉に誘われ、私は身体を差し出す。
するすると衣類をはだけさせられ、上半身が露わになる。
どうせ後鬼ちゃんは後ろにいるし隠す胸もないので裾をぎゅっと握る。
「では、一問目」
「ひゃっ!」
柔らかな毛先が背中をくすぐる。思わず声を上げてしまう。
文字を読み取ろうと集中するだけ筆の感覚が強くなる。
払いや跳ね、字の特徴まで細かく書いてくれるのでわかりやすい。
「花?」
「正解です。では次行きますよ」
次は声を出さないように、より一層裾をぎゅっと握る。
身体が強張って震えているだろうが、読み取れるのであれば問題ない。
集中してより感じるくすぐったさから逃げないように、まるで拷問の様だ。
集通して間違えないように読み取って答える。一問、もう一問と……。
「では、次で最後ですよ」
「うん」
最後、と聞いて少しだけ気が緩む。
同時に難易度が上がるのではないかと気を引き締める。
書かれている文字を一文字ずつ読み上げる。
「だ…い…す…っ!」
"き"と言おうとして思わず口を閉じる。
「ダイス…ですか?」
「ちっ、違う!」
「じゃあ、答えは何ですか?」
"答え"と強調されたが間違いなくからかってくるだろう。
かと言ってここでお菓子を逃すわけにもいかない。
「……大好き」
何をされても大丈夫なように、心を落ち着かせてから答える。
「私もです」
途端に背後から腕ごと抱かれ、耳元で囁かれる。
その後、耳や首などを筆でくすぐられたが、お菓子を作ってくれたので後鬼ちゃんが大好きです。




