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「前鬼様ぁ」

「前鬼様ぁ」

そろそろ朝かな、起こされたのか寝言なのか目を擦りながら後鬼ちゃんの方へ向いてみる。

「へ?」

何故か後鬼ちゃんは毛布一枚のみ、つまり裸で眠っていた。気のせいかなと目を瞑るが気が付いた。

「私の服を枕にしてた?」

いや、そんな筈はないと目を開けると間違いなく昨日着て眠った服だった。

じゃあ今私が着ている服は、意識が鮮明になるにつれて違和感が生まれてくる。

「後鬼ちゃんの、服?」

恐る恐る見てみると後鬼ちゃんの服だった。そういえば後鬼ちゃんの匂いがする。まだまともに起きていない私を惑わすには十分だった。

「後鬼ちゃんの匂い」

ぶかぶかな袖口を鼻に当てると優しい匂いがする。そして考え始める。何故後鬼ちゃんは私の服を剥ぎ取り、私に自分の服を着せたか。私の服の匂いを嗅いでるのかな。

「あ」

そこで私は気付く、今私は後鬼ちゃんの服の匂いを嗅いでるではないか。いや、あくまでも私はそうなるように仕向けられただけ。

「いい匂い」

やはり朝の思考を確実に打ち砕いてくる匂いに抗うことは出来ない。そのままふと後鬼ちゃんの方に目を開けて見る。

「へ」

「え」

目が合う。嬉しそうな後鬼ちゃんが言う。

「まだまだ夜ですよ」


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