「前鬼様、動いちゃだめです」
「前鬼様、動いちゃだめです」
退屈で足をぶらぶらしていたら後鬼ちゃんに指摘される。
後鬼ちゃんは趣味で絵を描く。私は今椅子に座らされている。
「後鬼ちゃん、まだぁ?」
「まだまだですよ~」
「あまり動かないでくださいね。なかなか終わりませんよ」
後鬼ちゃんの真剣な目つきに、ついおとなしくしてしまう。
それでも、じっとしている、というのはあまりにも退屈である。
目がしばしばしてくる。目を擦ろうにも手を動かすと怒られる。
眠い。そう感じながらも、じっとしているとますます眠気に誘われる。
船を漕ごうとした瞬間、意識が引き戻される。また、すぐに意識が沈んでいく。
後鬼ちゃんの手元の鉛筆を走らせる音が心地よい。
時折聞こえる後鬼ちゃんの悩む声が可愛らしい。
また、うつらうつらと意識が沈んでいく。
「できましたよ~」
どうやら寝てしまっていた。目を擦りながら後鬼ちゃんの横に座る。
「あ、かわいい」
つい、率直な感想を零してしまう。
そこには、人形のように椅子に座らされた少女が気持ちよさそうに眠っていた。
「ありがとうございます。可愛いですよね」
「えっ、ちがっ!」
はっと我に帰り、自身の発言を取り消そうとする。
わざわざ寝るまで待っていたことを指摘したり。
寝ぼけていたことを言い訳にしたり。
結局、後鬼ちゃんの弄りに勝てることはなかった。




