「後鬼ちゃん、いってらっしゃい!」
「後鬼ちゃん、いってらっしゃい!」
「すぐに戻りますね~」
買い物に行く、そう言って私は玄関から外へ出た。
と見せかけて少し歩いたところで隠れてすぐに引き返す。
今日の前鬼様は機嫌が良すぎた。何か隠している匂いがする。
音を立てないように家に戻る、廊下を歩く、戸を開ける。
気付かれないように息を潜める。見つからないように見つめる。
前鬼様は嬉しそうに鼻歌を鳴らしながら、見覚えのある装飾がされた巾着を取り出していた。
綺麗な巾着から小瓶を、そして小瓶から大事そうにあるものを取り出した。
大きめの金柑ほどもある砂糖の塊、かなり高級な金平糖だ。
一通り見つめた後、口に放り込む。
私に隠していた、ということは自身の分しか手に入らなかったのだろう。
左右の頬を交互に膨らませているのは大変可愛らしいが……故に弄ぶ。
前鬼様の頬が緩んだ瞬間背後からひっそりと抱きしめる。
「っ!」
前鬼様はびっくりして吹き出しそうになったのか、口を押える。
そのまま私は前鬼様を膝の上に座らせる。
そして前鬼様が口の中で金平糖を転がす様に……無言で前鬼様の身体を揺らす。
ようやく落ち着いたのか、前鬼様はコロコロという音を再び奏で始める。
「おいしいですか?」
突然の問いに喋れなかったのか、喋れないのか。口をもごもごしている。
「……あ、甘いよ?」
「そうでしょうね。あの老舗のは有名ですから。入手困難な事で」
きゅっと前鬼様の身体が強張る。どこまで見透かされているのか、前鬼様の表情が固まる。
その後も無言で、前鬼様がガリッと音を立てるまで、私はずっと前鬼様を転がし続けた。
ちゃんと味わえなかった!と前鬼様の機嫌が悪くなったのは言うまでもない。




