「後鬼ちゃん返してぇ~」
「後鬼ちゃん返してぇ~」
前鬼様が頬を膨らませながら言ってくる。
返せと言ったそれは前鬼様のお気に入りの毛布。
かなり珍しいものらしい。
肌触りはさらさらともふもふの融合。
ほどよき温かさを与えてくれる。
前鬼様には大きめでも、私にとってはちょうどいい大きさだ。
私は独り占めするようにそれに丸まっている。
息を吸う度に前鬼様の匂いが摂取できる。
まさに私にとっての天国だ。
「もぅ~っ!」
当の本人は不機嫌そうに私から毛布を引っぺがそうと引っ張る。
残念ながら前鬼様の力ではそれは叶わない。
はじめは奪い取ろうと毛布を掴む前鬼様であったが、次第に毛布を撫でるようになってきた。
一撫で、また一撫で……その度に、にへらと前鬼様の顔が緩む。
普段は身体全身で感じる毛布も、手の平だけでは満足できないようだ。
何も言わずに前鬼様が私に抱きついてくる。毛布越しであるのが非常に残念だ。
毛布を抱くように触れるのは新鮮であったのか、面白いぐらいに顔が蕩けている。
「もふもふ~」
猫撫で声でそれを伝えてくる。そして軽快に鼻歌まで鳴らし始めた。
そのあまりにも可愛い仕草につい私の顔も緩んでしまう。
頭を撫でると普段は嫌がるのだが、今ばかりは抵抗らしい抵抗を見せなかった。
そしてそのまま前鬼様はすぅすぅと可愛らしい寝息を立て始めた。




