「前鬼様、貝合わせしましょう!」
「前鬼様、貝合わせしましょう!」
「貝合わせ?」
生返事な私に後鬼ちゃんは綺麗な箱を持ってきた。
中から多様な絵が描かれた貝殻を取り出す。見るのは初めてだ。
「同じ絵柄を集めるだけですよ」
興味を示していた私に同じ絵柄のものを見せる。
綺麗な菊の花だった。後鬼ちゃんはそれを伏せる。
「一回、だけだよ」
そう聞いて嬉しそうに畳の上に広げ始める後鬼ちゃん。
「勝った方が負けた方の言うことを聞くのはどうですか?」
「ん?逆じゃない?」
「間違えただけです」
「いいよ、負ける気しないから」
幸い記憶力には自信がある。神経衰弱は得意だ。
しかしすぐにそんな余裕はなくなってしまった。
「むぅ…」
後鬼ちゃんは貝殻の模様を参考にしていた。
どうもこのままでは負けてしまう。
そこで提案をする。
「最後、最後の一組を揃えた方の勝ちでいい?」
「いいですよ、このままじゃ面白く無いですし」
特徴的な模様や形の貝殻がなくなった今、単純な神経衰弱となる。
最後の一組、つまりすべて覚えて一気に取れば後鬼ちゃんに勝てる。
数を残すため出来る限り揃えない様にと場所と絵柄を覚えていく。
そして残り数枚のうちひとつを捲る。菊の花だ。
もう片方の菊の花の場所を知っていたため勝負に出る。
それを捲って絵柄を見て若干の違和感を覚える。まるで複雑な漢字が一画少ないような違和感。
「あれ?合わない…」
よく見ると同じ菊の花であったが少しだけ異なっていた。仕方なく伏せると後鬼ちゃんが嬉しそうな顔をする。
私の致命的な失敗、後鬼ちゃんの順番、間違えるようにとひたすら祈る。
一組、もう一組と私の負けが近づいてくる。そして件の菊を残してあと4枚だった。
「私の勝ちですね~」
そう言いながら後鬼ちゃんは手を伸ばす。後鬼ちゃんは私と同じ過ちを……繰り返さなかった。




