「後鬼ちゃん!」
「後鬼ちゃん!」
前鬼様が可愛いしかめっ面で抗議してくる。
風呂敷を首に巻いて頭だけを出している。
髪を整えようと準備したはいいが、手が使えないのをいいことについちょっかいを出してしまう。
鼻を摘んだ時点で怒らせてしまった。
「かと言って、ないと服が大変な事になりますし」
「むぅ」
「逆に裸ですか?」
「いやっ!」
「そうですね。ちくちくしますからね」
「えっ」
何を想像していたのか、前鬼様の顔は真っ赤だ。
「はいはい、動かないでくださいね」
ぷるぷると震えているがおとなしくなった前鬼様の髪先を整える。
さて、と流石に私も真剣になる。
鋏で心地よいリズムを刻んでいく。
気持ちがいいのか、前鬼様がうつらうつらしてくる。
首が傾く度に両手で頭を元に戻す。
前髪は特に丁寧に。昔失敗してぱっつんになった時は怒られた。
前鬼様はいつからか目を合わせないように目をとじるようになった。
意識しなくていい反面、少しさみしい。
その代わり、ほぼ毎回眠るようになってしまった。
おかげで合法的に寝顔をまじまじと見ることができる。
そして合法的にくんくんと匂いを嗅ぐことができる。
後は丁寧に梳くだけであった。




