「前鬼様…」
「前鬼様…」
後鬼ちゃんが無表情で馬乗りになってくる。
一体何をやらかしたのか。少なくとも怒られるようなことはしていないはず。
タオルケットで上半身を腕ごと巻かれ、それを私の左右で伸し掛かるように止めてくる。
身体を左右に動かそうとしても、後鬼ちゃんの上半身の重みだけでそれが阻まれる。
なんとか逃れようと声を出そうとするが、何と言えばいいかわからず声にならない。
後鬼ちゃんの顔が近づいてくる。相変わらず無表情だ。
私自身の表情が悟られるのが怖くなり目を閉じてしまう。
つん、と鼻の頭を舐められる。たまらず声を上げようとしたがそれは叶わなかった。
いきなり口を覆われた。状況を身体と精神が理解できず混乱している。
そして何も抵抗できずにされるがままになっていた。
ようやく口が自由になり後鬼ちゃんの吐息が離れたのでそっと目を開く。
目の前には妖しく少し微笑んだような後鬼ちゃんの顔があった。
後鬼ちゃんと目が合う。見つめ合う。表情を確かめる。
途端に自分の表情が気になる。私がどういう顔をしているのか。
隠そうにも手は動かせないし、身体を動かしても転がることすら出来なかった。
永遠にも感じられたその膠着と拘束から解き放たれたのは、随分後のことであった。




