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「後鬼ちゃん~」
「後鬼ちゃん~」
「膝枕、ですね」
「うん」
縁側で日向に当たるように膝枕をする。
随分暖かくなってきたため日光が心地よい。
あっという間に膝の上で前鬼様がすぅすぅと寝息を立て始める。
突如、耳元で不快音がする。蚊だ。
暖かくなると蚊が出てくるのはいただけない。
ちょうど前鬼様の太腿の上に留まる。
足を叩くと可哀想なので、軽く撫でるように蚊を払う。
ふと前鬼様が動かせる方の手で太腿を掻こうと手をのばす。
なんとなくその手を握ってみる。軽く力を入れただけで止まる。
急に顔をしかめて、太腿をこすりあわせたのでそれも止めてみる。
どんどん顔が苦悩の表情に染まり、身体を揺らし始めた。
面白いのでそのまま掻けないようにしていると、前鬼様が怒った。
「かゆい!掻かせて!」
「わかりました。では、私が掻きますね」
そう言いふんわり撫でるように掻き始めると前鬼様は再び寝始める。
焦れったいのか前鬼様は時々声を上げる。
自分で掻くか、掻いてもらうか。眠気と痒み。
その微妙な焦れったさををずっと味わってもらった。




