「前鬼様ぁ」
「前鬼様ぁ」
後鬼ちゃんに呼ばれたかと思い目を擦りながら体を起こす。
「後鬼ちゃん?」
返事かない。
「寝言かな?」
再び眠ろうと思ったが横になっても眠れなかった。
「むぅ」
ふと私は後鬼ちゃんに近付いてみる。手入れのされた長い髪に見とれてしまう。思わず手で触って見ると柔らかくて気持ちが良い。つい、そのまま手の匂いを嗅いでしまう。
目を開いて顔を赤くしたのが自分でもわかった。甘い匂い、というよりも優しく包んでくれる匂い。後鬼ちゃんの背中に抱き着くのは直ぐだった。
顔からお腹にかけて後鬼ちゃんの髪がくすぐったい。甘い、優しい匂いに包まれる。おっとりして眠くなってしまう。
「あ」
そして自分のしている事に気が付く。このまま寝てしまったら絶対に後鬼ちゃんに弄られる。早く戻らないと眠さに負けてしまう。そういう意志はあったものの体が動かなかった。
気が付くと少し眠っていた。戻らないと、でももうどうでもよくなっていた。優しく暖かい、気持ちが良い。そんな所と眠気に私は抗うことが出来るかな、いや出来るわけがない。後鬼ちゃんよりも先に起きれば良いだけ。
目を覚ますととても嬉しそうな後鬼ちゃんと目があったのは言うまでもない。