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「後鬼ちゃん、あつい~」
「後鬼ちゃん、あつい~」
畳の僅かな冷たさを集めようと前鬼様が転がる。
いろいろとやる気が抜けてしまった目で力なく訴えてくる。
「今日は特に暑いですね」
「川行きたい」
「行きますか?」
「行く!」
よし、とやる気を取り戻した前鬼様が立ち上がる。
幸い今ここでも水の心地よい音が聞こえるぐらい近くに川がある。
さっさと小走りで向かう前鬼様に付いて行く。
脱ぐのすらめんどくさかったのか、そのまま飛び込む。
「涼しいですか?」
浮かんできた前鬼様に尋ねる。
「冷たい!」
きゃっきゃと楽しむ前鬼様に続いて私も足だけ水につける。
冷たい。暑さが洗われる。水の音がより一層涼しさを感じさせる。
持ってきた傘を立て、日光が当たらないように影を作る。
大きな岩にもたれかかると背に伝わる暖かさが気持ちいい。
そして心地よい眠気に襲われるのだ。
前鬼様を見ねば見ねばと目を開いているが、徐々にまぶたが重くなってくる。
私の目が覚めた時には、全身を真っ赤にした前鬼様が私の膝の上ですやすやと眠っていた。




