「前鬼様ぁ~。具合どうですか? 」
「前鬼様ぁ~。具合どうですか? 」
後鬼ちゃんが不安そうな顔でこちらを見つめている。
頭が痛くて、ぼぅっとする。喉がからからと渇いて、いがいがとする。
「随分楽になったよ」と小さな声で返す。あまり口を大きく開けば耳の下が痛むのだ。
薬が効いたのか、熱はかなり下がった。
「触りますね~」
「うん」
後鬼ちゃんが両手で私の両頬に触れる。発熱で火照った顔に、彼女の冷たい手が気持ちいい。
彼女が確かめるように触っている間少し痛かったが、昨夜は触ってなくてもずっと痛かったので我慢できる。
「だいぶ腫れが引きましたね」
「うん」
「喉が渇いた」
「はい」
後鬼ちゃんが急須を私の口に差し出す。私はそれを傾け直接吸うように飲む。
冷たい水が私の喉を潤す。喉の痛みが多少ましになる。
「急須で飲むの、楽でいいね」
「そうでうね。でも起きていただきます。そろそろ昼食にしましょう」
ずーと寝ていたので、時間の感覚がなくなってしまっていた。そう言えば、お腹がとても空いている。
「はい、持ってきました」
後鬼ちゃんが器を持って来る。湯気がもわもわと出ているから、とても温かそうだ。
「具沢山のお粥です。あ、お粥じゃなくて雑炊か」
雑炊というより、お米の入ったスープというのが正しいのではないだろうか。どろどろになるまで煮られているので食べても痛くなさそうだ。
出汁の風味が食欲をそそる。昨日は痛すぎて何も食べられなかったので、今日こそは栄養のあるものを食べないと。
卵や細かく刻まれたねぎなどの野菜がたっぷりと入っている。
後鬼ちゃんはそれを小さな匙で掬い、ふぅふぅとしている。
「はい」
「……自分で食べられるよ」
「はい」
「……むぅ」
彼女が差し出した匙から舐めるように食べる。
痛くないように咀嚼し飲み込む。
「おいしい」
「良かったです! 」
後鬼ちゃんは二掬い目をふぅふぅと用意している。
「後鬼ちゃん、あんまり近づくと移っちゃうよ」
「私は大丈夫ですよ」
「でも」
後鬼ちゃんに移してしまわないか、とても心配である。
感染力が高い病気。耳の下が腫れ、高熱。合併症も引き起こすことがある危険な病。
どこから貰ってきたのか、私は罹ってしまった。
とても苦しいので移したくない。でも隔離されるのは寂しい。でも移したくない。
「移るから、離れて」
「あれ、言ってませんでしたっけ? 」
何を?と私は首を傾げる。
「私も小さい頃に罹ったことがあるので……基本的には私には移りません」
「へ」
安心した……と言うより拍子抜け。そんなこと聞いてなかったもん。
「食べた後は早く寝て、早く治して下さいね」
後鬼ちゃんにおでこを指で押すように倒された。
成人以降は逆流性食道炎にお気を付けください。




