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「後鬼ちゃん! 月が綺麗だよ! 」

「後鬼ちゃん! 月が綺麗だよ! 」


少しばかり肌寒くなってきた。夜はもう一枚羽織らないと寒く感じる季節。

作物の豊作を祝い、翌年の豊作を祈る……お月見。

収穫時期に満月を拝む。今年も綺麗に月が拝めるだろか。


私も綺麗な月を見るのは好きだ。普段はちらりと見ている月も、じっと見つめてみれば、とても趣がある。誰かと見るのであれば尚更だ。

一人で見る月にしても、今この瞬間、他の誰かも月を見ていると思えば少しばかり考え深くないだろうか。


屋敷の明かりを消し、縁側に座る。目が慣れてくると、徐々に辺りが明るく見え始める。前鬼様は先に縁側に座っていた。

月明かりだけでも随分と明るいもので、月を見上げている彼女の顔がしっかりと見える。


「後鬼ちゃん、月が綺麗だよ! 」

私も彼女の横に掛け、月を見上げる。

「晴れて良かったですね」

月に掛かるような雲はなく、薄っすらと絹の様な雲が流れていく。


「食べていい? 」

「もぅ…。食いしん坊ですね」

お供え物の月見団子。少しだけ砂糖と塩を入れ、ほんのりとした甘みを感じられる団子。

月を見ながら食べるので素朴な味わいである。月を見るのに、甘い団子に集中してはだめだから。

そもそも私が、素朴な味わいの団子が好きなのもあるが……


「食べてもいいですよ」

「わーい! 」

指で摘んで口に放り込む前鬼様。私も摘んで口に放り込む。

薄っすらと甘みを感じる団子を噛みしめる。もちもちとした触感を楽しみながら月の方に目をやる。団子と同じまん丸のお月様。


「美味しいですか? 」

「美味しい……よ? 」

何故か、疑問形な前鬼様。答えは簡単である。

「もうちょっと……甘い方が良かった……」

そう言いながら頬を膨らせる。膨らませた頬がまん丸で、ついついくすりと笑ってしまった。

月が見えない時は、団子を月と見立ててお月見をするそうだが、彼女の頬を月と見立てるのも面白いと思った。


もう、と怒る前鬼様に気を取られながらも、私は月を見上げる。

普段は気にも留めない月はこれほどまでに綺麗なのだ。


「じゃあ、次は甘く作ってね」

「えー。私は甘過ぎないほうが好きです」

「えー」


もぐもぐとお団子を食べながら二人で月を見上げる。

前鬼様が私の手を握ってくる。

「ちょっと寒い」

彼女は薄手の服を一枚しか着ていない。夜は冷えるといっても、いつも布団の中に入るのが早いので気にしたことは無かった。

「羽織るもの、持ってきましょうか? 」

「いい」

そう言うと、前鬼様は私に抱きついてくる。

「これぐらいがちょうどいい」


月見団子がなくなるまで、二人で綺麗な月を眺めるのであった。


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