「前鬼様、ここで寝たら風邪をひきますよ? 」
「前鬼様、ここで寝たら風邪をひきますよ? 」
後鬼ちゃんの声に目を覚ます。せっかく微睡んでいたのに……と返そうとしたが、口を動かすのが面倒だ。ただ、眠いと呟こうとしたが、それすら今の眠さでは叶わなかった。
最近読んでる小説がある。夜寝る前にちょっとずつ、ちょっとずつ読み進めている。が、あいにくと昨日はしおりを挟む場所が見つからなかったのだ。
何度も何度も、後鬼ちゃんに早く寝るように催促されたが……その後鬼ちゃんが先に眠ってしまった。つまり私が読み進めるのを阻止するものはいなくなった。
小説の展開に興奮していた私は、目を擦りながらも最後まで読んでしまった。さてそろそろ眠ろうか……という時には外が少し明るくなっていた。
流石に、読みすぎたことに反省しながらも意識はすーっと落ちていった。
朝。後鬼ちゃんの怒号で起こされる。どれほど眠れただろうか。起きないと後鬼ちゃんの機嫌が悪くなるので頑張って起きる。身体が重い。
小説を読み切った達成感からか、重い身体を動かすのにそれほど苦労することは無かった……少なくともお昼までは。
お昼ご飯を食べると眠くなる。その上寝不足……と来たら眠くないはずが無い。
太陽に当たりながら寝たい。そう思った私は、薄い毛布を一枚持ってくると縁側近くの畳の上に転がった。
想像以上に太陽の光は弱く、なんだか部屋の中も寒い。しかし、毛布一枚あるだけで眠気の方が勝ってしまった……
「風邪をひきますよ? 」
後鬼ちゃんに起こされる。風邪をひく心配……というより半ば呆れている様な感じではあるが。
確かに寒くないといえば嘘になる。でも、眠気には勝てない。いくら見つめられても、私は断固として起きようとはしない。
「もぅ! 最後まで読むからですよ! 」
それを指摘され、一瞬息を止めてしまう。どうしてそのことを知っているのだろうか、と。
「あっ! 確信は無かったのですが、今の反応からして……最後まで読みましたね」
はめられてしまった。ばれてしまった。しかし、そんなやり取りも眠気を促進する子守歌なのだ。
後鬼ちゃんが何かを持ってくる。私の横にそれを落とす。そのときできた風が私に当たる。寒い。
でも、これは……毛布だ。そう確信する。
「よい、しょっと」
後鬼ちゃんによって、私は隣の毛布の上までころころと転がされる。
「あー」
転がされると思っていなかったので声をあげる。それと、ちょっと寒いかったので。
後鬼ちゃんが私の身体を包むように、毛布を折り込む。何度か私の身体の上を彼女が行ったり来たりすると、とても温かくなってきた。肌に触れる毛布もとても気持ちが良い。
後鬼ちゃんがもう一枚毛布を持ってきた。彼女は自分の身体にその毛布を巻き付けた。
そして私の横に転がる。後鬼ちゃんは私を核とした毛布の塊を抱き枕の様に扱う。
私の身体は丁寧に折られた毛布に包まれ、後鬼ちゃんに抱かれ、更に毛布に包まれる。
「まぁ……私も眠くないと言えば、嘘になるので」
早く寝るように自身が眠くなるその限界まで催促していた彼女も、結局は眠いのだ。それには少し……罪悪感を覚える。
少し暑いぐらいだったが、依然眠気に勝てない私は何もできずにそのまま意識が沈んでいくのだった。




